黒柴の来歴 その13

管理職としてのお仕事 その4

その12からの続き
現場からは、契約を見直して早期に撤退して欲しいという要望が多数出されているような状態だったが、このプロジェクトを抱えるセクションのマネージャである黒柴の上司も、すでにかなり病んでいた
全く先行きの見えない状況から過度なストレス状態に陥り、そのストレスから解放されるために飲酒に逃げてしまったため、ほとんど出社しなくなっており、半年くらい後に退職してしまった

そのため、客先との交渉は、休みがちになったセクションマネージャの上の役員が出てくることになった
この役員は、過去に現場のベテランたちの上司でもあった人で、ベテランたちは「あの人なら、この状況を解決するために、きちんと交渉してくれるだろう」と期待していた

グループのマネージャが前任者から黒柴に唐突に替わり、その上司であるセクションマネージャは機能せず、現場のリーダーも「うつ」状態で休みがちというボロボロの状態を立て直す意味で、その役員がメーカー側の責任者との打ち合わせに臨んだ
この打ち合わせに、黒柴は何か別の打ち合わせがあって同席しなかったのだが、黒柴よりも過去の経緯を良く知る現場のベテラン1名が、状況説明のために同席していた
そのベテランが現場に戻ってくるなり、「やってらんねーよ」と言った後に、打ち合わせの状況を説明しだした

現場のベテランたちは状況の改善、あわよくば撤退の申し入れにかなり期待していたのだが、役員は「弊社が最後まで責任をもってあたらせていただきます」と、無条件降伏的な申し入れをしてしまったとのことだった
15時過ぎくらいに同席したベテランが現場に戻ってきて、状況の説明を行うと、他のベテランや中堅を含めて皆落胆し、その日はほぼ全員が早退してしまった

この無条件降伏という結果は、かなり影響が大きく打ち合わせの後に、このプロジェクトに最初から参画していて、最も状況を把握していて主戦力になっていた中堅数名が退職した
そんな状況を改善するというか、会社としては「精いっぱい手を尽くしているんだ」という姿勢を見せるために、黒柴はこのプロジェクトに専念させするとして、現場に常駐となった

しかし、これは黒柴にとっても結構辛いものだった
というのは、このプロジェクトで自社が請け負っている部分は、COBOLによる開発を行っていたにも関わらず、黒柴はCOBOLのスキルが全くなかったからである
スキルがないため、テストプログラムを実行するためのJCL(Job Control Language)を組むサポートもできず、かといって過去の経緯も全く知らないため、仕様調整・仕様確認などもできない、この現場では完全な「お荷物」状態だった

この「現場ではお荷物」という状態は、黒柴のプライドを傷つけていた
そんなことと先行きの見えない状況に、ついに黒柴もこの会社を去ることを決意した

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