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Photo by
h_fujieda
恋花粉 ①
「またなのお?」
普段のスーツにアクセサリーを足して御祝儀袋の準備をしている私を見て母は苛立たしげに叫ぶ。目に涙さえにじませて。
「友人知人のお祝いばかりしていないで、早いとこ相手を見つけなさいよ」と続けたいに違いない。最初のうちは新郎の友人に手頃な人を探してごらんなどと言った。ムリ。それはイヤ。あるとき新婦の投げたブーケをキャッチしてしまった。やれやれ。花に罪はない。引き出物とともに持ち帰ると母は怒りを爆発させた。まるで牛を豆粒と交換してきたジャックを見るように。ブーケは裏山に飛んで行った。翌朝豆の木が生えていて、とはならず私は相変わらず友人の披露宴のスピード原稿をしたため続けるのだった。
「……兄と妹のように過ごしてきたタケシくん、どうか今度こそ今度こそ幸せになってくださいね」
あれれ、私ったら何やってるんだろバカみたい。ぐすんぐすん。いつのまにか裏山に生い茂っていた草花から飛来した花粉のせいばかりではなかった。
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