黒柴的パンセ #53
黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #38
ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。
社長ごっこのしたい人
これは、黒柴の以前所属していた中小(というか零細)ソフトハウスの社長のことである。
黒柴の来歴で、最初に勤めたソフトハウスを退職してから、海外(アメリカ)で働くことを模索していたが、ITバブルの減速に伴い改めて国内で働くこととして就職活動を行った。
結果は惨憺たる有様だったが、その中で1社だけ黒柴の採用をしたいという会社があり、転職活動にも多少疲れていたので、その会社に就職することとした。
転職活動が惨憺たる有様だったのには、いろいろと理由があるが、一つには黒柴が年齢の割にきちんと説明できるスキルが少なかったことと、このころはまだいわゆる「コミュ障」だったためである。
この件については、そのうちまた詳しく紹介したい。
転職した会社は、上記のように零細ソフトハウス(社員数10名前後)だった。ただ、社長が元NTT研究所のエンジニアという肩書で、NTT系に窓口を持っているため、いろいろと面白そうなことができそうだと考えていた。
黒柴は、その会社に就職後にすぐNTTドコモに「業務委託」という形で常駐作業に出されることとなる。
もう時効だと思うし、少しネタバラシをすると、この社長は元々NTTドコモから特定の技術を持つエンジニアの派遣を打診されていたようだ。そのスキルを黒柴が持っていることを履歴書から見つけたので、黒柴の採用にいたったようである。
パンセのどこかで書いたと思うが、NTTドコモの法人営業部に配属されて、法人営業部が管理するデモ用サーバの保守・運用作業に従事することになる。
この「デモ用サーバの保守・運用」というインフラ系の作業は、知らないことも多かったので、最初のうちは面白かった。
しかし、1年近くも続けていると、ルーチンワークの連続となり、新たに覚えることもほとんどなく、「やっぱり、ソフトウェア開発をやりたいな」と思うようになった。
そのころ、会社の全社会議(と言っても総勢10名足らずだが)があり、この先の方向性、事業計画について社長から説明されると思っていたのだが、これが酷い内容だった。
次年度の売上目標や、それを達成するための施策、営業先と獲得案件の確度など、計画に対する説明は一切なく、只々「現状維持」という感じだった。
この計画に対する説明もなしに、「現状維持」と言ってくる社長の言動に、かなりの違和感と少しの不安を覚えた黒柴は、社長に直談判した。
当時の黒柴は、まだ30代ということもあり、多少の若さと経験不足、それとコミュ障だったことから、かなり厳しい物言いをした記憶がある。
それを聞いた社長の回答が、「オレは社長だぞ。社長に対してその物言いは失礼じゃないか?」と半ば逆切れしてきた。
自分よりも少し年上のいい大人が、きちんとした回答もせず、逆切れする有様には、さすがに黒柴も驚いた。
それの翌週くらいに退職願いを提出し、NTTドコモでの引継ぎもあって、翌月くらいに退職した。
当時の自社にいた営業担当(この方も、黒柴の退職から半年くらいで退職した)に、「社長と直接話して、こんな感じになったのだがどう思います?」と話を振ってみた。
営業担当が言うには、「所詮NTT研究所を辞めているのだから、技術者としても大したことは無い人だよ。ただ、NTT系列に人脈はあるから生活が成り立つ程度にNTT系から仕事はもらえているが、かといって会社を成長させていくほどの何かがあるわけでもない。」とのことだった。
結局のところ、社長はNTTの研究所からドロップアウトせざるを得なくなった結果、自身の生活のために起業して「一国一城の主である」という自身のプライドにすがっているだけの人だと思う。
そう思うのは、ペンシルビルの2フロアしかない会社なのに、その1フロアの半分くらいをパーティションで区切って、たいそう立派な社長室を設けていたことからも伺える。
昨今、ITエンジニアの不足から、他業種からもIT業界に転職する人も増えてきている。その中で「SES(System Engineering Service)企業ってどうなの?」という話も多くなってきた。
次回以降で黒柴なりの「SES企業」に対する考えを述べていくが、この話はそのための前振りである。
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