公演予算の考え方 番外:赤字について
どうも、しばいいぬです。先日書いた「公演予算の組み方⓪超基礎編」が、非常にバズりまして、ありがたい限りです。
それについての反応のうち、演劇制作メディアの大先輩であるfringeさんから赤字の考え方について指摘があったので、それについて補足したいと思います!
もしfirngeさんの「公演予算の組み方」をまだ読んでない方は、非常に細かい説明がなされているので、是非とも読んでください。
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忙しい人へのまとめ
・あるキャパより小さい公演は、普通にやれば必ず赤字になる。
なぜならスタッフの人件費と諸デザイン料が下げられないから
・上のような小規模公演で発生する赤字は、
①劇団主宰が負担しているか ②スタッフが泣きを見ているか
・健全な運営のためには中長期的な目線で予算を組み、
スタッフに対して、長いスパンで赤字を返していくしかない。
・だから、劇団はスタッフと中長期的に付き合いをしていくべき
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活動を継続するためには収支トントンを狙うべき(fringeさんからの指摘)
私の記事に対し以下のような、指摘をいただきました。
確かにfringeさんのいうとおり、立ち上げたての芸術団体にとって重要なのは何といっても活動を継続することですので、そのために大きな借金を背負い、活動を継続することが不可能になることは避けたいことです。記事を見ても、「赤字を出してまで公演すべきではない」ということを強調しており、トントンを死守すべきであると主張しています。
しばいいぬとしても、それは同意です。fringeさんはこのページのまとめとして、以下のように書いています。引用します。
ここで、私が指摘したいことは次の点です。
4.動員の増加に伴い、予算が費用面で収支トントンになるよう近づけていく。(数年かけながら、動員500名以上)
fringeさんは具体的に動員500名以上としており、そのラインで収支をトントンとなるように予算を組んでいく、ということでした。
ですが、劇団を始めたばかりのうちに500名動員はなかなか難しいハードルのように思われます。また、カフェ公演や古民家公演、リーディング公演の流行からみても、現在の小演劇界においては公演の小規模化が進んでいるようにも思えます。
ここで出てくる疑問は、動員が500に満たない公演については収支をトントンにすることはできるのか?ということです。
あるキャパより小さい公演は、普通にやれば必ず赤字になる
結論から申し上げますと、東京都内においてあるキャパより小さい公演は普通にやれば必ず赤字になります。
データで語ります。下のグラフは都内の小規模の劇場において1週間小屋入りし、計7公演行ったときの収入と、最小支出を示したグラフです。
劇場は、インフォメーションシアターというサイトから、キャパシティーが80席、50席、30席程度の都内の小劇場を選定しました。
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【データ詳細】
・有料動員率は70%、チケット代は路上役者亮佑「「小劇場の相場」をけっこう頑張って調べてみた」を参考に都内の小劇場のチケットの相場である3699円とした。
・簡単のため、出演費は0円とした。
・スタッフ人件費は時給1,250円を基本に、本番中の制作増援なども計上した。キャパシティーが50以下の公演は「舞台監督・制作・音照オペレーター」のうち1つを演出家が兼任するとした。
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支出として計上したのは、いずれも必要最小限の金額であり、本来の公演だとここから15-30%程度増加する点には注意が必要です。
これをみると、キャパシティーが50席程度、つまり総動員数250人程度の公演はなんとか収支をトントンにできるが、それ以下の公演になると赤字になってしまうことが分かります。
内訳をみるとこの理由は明らかです。つまり、キャパシティーが減少するにしたがって劇場費や諸物品費はある程度小さくなるが、人件費はほとんどかわらないからです。
この赤字は、だれが負担しているのか
ここで気になるのは、このような赤字をだれが負担しているかです。
率直に言えば、この赤字は、劇団が負担しているか、それ以外の俳優やスタッフが負担しているかのどちらかです。
劇団が負担している場合、これは公演決算書に赤字として計上されますので、公演が赤字であったということは目に見えて明らかです。そして赤字は主宰がバイトを増やして返済するか、あるいは黒字化した公演の利益で返済します。
一方で、劇団としては名目的には赤字公演にしないという手も取ることができます。つまり本来支払わなくてはならない経費を値切り、支出を抑えるというやり方です。この場合に割を食っているのは、スタッフや、出演者です。
わたしは「公演予算の組み方①基礎編」で、「クリエイションに対するお金や、制作費・広報費などは目に見えにくいお金のため、軽視」しがち、ということを語りました。
劇団をあらたに運営していくにあたって忘れてはならないのは、クリエイションに対してかかるお金を軽視してはいけない、ということです。たしかに、このような値切り交渉はよく行われており、また、心優しいスタッフや、出演者などは応えてくれることもあります。
ですが、それで思い上がってはいけません。スタッフさんがどうして交渉に応じてくれるのか。それは、彼らがfringeさんと同じ目線を持っているからです。つまり、若手の演劇人が借金を背負って創作活動が継続できなくなるくらいなら、それを前貸しして支援していきたいと考えているからです。
まとめ:若い頃の出演者やスタッフへの恩は、贔屓にすることで返していく。
どんな人気の劇団も、はじめは非常に小さいところから始めないといけません。そのタイミングの公演は、本質的に赤字にならざるを得ないものでした。そういった創作活動を支援してくれるスタッフさんもいます。
劇団は、そこで借りた恩を返していかなくてはいけません。
そのときに劇団が返せる方法は一つだけです。
ひきつづき公演を、同じ出演者やスタッフとやっていくことです。そしてそのときにちゃんと正規のギャラを支払うことです。
そのためには、劇団を大きくしていく必要があります。そのためには闇雲に安いスタッフと出演者を使い捨てて公演を打つのではなく、長い目で見た成長のレールを敷いていく必要があるのです。
以上で、fringeさんへの補足といたします。リプライなど、お待ちしております!
したっけ。
前編は以下です!
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