黒柴的パンセ #38
黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #23
ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。
「性格ですからねぇ、仕方ないかと」
これは、自社の若手社員S(男性)からの言葉である。
話しの発端として、黒柴があるプロジェクトのリーダーを務めているときに、設計工程のメンバーとしてSがアサインされた。
S以外にもYという若手の女性もアサインされた。YはSよりも後輩だった。
設計工程とは言ったが、開発の内容としては既設のWebアプリケーションシステムを、ハード更改に合わせて大きくリニューアルしたいという内容だった。ただ、大きくリニューアルといっても、機能については大きな追加・変更はなく、どちらかというとISO:25010ソフトウェア特性にて示される『使用性』に関連する部分を見直して欲しいとのことだった。
このシステムは、1'stリリースのころからかかわってきたが、機能追加を繰り返してきたため、画面デザインや操作性に一貫性を欠く部分も多く、エンドユーザもそういう点は気になっていたようだ。
黒柴は、とりあえずアサインされた若手2名に仕事をさせなければいけないことと、ある程度のスキルアップもさせなければならないことから、多少無理があるとは思っていたが、この使用性を見直すための設計作業を実施させることにした。
ただ、使用性を確認するために簡単なプロトタイプ作成が必要だと考えたのだが、この2名はプログラミングスキルも高い方ではなかったので、たまたま営業から紹介された高齢だが手の早い派遣エンジニアRさんを1名付けた。
作業としては、現行の画面をどう見直すかをS、Yで検討し、それをRさんに伝えてプロトタイプを作成し、その使用感とかを評価してエンドユーザへの報告資料を作成したり、プロトタイプへのフィードバックを行ったりしていた。
しかし、そのうちYがだんだんとメンタル障害っぽくなってきたとSから報告を受けた。理由としては、Rさんとの会話に時間を取られて、Y自身の作業が進まないからということだった。
Rさんは、黒柴から見ると「話し好きの気の良いオッサン(オジイサン?)」で、画面のデザインなども自身の経験も踏まえて、いろいろな実装案を提示してる人だった。だから、自分としては「こういうデザインにしたい」と伝えればそれを実装してくれるし、Rさんの方から「A案、B案があるけど?」と提案されても、「エンドユーザの運用を考えるとA案がいいと思う」と回答すると、そのとおりに実装してくれた。
そんなRさんだったので、「なんでそんなに時間がとられるの?」とSに確認したら、その実装案の会話について、Yが「こうしたい」ということを伝えられないばかりに、話しが長くなっているとのことだった。
実は、Yはパンセ#23で取り上げたコミュニケーション力の低い新入社員なのだ。彼女は、マネージャとの1on1でもほとんど会話にならず、「もじもじしないできちんと自分のことを話してください」と、再三にわたってマネージャから注意されているありさまだった。
黒柴もある程度そういう情報は耳に入れていたので、Sに「Yのコミュニケーションのやり方について、もう少し指導してやったら?」と提案してみた。
しかし、Sから返ってきたのは、冒頭の言葉だった。
この「性格だから・・・」という言葉で済ませようとしていることには、すごくもやっとした。「性格だから」何もしなくてよいのか?、何も変えていかなくてよいのか?と、Sには指導したつもりだが、結局のところYはメンタル障害で半年くらい休養となり、そのままプロジェクトを外れることになった。
また、この件で黒柴のマネジメントについても、いろいろと指導なり、叱責があり、すごくわだかまりが残った。
これは、余談。
Sは、このころからYとプライベートで付き合っていたようだ。この件から2年くらいした後、二人は結婚した。
まあ、いろいろとある(例えば、厳しく指導したくないとか)のだろうが、それを「性格だから仕方ない」で逃げるのはどうかと、今でも思っている。
別件で「性格だから」と言い訳されたこともあって、黒柴は今でも「性格」を理由に逃げようとする人は大嫌いである。