黒柴的パンセ #67

黒柴がこう思う#10

ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。

シニアエンジニアの働き方

前回は、黒柴のようなシニアエンジニアがどのように働いていくか、ということを考えてみた。
その中で、一人のエンジニアとして働いていくことについて、2つの異なる例を示した。今回は、その中で黒柴が理想的だったな、と思えた人について話していきたい。

一兵卒になりきった人

黒柴が社内プロジェクトのリーダーとしてプロジェクト計画を立案しているときに、不足しているエンジニアをどこから調達するか、という話をしていた。
そのとき、自社の営業からRさんを紹介された。
Rさんは、もともと所属していた会社を定年となり、その会社で契約社員という立場で働き続けている人だった。もうかれこれ20年近く前のことなので、定年と言っても当時はほとんどの企業が60歳で定年で、今の黒柴と同年代で、体力的にも特に問題のない人だった。
余談だが、60歳で定年を迎えても公的年金の支給開始年齢が65歳まで引き上げられているため、60~65歳をいかに過ごすかというのは、当時の労働者の悩みの種だった。
体力的には問題ないといっても、当時は現代よりも人手不足という感じもなく、60歳以上のエンジニアを積極的に採用するSIerも少なかったので、Rさんの所属企業としては、売り込み先に苦慮していて、少々持て余し気味という話だった。

「持て余し気味」という触れ込みだったが、黒柴が軽く面接して、スキルレベルやコミュニケーションにも問題が無いことを確認したのち、主に手を動かしてプログラミングをしてもらうエンジニアとして作業してもらうことになった。

プロジェクトは、開始~終了まで10か月くらいの小規模改修だったが、Rさんの動きは、黒柴にとって完璧だった。
SIer経由で提示されるエンドユーザのビジネス要件を、黒柴が整理、設計してRさんに渡し、Rさんが実装仕様を考えたうえでプログラムに落とし込んで、製造・テストを行ってくれた。
Rさんも、今までITエンジニアとして働いた経験から、この辺りの作業切り分けをきちんと理解しており、黒柴に対して要件・仕様の確認を行うことはあっても、「どうやって実装すればよいですか?」ということを尋ねてくることは無かった。逆に実装面については、画面のデザインを含めていろいろなバリエーションのデモを作成して、「どれが良いと思いますか?」と都度確認をしてくれた。
このとき、「実装案としては案Aの方が良いと思えるが、エンドユーザのビジネス要件や、実際の業務手順から判断すると案Bが良いと思うので、案Bで実装してください」ときちんと伝えると、「分かりました」とふたつ返事で了解してくれた。
こういうやりとりは、プロジェクトを進めていく中で何度も発生したが、そのたびに黒柴の作業に負担を強いることがなく、すごく気持ちよくプロジェクトリーダーとしてプロジェクト推進が行えたと思っている。

このプロジェクトが終わったのち、2年後くらいにまた同じプロダクトの大規模な改修案件を受注して、そのときも黒柴がプロジェクトリーダーとなったが、そのときも社外エンジニアの調達を行う中で、真っ先に声を掛けさせてもらった。
上記したように、そのときもRさんの所属企業では、若干Rさんを持て余し気味だったので、他に契約先もなかったことから、また一緒に働いていただいた。
このときも、前回同様のスキル、コミュニケーションで、黒柴としてはRさんに関しては満足がいく結果となった。

ただ、一つ注意が必要だったのは、Rさんはきちんと作業分担を線を引いているので、あいまいな指示については納得して作業を進めてくれなかった。
パンセ#38で書いたように、プロパーの後輩に対して、プロジェクトに携わるうえで、エンドユーザの業務理解を進めるために、要件整理、設計を行った上で実装デモをRさんに作ってもらうように指示した。
しかし、後輩は設計を上手くまとめられないままにRさんに話をしてしまった。Rさんもそれに向きあってくれて、いくつもの実装案を提示してくれるのだが、後輩はRさんが提示してくれる情報の海に溺れてしまい、実装案を「こういう理由で、これを選択します」と判断できなくなった。その結果、作業はそこで進まなくなり、責任を感じたのか後輩はメンタル的に病んでしまった。

最後の話は、後輩に仕事を割り当てた黒柴に非があり、Rさんにはなんら問題は無いのだが、そう思えるほどRさんの働き方は、一人のエンジニアとしてパーフェクトだった。

次回は、同じプロジェクトでいた一兵卒になり切れなかった事例について話していきたい。

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