ザ・カクテルバーにあこがれてた少年時代。
ザ・カクテルバー。
サントリーが1993年~2007年まで発売していたビンのお酒。永瀬正敏さんの「愛だろ、愛っ」のキャッチコピーでCMが流れていた。
お酒をくわしく知らなかった10代のころ、お酒といえばビールと日本酒だった。子供のころはお酒を飲む意味もよくわかっておらず、なんとなくオトナは夜になったらお酒を飲んで寝る生きもの、くらいの感覚だった。
でも、このCMでは70年代風のレトロな服をひょうひょうと着こなす永瀬正敏さんが、モテそうでモテない三枚目を演じていて、思うようにカッコつかない男のむなしさ、悔しさ、悲しさという感情を、孤独にカクテルバーを飲んで癒すという演出だった。
ラストは冴えない男から急に一変したシブイ声で「愛だろ、愛っ」というナレーションが入る。そんな「哀愁」ただよう表現に、子供ながらに男の美学を感じたりもして。
ああ、お酒ってこんなときにも飲むものなんだなあ、とはここで学んだ気がする。
当時、小学生から高校生にかけてずっとテレビで流れていた。1990年代に学生時代を生きた人は、このCMとともに大人になった方も多いのではないかな。
子供でもカクテル、ということばは知っていたけど、スクリュードライバー、カンパリオレンジ、モスコミュールなど、いろいろなカクテルの名前を知ったのもこのCMのおかげかも。
しかし、カクテルの名前ってかっこいいなー。なんだかエクスカリバーみたいで、そこらへんも少年のこころをつかみやすかったのかも。
CMで新商品が追加されるたびに、画面に新しい色あいのビンがどんどん並ぶ。ビン同士が触れる「ガチャッ」という音に、ウイスキーの氷が解ける「カラン…」みたいな大人っぽさを感じてたな。
いま思うと、色とりどりのビンは夜景のようだった。夜のネオンを連想していたのかもなあ。
オトナはこんなキラキラした飲みものを飲んで、毎日パーティーしてるのかなあ、ってあこがれた。
何年も待って自分がオトナになり、さあ買うぞとはじめて手に取ったのは「バイオレットフィズ」。
だって、紫色の飲みものってそれだけで興味をそそるじゃない。親は飲ませてくれないよ。いまでもコンビニで手を伸ばした瞬間までおぼえてる。
全盛期は19種類(19色?)まで増えた。
はじめに発売されたのがジン・トニックなんだけど、これは無色透明。そこから彩り豊かにビンが染まっていく。狙ったかどうか、ここにストーリー性があるのもいいね。
でも自分が飲みはじめたころには、発泡酒や缶チューハイが市場を席巻していて、カクテルバーは廃盤になる一歩手前だった。ビンだから、ちょっとほかより値も張ってた気がする。
CMも時代劇風にかわり、男の哀愁の表現もなくなった。さらに衰退期には椎名林檎さんの歌が流れるだけのCMになって、そのまま歴史に幕を閉じた。
それにしてもカラフル。