黒柴的パンセ #62

黒柴がこう思う#05

ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。

SES企業ってどうなの?(その5)

パンセ#60でSES企業のビジネスモデルが限界ということを記述し、その限界がきているSES企業が成長していくためには、どのような戦略を取ることができるのか?ということを前回述べてきた。
今回は、ChatGPTが上げた企業の成長に関する項目の中から、5~8について述べていく。

  1. 利益の増加

  2. 顧客基盤の拡大

  3. 製品・サービスの多様化

  4. ブランド価値の向上

  5. 組織の拡大

  6. 市場シェアの拡大

  7. グローバル展開

  8. 生産性の向上

  9. 財務基盤の強化

  10. イノベーションの促進

  11. 社会的評価の向上

  12. 競争優位性の確立


SES企業の成長戦略とは?

5.組織の拡大

企業を拡大するためには、2つの方法がある。一つは単純に社員数を増やすことであり、もう一つはビジネスを拡大するために、現状とは異なる部門を作り出すことである。
SES企業にとってもっとも簡単な戦略は、社員数を増やすことである。社員数の増加は、派遣先さえ見つかれば、そのまま総売上高の増額につながる。おそらく、SES企業が成長する唯一の手段がこの社員数を増やすだと思う。

以降は、余談になる。
自社の経営者は社員数を増やすという選択肢を取らなかった。理由としては、過去の経験が起因していると思う。
2020年代に入ってから、少し景気が上向いていることと、IT関連業界は人出不足も相まって、割と業績は好調である。しかし、バブル崩壊やITバブル崩壊など景気が減速する局面になると、IT業界には逆風が吹いてきた。これは、エンドユーザ企業から見るとIT関連のシステムは「設備投資」に当たるため、景気が減速するとそれに比例してこの手の投資には、及び腰になるからである。
エンドユーザが設備投資を控えると、SIer、メーカーが扱う案件も減ってくる。SIer、メーカーとしては案件が無いため、外部からエンジニアを調達することは無くなる。結果として、SIer、メーカーにべったりと依存しているSES企業は、商売あがったりだ。
過去に、そういう時期に直面し、エンジニアの派遣先確保に汲々としてことがあったので、自社の経営層は好調だからと言って事業を拡大するという方針は取らないとのことであった。
つまり、唯一SES企業を成長させる手段を取らない選択をしていることは、経営者が現状維持を強く望んでいることになる。

6.市場シェアの拡大

ここでは、SES企業における市場を考える必要がある。
SES企業が対象とする市場は、SIer、メーカーであり、それらのIT企業が抱える案件に対して、どれだけのエンジニアを投入できるかが、市場におけるシェアとなる。
拡大する場合に、方法としては2種類ある。一つは契約先のSIer、メーカーを開拓し、新規の取引先を増やす。もう一つは、すでに付き合いのあるSIer、メーカーの中で、今まで取引の無かった部署を紹介してもらうである。
前者の場合は、パンセ#60の2.顧客基盤の拡大で述べたように、新しい取引先を拡大していくことは、難しい。そのため、すでに取引がある、または過去に取引のあった人からの紹介という形をとるのだが、結果として後者のようなケースに終始することが大半だと思う。
いずれにせよ、何かプロダクトを販売しているわけではなく、エンジニアを派遣するビジネスを行っているため、5.組織の拡大ができなければ市場シェアの拡大もできない。そのため、この戦略を考えること自体がナンセンスである。

7.グローバル展開

ITバブルのころに一時的にアメリカのIT業界でエンジニアが不足し、短期的にエンジニアを獲得する手段として、オフショアというものが始まったと記憶している。このときのオフショア先は、英語でのコミュニケーションができ、ある程度ITスキルの高かったインドが多かったと思う。
国内のSES企業が、SESという作業者を提供するビジネス形態のまま、グローバル市場に打って出るには、日常的に英語でコミュニケーションが取れる海外の企業と競合していくことになる。
まあ、言うまでもなくグローバル市場で日本のエンジニアが優位に立つことはコミュニケーションという観点で難しく、この戦略もまたナンセンスである。

8.生産性の向上

一括請負の案件を実施する場合、見積もりの前提としている数値よりも生産性を向上させることは、利益の増加につながる。
しかし、SES企業の場合は、エンジニアをSIer、メーカーに派遣しての作業となる。このとき、個々のエンジニアが個人の生産性を向上させても、それはSIer、メーカーが請け負う案件の生産性の向上につながるだけで、直接利益にはつながらない。そのエンジニアの評価が上がって、翌年の契約単価が多少増額されるくらいがせいぜいである。
したがって、SES企業としての「生産性の向上」というのも、ナンセンスである。

長く成ったので次回に続きます。

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