黒柴的パンセ #63

黒柴がこう思う#06

ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。

SES企業ってどうなの?(その6)

パンセ#60でSES企業のビジネスモデルが限界ということを記述し、その限界がきているSES企業が成長していくためには、どのような戦略を取ることができるのか?ということを前回述べてきた。
今回は、ChatGPTが上げた企業の成長に関する項目の中から、9~12について述べていく。

  1. 利益の増加

  2. 顧客基盤の拡大

  3. 製品・サービスの多様化

  4. ブランド価値の向上

  5. 組織の拡大

  6. 市場シェアの拡大

  7. グローバル展開

  8. 生産性の向上

  9. 財務基盤の強化

  10. イノベーションの促進

  11. 社会的評価の向上

  12. 競争優位性の確立


SES企業の成長戦略とは?

9.財政基盤の強化

企業を成長させるためには、自己資本比率を高めて財務体質を健全化していくことは重要なポイントである。
しかし、諸兄らが思っている以上にSES企業の経営はかつかつでだ。オーダーが発生しない社員の比率が少し増加するだけで、簡単に利益を失ってしまう。
黒柴が最初に勤めたSES企業のセクションマネージャは、こんなことを言っていた。
「自社の財務は、夏冬の賞与支給時に内部留保だけで賄いきれない部分を銀行から短期借入している。次の賞与支給前に、その短期借入金を返済していく。返済し終わったころに賞与支給を迎えるので、また短期借入をする。これを毎年繰り返している。」
企業は金融機関との付き合いもあるので、適度に借り入れをして返済(含む金利)することも必要である。しかし実際のところは、上記のように経営を回すためのキャッシュフローは、とてもシビアである。
自社の経営者も、年1回の全社会議で財務体質が健全であることを盛んにアピールするが、それではなぜ社員の給与が上がらないのか?という疑問には答えられていない。

10.イノベーションの促進

SES企業は、基本的にイノベーションというものを考えていない。
なぜなら、イノベーションのための「投資」ということが考えられないからである。
9.財政基盤の強化で述べたように、SES企業の財務体質は意外とかつかつである。そのため、単年度での利益をいかにして確定するかということに終始している。結果として、会社から出ていくお金は、すべて「経費」として考えており、利益を増大させるためには如何にして「経費」を抑えるか?ということだけを考えている。
また、単年度でしか経営を考えられないため、本来「投資」が必要な短期中期での戦略などは考えられていない。そのため、例えば今年度で1000万円の投資を、この先何年でどのように回収(当然1000万円以上の売り上げを上げていくことになるが)などの施策は考えることができないのだ。
過去には、メーカーからメインフレーム(いわゆるIBM互換機や、それに類するもの)を購入することで、そのメインフレームを購入しているエンドユーザ向けの案件を紹介してもらうということもあった。
しかし、PCサーバなどのオープンシステムへの乗り換えが進むことで、そのような投資(?)もほとんどなくなった。
自社で、SES以外に請負開発を行っている企業は、プロジェクト管理手法などの研究・開発で「投資」ということも考えられる。しかし、SIer、メーカーへのエンジニア派遣のみを行っているSES企業の経営者の頭の中には、「投資」という言葉は無いと思っている。

11.社会的評価の向上

前提としてSES企業は、いわゆるITゼネコンの下請け企業のため、社会的には個々の企業は認知されていない。
黒柴が最初に勤めたSES企業では、1980年代にテレビCMを放送したこともあるが、その意図がまったく見えなかった。おそらく社長が目立ちたがりなのと、社会的認知度を上げることにより新卒の求職者を増やそうと思ったのではないか?と思う。
そもそもB2Cではなく、B2Bに終始しているため、一般コンシューマーに対する認知度を上げる必要はない。また、すでに述べているように、過去に取引があった人からの紹介という営業手法を用いるため、IT業界内においても認知度を上げる必要がない。むしろ、一般的な広告活動は何かしらのリターンを目指した「投資」ではなく、ただ会社からお金がでていく「経費」になってしまうため、やらないに越したことはないのである。
また、ITバブルが崩壊したころから、労働環境が悪化してIT業界は「新3K」と呼ばれるようになった。昨今、政府がDX、DXと言い続けていることと、ITエンジニアの不足から、この件は黒柴の感触としてもだいぶ緩和されたと思うが、一旦ついたイメージはなかなか払拭できない。
そんな状況の中で、わざわざ社会的評価を向上させるために「経費」を使うのは馬鹿らしいと思う。

12.競争優位性の確立

これも、競争相手が同業のSES企業であり、商品が自社が抱えるエンジニアである以上、競合企業との差別化を図るのは難しい。
そのため、商品であるエンジニアそのものというよりは、企業として評価をどうするか?ということが必要になると思う。
SIer、メーカーから評価されて、高額の契約単価でのエンジニア派遣を行うためには、以下のことが必要であると考える。

  • 健全な財務体質(赤字決算など論外)

  • 各種企業評価制度の取得(ISO/IEC 27001、Pマークなど)

特に2番目は、昨今コンプライアンスが重要視されている中では、ほぼ必須と言っても過言ではない。
SES企業には「経費」のみがあり「投資」は無いと述べたが、ISO/IEC 27001やPマークの取得は、SIer、メーカーとの契約を継続していくための必要経費だと思う。
SES企業の中でもある程度の企業規模があり、評価制度の取得に経費を支払うことができれば、競合SES企業との差別化が図ることができると考える。

次回に総括したいと思います。

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