黒柴的パンセ #69
黒柴がこう思う#12
ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。
シニアエンジニアの働き方
2回にわたって、シニアエンジニアが一人のエンジニア(いわゆる一兵卒)として働いていくことについて、良かったケース、ダメだったケースについて考えてみた。
黒柴なりの結論とすると、エンジニア派遣に登録して、まったく過去のしがらみのない場所で働くのであれば、それも可能だと思う。Rさんが一人のエンジニアとして上手くいっているのも、リーダーである黒柴との間に、特にしがらみがなく、リーダーとメンバーという関係性が上手く保てているからである。
一人のエンジニア以外の働き方
では、シニアエンジニアは一人のエンジニアとして働くだけで、良いのだろうか?
これは、その人のおかれている立場によると思う。パンセ#67で書いたように、Rさんは60歳を過ぎて自社の社則上は定年となり、再雇用状態となっていた。Rさんが言うところでは、子供も独立し、自宅の住宅ローンなどの大きな借金もすべて払い終わっており、ある程度の貯蓄もあるため、あとは65歳から始まる年金受給までの5年間をいか埋めるかということだった。
そのため、現状でもありがちな、定年再雇用で年収が下がっても、それほど影響はないため、一人のエンジニアとして働くことが可能なのである。
これが、まだ住宅ローンなどの支払いが残っていたり、扶養が必要な子供がいたりする場合は、事情が異なってくるだろう。
一人のエンジニアとして働くということは、契約単価も新人並みとは言わないが、それなりに下がるということになる。そのため、Rさんのように「年金支給までのつなぎ」と割り切れるなら構わないが、現状の年収を確保しないと厳しいというのであれば、年収が下がることは受け入れがたいことになる。
では、一人のエンジニア以外として働く以外にどのような働き方があるのか?
黒柴は、組織の生産性を向上させる動きをしていかなければならないと思っている。
最初のソフトハウスに在籍していたころ、あるプロジェクトを中堅のエンジニアAに任せたことがある。Aは、エンジニアとしてはかなりスキルのあり、個人の生産性は1.4人分くらいに評価できた。プロジェクトということは、当然Aだけでは無理なので、Aよりスキルは落ちる3年目くらいのB、Cと、ほぼ新人のDをアサインした。
黒柴の評価としては、このチームの生産は以下のようになった。
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黒柴は、プロジェクトを遂行するにあたって、A自身が頑張ることには限界があるから、チーム全体の生産性を上げることに注力して欲しいとお願いした。
つまり、A自身が個人の生産性を積み上げたところで、あと0.1がせいぜいだろう。しかし、A自身の生産性を多少落としても、B、C、Dの生産性を0.2ずつ向上させることができれば、チーム全体での生産性は大幅に向上させることになる。
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しかし、このときは具体的に「何をしろ」ということが、黒柴には指示できなかった。そのため、Aもいろいろと悩んではいたのだが、B、C、Dの生産性を向上させるだけの動きはできていなかった。
このとき黒柴が考えていたけど、うまく言語化できなかったことは、「テックリードとして、開発のベースとなるアーキテクチャを設計し、それに則ることで各作業者の生産性を向上させる」ということである。当時は、「テックリード」という言葉もなく、「システムアーキテクチャ」ということも理解していなかったので、Aとはいろいろと話したのだが理解が得られなかった。
「テックリード」という職務は、シニアエンジニアにこそ相応しいと考えている。もっとも、「テックリード」として働くためには、プロジェクトマネージャにそれを認めさせるだけのスキルや、実績が必要である。
黒柴も、実は「QAエンジニア」を務めるテックリードとして働きたくて、JSTQBの資格を取得した。
しかし、資格取得と前後して、社内で開発するような請負案件がほぼなくなってしまったため、今は一人のエンジニアとして働くしかなくなっている。