黒柴的パンセ #42
黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #27
ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。
「Hみたいなやる気のある奴が必要なんだよ」
これは、自社のマネージャAからの言葉である。
ここでは、マネージャではなく自社のベテラン社員Hを取り上げたい。
Hは、黒柴が最初に入社したソフトハウスからの顔なじみだった。
まだ、20世紀のころだったので、大半のシステム開発は多かれ少なかれ遅延しており、いわゆるデスマーチになっているプロジェクトも多かった。
そういう中で働いているので、Hも黒柴も残業や休日出勤については当然という認識だった。
で、時間が経過して、転職もして新しいソフトハウスで勤務するようになった2010年代くらいから、徐々に働き方が変わってくるようになった。
過去のソフトハウスでは、黒柴の来歴#11で書いたようなサービス残業や、休日出勤時の代休など、いろいろな問題があった。しかし、その結果としてIT産業は新3K(帰れない、厳しい、給料が安い)として徐々に社員の採用が難しくなっていた。
そのため、今までサービス残業や休日出勤についても、社則を見直すとともに、社則の則った勤務を行うように経営層が改革を行った。
黒柴は、割と「昭和脳」だったため、「スケジュールに間に合わないなら残業なり、休日出勤するしかないんじゃない」と考えて、安直にタイムカードに登録せずに残業や休日出勤を行っていた(もちろん休日出勤などはPMには報告していた)。
もっとも、これは後で問題となって、役員から面接されて「(サービス残業やカウントできない休日出勤は)二度とやらないように」ときつくお説教された。
そんなこともあり、今ではサービス残業や無届の休日出勤は行わなくなったし、そもそも2019年4月に「働き方改革法」が施行されて以来、月に80時間を超えるようなトラブルプロジェクト自体が激減したと思う。
しかし、Hは黒柴以上に「昭和脳」だった。彼は、黒柴と同じ時代を過ごしてきたが、管理職の人たちにある意味「いいように」使われてきた。そのため、彼の中では「頑張ること」≒「稼働時間を増やすこと」と強く定義されていたようだった。
あるとき、マネージャAが管理しているプロジェクトが大炎上した。Hもそのプロジェクトにアサインされていたのだが、いつも通りマネージャAに請われるまま、残業・休日出勤を繰り返した。
だが、彼の中では「稼働時間を増やしていくこと」が最優先事項であり、仕事の質については振り返ることはなかったようだった。
プロジェクトが大炎上する中、Hの作業内容についてもいろいろと確認が入ったのだが、仕事の質が良くないため、二度手間になっていたり、他の作業者の作業に対して悪影響を及ぼしたりすることが多いと指摘されていた。
それの指摘事項を元に、マネージャAにHの作業について話をした結果が、冒頭の言葉である。
プロジェクトが大炎上してしまったため、マネージャAは自分の指示に従って残業・休日出勤をしてくれるHが良く見えるのだろう。だが、Hの作業はとりあえず「動くものを作りました」という状態で、客先で動作確認を行うと指摘事項が多発して、その修正で二度手間、三度手間となり、また客先からの信頼も失いつつある状態だった。
だから、Hの作業のやり方について、もっときちんと話し合うべきだったと思っている。
だが、黒柴がHと知り合ったころから、常にHをそのように使い潰す人たちがいたため、Hの中に刻まれた作業に対する価値観は、もはや修正することが難しい状態になっていた。
すでにHは転職して、黒柴との付き合いもないのだが、いい奴だったため、何とかできなかったのかなと今でも思う。
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