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「どうも」じゃねぇだろうって。
たとえば「牛乳を買おう」と買い物に向かい、スーパーに着くとセール品やらおいしそうな総菜やらに目を奪われて、あれこれ買ったあげく、家に着くと牛乳がない。
たまーにそんな現象が起きる。
これは老いか?老いなのか?と思う。
20代のころはそんなことなかったのになあー。
きょうは1回目のワクチン接種だった。
病院の受付に向かうと、すぐさま「14時の方ですかー」と、看護師さんが声をかけてくれた。
予診票と引き換えに「ではこれを持ってお待ちください」と24番の札を渡された。
接種会場は2階とのことだった。
呼ばれるまで1階のロビーで待った。
ポケーと待っていると、数名の看護師さんが1階と2階をあわただしく往復した。
どうやら誰かの順番を間違ってしまったらしい。
しごととはいえ、このコロナの状況において、医療従事者の方々には頭が下がる。
わたしは今日、この病院でわたしにかかわるすべて医療従事者に「ありがとうございます」とお礼を言おう、とこころに決めた。
やがてわたしとその他3人の番号が呼ばれた。
わたしより早い番号のスーツの女性が、エレベーターの「開」ボタンを長押ししてくれた。
いつもなら会釈で済ます。
しかし、きょうは「ありがとうございます」と声に出した。
よし、この調子だ。
2階では「これから接種の人」「すでに摂取した人」と2つのゾーンに椅子が並べられていた。
ひとりひとりに案内をする看護師さん。
わたしも席に誘導された。
すかさず、
「ありがとうございます」
よし。
それからまた、ポケーと待った。
ソーシャルディスタンスのためか、わたしの席は窓に向かって設置されていた。壁一面の、大きな窓。
ウフフ、わたしは窓際族。
きょうはよく晴れていた。
交通量の少ない道路を、1台のオープンカーが走っていった。
初心者マークが貼ってある。
オープンカーに初心者マークか。
そうそうベテランでも乗らない車種に、初心者マーク。
シュールだな。
「24番のかたー」
「はい!」
明るくリアクション。
これも相手を想えばこそ。
「こちらへどうぞー」
「ありがとうございます」
よし。
白いパテーションの向こうには、詰襟の白衣に縁の太い眼鏡をかけた、恰幅の良いお医者さんが座っていた。
「はい、こんにちわ。体調は悪くないですか」
「あ、はい」
「じゃあ、打ちますね。すこしチクっとしますよ」
「はい」
・・・あの動きやすいタイプの白衣は、たしか「ケーシー」というんだっけか。
このお医者さん、いま目を見て話してくれてたな。
まいにちこうやって同じ作業を繰り返すのに、ひとりひとり目を見て話すんだ。すごいなあ。大変だなあ。ありがたいなあ。
あ、痛い。あれ、噂で聞いてたよりもチクっとするもんなのね。
「はい、終わりました」
「どうも」
おーし、終わったー。
「ではこちらからお戻りくださーい」
看護師さんが出口へ誘導してくれる。
ん?
どうも?
あー!
ごちゃごちゃ考えてたら、お医者さんに「どうも」って言ってしもうたー!
ひえー。
注射を打ってくれた当人に「どうも」じゃねえだろうよー。
もー。
なにやってんだ、なにやってんだ。
接種後は「すでに接種した方」ゾーンで、体調に変化がないか15分ほど予後を確認する。
15分の間、くやしさで悶絶するわたし。
退席する時間になり、近くの看護師さんに目ヂカラを込めて「ありがとうございます」と伝えるわたし。
あーん。気が済まん。
あ、またエレベーターの「開」を押してくれている方がいる。
目ヂカラギンギンで「ありがとうございます!」とお辞儀をした。
たぶん、ちょっと変な人になってたと思う。
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