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会社の飲み会でふとひとりぼっちになる瞬間。

そういえば、もうしばらくあの感覚、味わってないなあ。

人がたくさんいる会社の宴会で、ふっとひとりぼっちになるあの瞬間。

はじまって1時間くらいは、隣の人とも向かいの人ともワイワイ話す。

普段はどのくらい飲むの、どこに住んでいるんだっけ、わーおいしそう、肉だ肉がきたー、ってたわいもない会話がつづく。

次第にみんな酔いが回る。

するとひとり、またひとりと、みんながみんな、自然に席替えをはじめる。

せっかくだから、いろんな人と話してこよう、絡んでこようと、思い思いに席を移る。

わたしの向かいにも新しい人が来る、隣にも来る。

水に落としたいくつもの絵の具のように、あっという間に人と人が混じりあう。

テーブルでは、腕まくりをして、ジョッキを持って、輪の中で中心になって盛り上げる人、ひたすら自分のターンで話し続ける人、喧騒のなかいつものトーンで語り合う人。

ああ、あの人あんなに顔が赤くなるんだ、あの人あんなにお酒を勧める人なんだ、あの人ぜんぜん料理を食べてないや、などなど。
ながめていても楽しい。

会社の飲み会は好きだ。
好きだけど、気を遣わないわけじゃない。

「会社の自分」は崩さずに飲んでしまう。
すると、1時間もすればぐったりしてくる。

とても仲の良い人だけで飲むのなら、素の自分で飲めるんだけどな。

3~40人ともなれば、部下も後輩も教え子もいる。

その子たちがいつもは見せない顔で元気に楽しんでいる姿をみていると、良かったなあ、と安心してしまう。

そこに割って入って遊んでもらっても、迷惑だろうなあって思ってしまう。

あとは、いつもの仲の良い2~3人で飲み直したいなって。

そう思っていると、ふと、ひとりになる瞬間がある。

あれ、さっきまで隣にいた人、向かいにいた人、あの人もあの人も、今度は違う席で飲んでいる。

気づいたら、最初から同じ席で飲んでいるのはわたしだけ。

一瞬、さみしい。

でも、動く気はしない...。

あれ、反対側のあの人もひとりだ。
それでも、そこまでいこうとは思えない...。

でも、あまりひとりでいると、異質に思われてしまう。
そんな悪目立ちはしたくない。

だからトイレに行って、戻ってきて、さりげなーくどこかの輪の中に入る。

それはそれで、楽しいのだけど。

そんなの、もう2年くらいないなあ。

今年はまだ忘年会、やらないだろうな。

来年はどうだろう。
でも、飲み会なんてなくても会社は回るってこと、みんな知っちゃったからな。

いまならまた、あの一瞬さみしいやつ、味わってもいいんだけどな。

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しばいぬたろう
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