黒柴的パンセ #61

黒柴がこう思う#04

ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。

SES企業ってどうなの?(その4)

前回は、SES企業のビジネスモデル(エンジニアを入れ替えることで利益を確保する)について、述べてきた。
このビジネスモデルは、若者の就労人口の減少、および高齢社員の雇用延長ということで、かなり無理が生じていると思う。
社員の流動性が止まったSES企業は、企業として利益を確保していくために社員給与が上がることが無くなるので、それに我慢が出来なくなった社員の流出を招く。
退職した社員の人数分、新卒や経験の浅い(すなわち給与が低い)エンジニアを採用することで補充できれば良いのだが、昨今のエンジニア不足でそれも難しくなっているというのが現状だと思う。

SES企業の成長戦略とは?

黒柴は、社員の給与を上げていくためには、企業自体が成長していく必要があると考えている。では、企業の総売上高を増額させていく以外に、どのようなことが企業の成長につながるのだろうか?
ChatGPTに質問した結果が以下である。

  1. 利益の増加

  2. 顧客基盤の拡大

  3. 製品・サービスの多様化

  4. ブランド価値の向上

  5. 組織の拡大

  6. 市場シェアの拡大

  7. グローバル展開

  8. 生産性の向上

  9. 財務基盤の強化

  10. イノベーションの促進

  11. 社会的評価の向上

  12. 競争優位性の確立

なかなかに面白い項目が抽出されたので、これを一つ一つ考えてみたいと思う。

1.利益の拡大

これは以前から述べているが、利益をモデル化すると「利益=売上ー原価」である。
そしてSES企業の場合、月当たりの契約単価×12か月×エンジニア数でおおよその年間売り上げは決まってしまう。総売り上げ自体の増額させるためには、契約単価、または契約しているエンジニア数を増やすことが考えられる。
契約単価については、SES企業側の売値というより、SIer側の買値に縛られてしまうため、これを極端に増額することは難しい。また、昨今のエンジニア不足により、エンジニア数を増やしていくことも難しい。
では、原価を下げるという点については、どうか?
そもそもSES企業では、売上自体が予想できてしまうため、普段から原価についてはかなり抑え込む努力をしている。エンジニアについてはプロフィットセンターのため、人数を増やすことについてやぶさかではないが、経理、総務などのコストセンターとなる部門については、ギリギリの人数まで絞り込んでいる。
そのため、原価を抑えるとしても、いじれる部分はエンジニアの給与が大きな割合を占めることになる。
とはいえ、あまりにエンジニアの給与を絞りすぎると、エンジニアの離職を招いてしまい、今度は売上自体の減額につながる。
したがって、利益自体を拡大する有効な手段がないということになる。

2.顧客基盤の拡大

顧客基盤の拡大だが、SES企業が現在付き合いのあるSIerとは別に新規のSIerとの契約を結ぶのはかなり難しい。
SIerと新規に取引が開始される場合、当然のことだが高額な契約単価で契約を結ぶことはほとんどない。それは、会社としての実績が無いことに起因している。
実績を早期に積み重ねるために、高スキルなエンジニアをアサインすることが考えられる。しかし、よそのSIerで月次の単価が100万円で契約できているエンジニアを、実績のためだけに70万で契約することはできない。そんなわざわざ利益を捨てるような真似ができるほど、SES企業のキャッシュフローは楽ではないのだ。
そのため、新規に取引先が増えるのは、既存の取引先のマネージャークラスが転職し、転職先でエグゼクティブ待遇となっているようケースに限定される。この場合、新規取引となってもある程度の契約単価が見込めるからである。
そんな感じで、少なくとも自社の営業は、いわゆる飛び込みで営業を行うことは一切ない。誰かの紹介を口を開けて待っているだけである。

3.製品・サービスの多様化

これは言わずもがなだが、SES企業はSIerにエンジニアを派遣して、その人件費を売り上げとしている企業である。
そのため、製品と言ってもエンジニアそのもので、サービスと言っても人材派遣であり、そのから変革していくことはできない。
仮に、エンドユーザからの案件で請負開発を行っていこうとするのであれば、それはもうSES企業ではない。

4.ブランド価値の向上

SES企業は、BtoCではなくBtoBによるビジネスを行う企業のため、一般的な消費者向けの知名度を上げる必要はない。
そのため、SIer向けの知名度、評価を上げていくことになるのだが、2項でも示したように、基本的にはそのSES企業を知っている人の紹介という形の営業を取るため、あえて企業としてのブランドを高める必要が無い。
また、高めたところで過去に取引の無かったSIerが、広告を見て「お宅と取引したい」などと申し入れてくることもない。

長く成ったので次回に続きます。


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