黒柴的パンセ #48

黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #33

ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。

「何か、質問はありますか?」
これは、メーカーの技術資料レビューが終わった後に、メーカー側担当者から言われたことである。

このとき、黒柴は自社の数名のエンジニアと、メーカーの通信機器のファームウェア開発に携わっていた。この技術資料レビューは、通信機器のLAN制御部分のハード仕様と、それに伴うソフトウェアの制御仕様に関するものだった。
一通りレビューが終わり、当然のことだがメーカー側のエンジニアが「何か、質問はありますか?」と言ってきた。

こういうシチュエーションは、多々あると思うが、諸兄らはどのように振る舞うだろうか?
一般的に説明された情報について、理解できないことが質問するというのが普通に考えるだろう。だが、このように考えることは無いだろうか?
「自分が、ここで質問してよいのだろうか?」
「この程度の技術情報を理解できていないのは、自分だけではないのだろうか?」
というようなことをである。

黒柴は、上記のように思っていた時期がある。それは、自分の立ち位置が良く分かっていなかったころだ。
今回のように、自社とエンドユーザ、SIerを含めての合同会議だった。基本的にエンドユーザへの説明はSIer側のエンジニアが対応してくれていたが、技術的な細かい部分については、実装を担当している自社が説明する必要があった。技術的な説明については、率先して話しを切り出すべきだったのだが、その会議体の中のヒエラルキーを感じてしまい、自分が率先して発言するということができなかった。
そのため、SIer側のエンジニアが話しを振ってくれるたびに、その問いかけに回答するような形で、なんとかその場での説明を切り抜けて記憶がある。
結果としては、本来説明をする立場のエンジニアが、きちんとした説明をできなかったこともあり、エンドユーザから見た自社の評価は著しく低かったということを後で聞かされた。

今回の場合は、メーカー側のエンジニアと、作業する自社側のエンジニアという会議体だけだったこともあり、いくらか気が楽だった。
しかし、それでも誰かが最初に話し始めなければ、この打ち合わせは「特に質問はありません」ということで終わってしまっただろうと思う。
そうならないように、とりあえず黒柴は当たり障りのない質問をした。確か「この部分の動きは、○○のように理解したのだが、それで間違っていないか?」という感じで、説明された内容を再確認するような質問だったと思う。
メーカー側のエンジニアは、再度その部分の動作について、詳細まで説明してくれて「その理解で問題ありません」と言っていただけた。

その黒柴の質問を皮切りに、自社のエンジニアたちも各々質問をしていくことができた。
結果的に、メーカー側のエンジニアたちも、いろいろと質問・確認をしてくれたことにより、自社が作業に積極的であることや、技術的な内容に対する理解がきちんとできていることを確認できたようで、自社に対する評価は高かったということを後で聞かされた。

後日、この打ち合わせに参加した自社のエンジニアに感想を聞いてみたが、この手の打ち合わせに何度か参加しているが、そもそも不明点があってもその場で質問していいものかどうかが分からないと言ってきた。
重ねて確認すると、どうやらこの手の技術的な打ち合わせであっても、いわゆる「しゃんしゃん総会」的に進行してしまい、自社のリーダーも率先して「特に質問はありません」と回答してしまうので、この場で質問をすることはタブーなんだと思っていたとのことだった。

この話は、会議でどうするか?という話ではなく、自分の立場、立ち位置、役職などでどのように振る舞うべきか?ということを説明したかった。
ちょっと、焦点がボケてきているので、少し頭を休めて、次回でまとめにしたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?