黒柴的パンセ #65
黒柴がこう思う#08
ここでは、過去の体験とは別に、黒柴が何を考えているかを述べていく。
SES企業ってどうなの?(その8)
パンセ#64で、「SES企業は成長しない」、「SES企業の経営者は、あえて火中の栗を拾うような真似をしない」と述べた。
では、このようなSES企業をどのように判断すればよいのだろうか?
SES企業を評価するには?
まず、SES企業であることを確認するために、対象企業のホームページを見てみよう。
事業内容は、ソフトウェア開発やシステム環境構築などをうたっていると思う。会社情報などに「派遣業許可番号」が記載されていれば、間違いなくSES企業である。
なぜなら、SES企業のホームページは、どのような目的で作成されているのかというと、求人と取引先となるSIer、メーカーの確認用だからである。
SES企業としてSIer、メーカーに対して人材派遣を行うためには、自社が派遣業として厚生労働省の許可を得ていることは、重要なポイントだからである。
過去の情報を確認しよう
対象企業のホームページが確認出来たら、ウェイバックマシンを利用して過去のホームページを確認してみよう。
どこまで遡れるかはわからないが、その企業の過去5年くらいまで遡れるのであれば、それらを確認してみて欲しい。
変化が少ないようなら、その企業自体がSES企業として成長していない、成長を望んでいない、ということになる。
マーケティングを少しでも理解している人ならわかると思うが、自社のサービス、プロダクトの販促を図るのはとても大変だ。
にもかかわらず、ホームページがほとんど変わっていないということは、特に企業を成長させる意識が無いということであり、またSES企業としてある意味「安定経営」しているので、変える必要がないということである。
自社プロダクトは意味がない可能性もある
自社プロダクトをホームページ上に掲載して、人材派遣以外のビジネスがあることをうたっている企業もあるが、これもよく確認する必要がある。
そのプロダクトを検索して、導入事例などその企業以外での情報がほとんど出てこない場合、SIer、メーカーなどに依頼されて作らされたプロダクトで、そのプロダクトを売ることはビジネスとして考えていないケースがある。
すなわち、SIer、メーカーが企画しているプラットフォーム向けにコンテンツとなるプロダクトが必要で、それをSIer、メーカーから依頼されて、とりあえず「作りました」ということだ。
これは、SIer、メーカーからすると、「家庭用ゲーム機を作ったけど、ゲーム機で遊ぶゲームが必要だよね」ということであり、最近だと例えば移動体通信提供会社が5G向けのコンテンツや、SIerが提供しているクラウドを使用したプロダクトなどがあげられる。
作っただけで導入事例が無い場合、メンテナンスやバージョンアップも実施されていないため、その自社プロダクトに関わる作業はSES企業内には存在しないことになる。
5年遡れない場合は?
社歴が浅く、5年も遡れないSES企業はどうなのか?
これは、その時点では業績が良い可能性がある。理由としては、どこかのSIer、メーカー、または大手SES企業からスピンアウトした経営者が設立したばかりのSES企業であるため、引き抜いたエンジニアの平均年齢が若く、社員の給与が低いためである。
そのため、売り上げに対する原価が抑えらえることになり、利益率は高い。結果として、インセンティブのような形で社員への還元もあり、社員の評価としても「優良企業」ということになる。
ただ、ずっと語ってきているように、SES企業は成長する道筋が限定されているので、その先の5年で社員の給与は徐々に上昇していき原価が増大していくため、利益率はどんどん下がってくる。
さらに5年も経つと、社員の給与はどこかで頭打ちとなり、いわゆる「できる」社員から転職していき、会社全体での生産性は下がって新たなビジネスを企画していくことが困難になる。
結果として、成長が見込めない、現状を維持するだけのSES企業が出来上がる。
結論
設立年度とか、そこからのホームページなどを確認して、社歴が長く、かつホームページの内容が変わっていないSES企業は、安定経営に舵を切っているため、この先も成長することは難しい。
そのため、新卒や未経験者が、就職する場合は、経験を重ねて5年くらいを目途に転職することを考えておくのが良いと思う。
また、社歴の浅い企業は、ある種のギャンブルだ。
利益が出ていて、できるエンジニアも在籍しているため、いろいろと参考になることも多いかもしれない。また、SES企業とは別のビジネスを展開する可能性も秘めている。
しかし、経営者が企業の成長について無策であり、安定経営に対して舵を切った場合に、短期間で給与が頭打ちになる。
当初の居心地の良さに浸かってしまい、「茹でガエル」のように転職時期を見失わないように、よく考えていただきたい。
次回は、自分のようなシニアエンジニアが、どのように働いていくかについて考えたい。