黒柴的パンセ #68

黒柴がこう思う#11

ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。

シニアエンジニアの働き方

前回は、黒柴のようなシニアエンジニアがどのように働いていくか、ということを考えてみた。
一人のエンジニア(いわゆる一兵卒)として働いていくことについて、2つ上手くいく場合、行かない場合について考えてみた。今回は、黒柴が理想的だったと感じたRさんとは反対の行動について話していきたい。

一兵卒になりきれなかった人

パンセ#67で取り上げた社内プロジェクトでは、若手のプロパーAがプログラミングスキルを向上させる目的でアサインされていた。当然、プログラミングスキルが拙いことと、実装しようとするプロダクトがCTI(Computer Telephony Integration)を組み込んだWebアプリとなっており、通信系のプログラミング経験が無いAには荷が重いということで、パンセ#45で取り上げたKがプログラミングのサポート役としてアサインされた。

パンセ#45でも書いたが、Kは自社の創業時のメンバーで、役職は役員ではないがほぼ役員待遇だった。ただ、マネジメント能力に乏しく、グループのマネージャーどころか、プロジェクト内のサブチームのリーダーすら任せられないので、もっぱら技術力を生かしてのエンジニアとして作業することがほとんどだった。

このときも、KにAのサポートをお願いしながら、以下のようなことを伝えた。

  • この実装については、おおよそ2週間程度を予定している

  • Aのスキル不足から遅れがあることを見越して、最大3週間までは遅れとならないように後続タスクを調整している

  • ただ、プロジェクトには現状では着手しないとしている優先度の低いタスクがあり、余裕があれば黒柴としてやっておきたい(無理なら次フェーズに送る)

  • なので、できるだけ前倒しで作業を進めて欲しい

このような情報を元に、Aのサポートをお願いするとともに、毎日進捗状況のウォッチを行っていた。
しかし、開始から1週間を経過しても、ほとんど進捗が上がっていない。Aに尋ねると、実装方法について試行錯誤しており、なかなか上手い解決策にたどり着けないとのことだった。
Aからのヒアリングを受けて、今度はKに確認を行うとともに、最初に説明したように、可能なら前倒しで作業を進めて欲しいと伝えたところ、Kから以下のような回答が返ってきた。

「Aのプログラミングスキルを向上させるために、もう少し考える力をつけさせた方がいいから、今は試行錯誤させている。3週間までは遅れにならないのだから、そこまでには完成させる。」

この回答を聞いて、黒柴は愕然とした。
作業開始時に、Aのサポートをして前倒しで作業を進めて欲しいと指示しているし、そもそもタスクの終了予定までの期日は2週間である。またAのサポートを依頼しているのであって、キャリアパスに伴うAへの指導などお願いしていない。
つまり、K自身の社内ランクでの立ち位置(社歴や役員待遇などから黒柴よりは上)や、同じ会社の一員であることの気安さから、黒柴リーダーの元で一人のエンジニアとして作業するという作業範囲を逸脱しているのだ。
百歩譲って、これが意見具申という形で事前に黒柴に確認をとり、承認を得たうえで実施しているのであればよいが、K自身の独断で行動を起こしてしまっていることには、非常に問題があると思った。

これは、黒柴が最初に言った「一兵卒として働けるのか?」という定義の反面教師となっている。
このとき、黒柴は年齢的にはKと近いことや、プロジェクトリーダーとしての経験もある程度積み重ねていることから、お願いしたことをきちんとやってくださいと毅然とした態度で対応することができた。
しかし、これが経験の浅い若手のリーダーだったらどうだろうか?

同じ社内の先輩ということで、先輩風を吹かせるエンジニアは、若手のリーダーにとっては煙たいだろうと容易に想像がつく。
なんども同じことを繰り返せば、リーダーからは「あの人は使いづらい」から「自分のプロジェクトではアサインしたくない」となる。
自分がアサインされたリーダーから「次は使いたくない」と言われてしまうと、結果的に自分の居場所をどんどん狭めることにつながるのだ。
なので、シニアエンジニアが「一兵卒として働く」というのは、自分自身にきちんとした枷をハメて、その領分を逸脱しないと意識しないと難しい。

では、「一兵卒として」以外の働き方はあるのだろうか?
次回は、それを考えてみたい。


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