黒柴的パンセ #64
黒柴がこう思う#07
ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。
SES企業ってどうなの?(その7)
パンセ#60でSES企業のビジネスモデルが限界ということを示し、その限界がきているSES企業が成長していくためには、どのような戦略を取ることができるのか?ということを前回まで述べてきた。
過去3回にわたって企業の成長に関する項目に従ってSES企業を考えてみた。
今回は、その総括を述べていく。
利益の増加
顧客基盤の拡大
製品・サービスの多様化
ブランド価値の向上
組織の拡大
市場シェアの拡大
グローバル展開
生産性の向上
財務基盤の強化
イノベーションの促進
社会的評価の向上
競争優位性の確立
SES企業は成長するのか?
3回にわたって、「企業はどのように成長するか?」というキーワードを元に、SES企業の成長について考えてきた。
企業の成長=利益の増加とした場合、SES企業は組織の拡大、すなわち社員数を増加させることで、総売り上げの増加、ひいては利益の増加ということが可能である。逆に言うと、それ以外のやり方で利益を増加させることは、ほぼ不可能と言える。
しかも、このやり方では契約単価の増加率≧給与の増加率となることが前提条件となる。そのため、エンジニアは長期間勤めていても、思ったほど給与は上がらないということになる。
SES企業からの脱却は可能か?
では、SES企業(作業者派遣を主業とするソフトハウス)から、SI企業(エンドユーザ企業からのシステム開発請負を主業とするソフトハウス)へ移行していくことは可能なのだろうか?
これもかなり難しいと言える。
一つは、いずれかの業務に特化したナレッジを持っていないと、システム開発を請け負うことは難しいということである。
エンドユーザから発注されてシステムを開発する場合、要件定義から受け入れテストまでを請け負わないと意味がない。例えば、要件定義から基本設計工程くらいまでをSIerが主導し、固まった仕様を元に詳細設計から結合テストまでを請け負うのであれば、作業者派遣と同様にSIerが考える契約単価に制約を受けることになる。
そのため、自分たちが一次請けとなって要件定義から始まり、発注元の受け入れテストへの対応までを実施することが重要である。
そのためには、「なんでもやりますよ」ではなく、「〇〇という分野に特化した業務を得意としています」ということがアピールできないとエンドユーザからの発注はおぼつかない。
しかし、このような業務知識を会社のナレッジとして整理・活用することは、SES企業には困難である。
なぜ、業務知識を会社のナレッジとして整理することが困難なのかと言えば、これは二つ目の理由になるが、単年度の経営計画を実行することでギリギリであり、中長期の計画が立てられるほど潤沢な内部留保が作れないため、投資ができないからである。
結果として、SES企業がエンジニア派遣の業務から、エンドユーザからのシステム開発請負を業務とする企業に変わっていくことはできないといえる。
SES企業は成長しなくても良いのか?
ChatGPT先生に、いろいろとデータを用意してもらいながら考えてみよう。「社員数100人以下の中小SES企業の経営者(オーナー社長)の年収はどれくらいですか?」という質問に対しては、以下のような回答となった。
では、そのSES企業で働くエンジニアの給与はどうなのだろうか?
「中小企業で働くエンジニアの年収は?」という質問に対して、以下のような回答となった。
何を言いたいのか分かると思うが、40代くらいでSES企業を起業し、SIer、メーカーにある程度固定できる契約をもらって、特にトラブルもなく安定経営していけば、自身が経営者である間は1,000万円をこえる年収が確約されている。
もちろん、1,000万円が適切なのか、高いのか、はたまた安いのかという論議はあると思うが、すくなくともSES企業で働くエンジニアの2倍以上の年収である。
だから、ある程度安定した経営が行えていると判断した経営者は、トラブルの元になりそうな新規事業へ手を出すようなことは行わない。
彼らにとっては、安定経営さえしていれば、あえて火中の栗を拾う必要は無いのだ。
すなわち、ムリに成長する必要はないのである。
次回は、こういうSES企業をどうやって見つけていくかを話してみたい。