黒柴的パンセ #56
黒柴が経験した中小ソフトハウスでの出来事 #41
ここでは、中小ソフトハウスで勤務していく中で、起こったこと、その時何を考え、また今は何を考えているかを述べていく。
「本人も、半ばあきらめていると思います」
これは、黒柴が上長のグループマネージャと1on1ミーティングをしている中で、上長から出てきた言葉である。
この話題は、黒柴が上長と1on1ミーティングをするたびに話される。なぜなら、自社のSES企業としての悪い部分を象徴しているからである。
話題の本人というのは、自社の中堅社員Aである。
Aは、あるSIer経由でエンドユーザ企業に、かれこれ10年以上も常駐している。
最初は、エンドユーザ企業にマーケティング関連のパッケージソフトの導入に参画した。導入後からは、保守作業要員としてずっと常駐作業を行っている。
保守作業ということで、日々の問い合わせ対応や年間計画に基づいた小規模改修などはあるが、まとまった規模の開発には発展しないため、対応しているのはA一人だけで、部下・後輩などはいない。
ここで問題となるが、Aの考課、待遇である。
自社の人事考課は、スキル、および実績で評価が行われる。
すなわち、
なにか新しいスキルを習得したか
そのスキルを使って業務が行えたか
業務を遂行した結果、会社の利益に貢献したか
などである。
しかし、同じ保守作業、しかも問い合わせ対応や、既存のシステムに対する小規模改造では、なにか新しいスキルを習得するチャンスは皆無だ。
また、会社利益に対する貢献と言っても、人月単価などほぼ横ばいだ。
一般的な話として保守費用は、新規導入時はトラブルも想定されるので、ある程度の金額となる。しかし、運用を重ねていくにつれて、システムも枯れてきて、問い合わせ頻度も下がってくるので、そこにかける費用は下がっていく。
ただ、エンドユーザもSIerも、Aに去られては困るという事情もあるため、A一人を囲い込めるだけの単価は払ってくれているようだ。まさに、「飼い殺し」である。
Aは、5~6年前に現状所属しているグループから、黒柴が所属するグループに異動してきた。
その目的としては、Aが同じ作業をやり続けていることで、Aのスキルについて幅が狭まっており、その解消を考えてのことだと思う。
Aと黒柴の上長は1on1を行い、この先どのようなキャリアデザインを行うかについて話し合った。
しかし、半年くらいで元のグループへ異動となった。その原因としては、Aが常駐していたエンドユーザ、およびSIerからの申し入れのようだった。
黒柴の上長曰く、「Aのキャリアデザインをいろいろと考えていたのだが、Aが常駐していたエンドユーザ、SIerを担当する営業のセクションマネージャが日和ってしまい、大人の事情で元のグループに異動することになった」と憤慨していた。
Aに対する自社の対応は、黒柴が上長と1on1をする際に度々話題にあがり、自グループのメンバーを同じ内容の仕事に長期間従事させることにより、成長の機会を奪うことが無いようにさせたいと、上長と確認している。
黒柴の上長に「最近、Aってどうなんです?」と話題をふると、「(自身のキャリアデザインを)半ばあきらめていると思います」と返ってきた。