黒柴的パンセ #15
黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #5
ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく
リスクとは「今後発生する可能性がある、プロジェクトの成功を阻害する、個人では解決できない事象・状況」
これは、PMBOKにおけるリスクの定義である
パンセ#14で、自社の経営層がビジョンを示さず会社経営を行っていることについて、黒柴はずっと食い下がっていたと書いた
ここでいうビジョンとは、「一定の期間を経過したあとに、この会社がどうなってるのか、またはどうなっていたいかという未来の姿」である
PMBOKのリスクの定義を持ち出したのは、このビジョンを達成する上で、発生する可能性がある事象をリスクとして、きちんとマネジメントしていく必要があるからだ
では、どのようなリスク(経営に影響を及ぼす可能性がある、発生が予想される事象)が考えられるのだろうか?
過去の事例を取り上げると、
東日本大震災のような激甚災害の発生による景気減速
リーマンショックのような経済インシデントによる景気減速
スマートフォン発売以降のモバイルビジネスの加速
などが考えられる
PMBOKのリスク・マネジメントを学んだ人は理解していると思うが、リスクは「発生確率」と「発生した際の影響(金額に換算)」で評価されて、その対応(回避・転嫁・軽減など)を検討・実施していく
ビジョンを考える際の一定期間を5年と仮定した場合、5年以内に上記のような重大な景気減速の発生確率は著しく低いと判断して、あえて費用が掛かる対策の取ることは不要と考えることができる
では、上記よりも発生確率の高いリスクはないのだろうか?
5年後に何が、起こるのか?ということを考えていた時、黒柴は「確実に発生すること」がある事象に気がついた
それは、「自社の関係者全員が5歳、年齢を重ねる」ということである
関係者というのは、経営層・社員のみならず、取引先関係者や社員家族も含めてである
もちろん、これ自体が経営に影響を及ぼすことはない
しかし、5歳年を取ることから派生して、かなり高い確率で発生する事象がある
たとえば、
20代から30代の未婚の社員なら、家庭をもつ、または持ちたいと思う
20代から30代の既婚の社員なら、第一子、または第二子が誕生する
30代から50代の既婚の社員なら、子供の進学(受験)、就職がある
50代以降の社員なら、親の介護が始まる
などが考えられる
そして、これらの事象により、その社員のライフステージが変わるのだ
ライフステージが変わることによって、何が変わるのだろうか?
上記の事象だと、近い将来、または遠い将来において、家族とどのように過ごすのか、ということを強く意識し始めることになる
そのため、将来のライフプランをいろいろと思い描くようになって、働く自分自身の将来像についても、深く考えるようになるだろう
そのとき、経営者が「(将来にわたって)会社を成長させる」というビジョンを提示・説明できていなければ、どうなるだろうか?
当然、その社員はその会社で働き続ける自身の将来像について不安を抱き、離職ということにつながっていくだろう
実際のところ、自社については、企業してからしばらくは離職率は低かったのだが、ここ10年くらいはかなり離職率が上がっている
新卒で採用した社員も、在籍10年を迎えることなく、ほとんどが離職した
もちろん、個々の理由はあるのだろうが、この「ビジョンを示せていない」というのも、大きな理由の一つだと、黒柴は考えている
ビジョンを示さない≒現状維持という会社経営は、安定的な経営を行っているが、実はゆっくりと衰退している
諸兄らが所属する会社の経営者は、きちんと会社のビジョンを提示・説明できているだろうか?