黒柴的パンセ #43

黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #28

ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。

「Hさんの分身がいます」
これは、ある冬の時期に女子社員が言った言葉だが、内容としては今の時期にふさわしいと思う。

Hは、パンセ#42で取り上げた黒柴の同僚で、パンセ#31で取り上げた同僚Aと同一人物である。
パンセ#31で書いたように、Hは人間ドックで栄養指導の必要ありと診断されてしまうほどの巨漢だった(身長は180cmくらいあったが、体重が120kgを超えていた)。そこまで巨漢になると、どこに問題がでるかというと「汗」である。

「食事誘発性熱産生」という言葉をご存知だろうか?人間は、食事をすることで一時的に代謝量が増大し、その結果体温が上昇する。これは、ほとんどの人間に起こることなのだが、Hの場合はその割合が平均以上だった。
「食事に行ってくる」と昼食時に外出したHが戻ってくると、「えっ、食事に行ったんだよね?昼休みにジョギングしたとかじゃないよね?」と言いたくなるくらい汗だくだった。

仮に昼休みに軽く運動するということであれば、スポーツウェアに着替えるだろうし、終わった後に身体を拭いたりするだろう。でも、普通に勤務し、食事をしているHには、着替えの用意も身体を拭く場所もない。
結果として、汗だくの衣服のまま午後の勤務、場合によっては残業まで行うことになる。
そんな状態なので、Hはものすごく汗臭かった。

この汗臭さは、いろいろなところで問題になった。
当時は、まだ新型コロナが流行する前だったので、ほぼ出社しての勤務だったし、リモート会議などもなかったので、客先との打ち合わせは、客先の会社に出向いて実施していた。
Hが客先での会議に出席すると、終わった後に必ずと言っていいほど、客先からマネージャにクレームの電話が入った。
また、常駐作業にアサインしようにも、最初の1ヵ月で契約更新を丁重に断られたこともあった。
Hは、パンセ#42で書いたように、仕事には一生懸命取り組む人間だったが、明らかに汗臭さが彼の作業を阻害していた。

ちなみにいろいろと検索すると、汗そのものはほとんど匂わないとのことで、あの匂いは汗を分解するバクテリアの繁殖によって引き起こされてるのだ。
ただ、一旦衣服にバクテリアがついてしまうと、これを完全に除去することは難しい。洗濯して取り切れないバクテリアが、また汗をかくことで繁殖し、汗臭い臭いを増加させてしまうのだ。
冒頭で書いたのは、そんなHの衣服のことで、H自身もかなり臭うのだが、冬になってHがスーツの上に着用しているジャケットをコートハンガーにかけておいた。コートハンガーは、Hのデスクからはかなり離れた執務室の入り口付近にあったのだが、そのジャケットもHと同様に臭ってしまい、女子社員が「Hさんが2人いる」と言った次第である。

もちろん会社としても、社外からクレームが入るような状態だったので、対策を考えざるを得なかった。マネージャが役員と話し合った結果、会社が下着類(アンダーシャツ、トランクス)を支給するから、今着用している臭いのついた下着類は廃棄して、風呂に入って清潔にするようにとお達しがあった。
それで、マネージャが、支給された費用でとりあえず一番大きそうなサイズの下着を購入してHに渡したのだが、Hは「これはサイズが小さくて着れません」と答えた。

Hは巨漢だと書いたが、どうやら一般的なサイズの服では、着用できないようだった。
そういえば以前、黒柴がユニクロでズボンを購入した時に、「ユニクロは安価でサイズもデザインも豊富だし、Hもユニクロで服を買えば?」と言ったことがあったのだが、そのときも「ユニクロに自分が履けるサイズはないよ」と答えていた。

最近は、テレワークやリモート会議などで、ビジネスにおいて対面で人と接する機会も減っているが、それでも皆無ではない。
だから、以下のようなことは常に心掛けたいと思う。

  • 普段から風呂、シャワーを活用して、できるだけ汗を落とすこと

  • 標準サイズの服が着れるように、体型をコントロールすること

  • 臭いがついた服は、さっさと処分して新品を身につけること

この話題を書いている時期と前後して、フリーアナウンサーが暑い時期の体臭に関する発言が不適切と契約解除になったりもした。
でも、やはり臭うものは臭うのだから、「男性差別だ」などと言っても、致し方ない。
こういう仕事の内容や、仕事に取り組む姿勢など、仕事以外のことで評価され、仕事を失うことは避けなければいけないと思う。


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