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女性の表現は誰のもの? 「似非フェミAV」発売中止!?をめぐる問題【前編】

月島さくら氏と稲森美優氏が主演のAV、『似非フェミニストの闇(媚薬)堕ち快楽性交!! 〜現役AV女優に起こった惨劇〜』のまわりが、発売前から騒がしい。

Twitterで一部のフェミニストたちが「似非フェミAV」に対し、カスタマーセンターへのクレームを呼びかけている影響がどの程度あるかは計り知れないものの、DMM(FANZA)やU-NEXT(H-NEXT)、Amazonなど、大手流通・配信サイトから(予約)販売・配信ページが消えている(2023年10月22日現在)。

また、この「似非フェミニスト」AVを、フェミニストに対する見せしめの「デジタル性暴力」であるとする声や、AVの内容が「特定団体や特定人物への名誉毀損」であるとする声もある。

インターネットの特定のクラスタの中では現在進行系でしっちゃかめっちゃかな事態ではあるが、正直、一般層からは「何がなんだかさっぱり?」で、とっつきにくいしなんの得にもならないと思われるかもしれない事例である。

だが、「女性と性表現」「女性の表現」「表現の自由」の問題として非常に重要だと思うので、経緯とともに持論を簡単にまとめたいと思う。



【月島さくら✕稲森美優『似非フェミニストの闇(媚薬)堕ち快楽性交!! 〜現役AV女優に起こった惨劇〜』AV発売情報解禁(2023年10月10日)】

2023年10月10日、月島さくら氏・稲森美優氏主演「似非フェミ」をテーマにしたAVの発売情報を、主演女優である二人がTwitterで投稿した。

【自称フェミニストらの販売・配信へのクレーム呼びかけ】

宣伝ツイートに添付されたサンプル動画が、「AV女優を“被害者”として救済する団体代表(月島さくら)が、公金を不正受給する疑いがかけられ、媚薬堕ちする」という内容であったためか、「似非フェミ」というテーマそのものが忌避されたためかはわからないが、「似非フェミAV」発売情報解禁直後からTwitter上の一部の自称フェミニストや反ポルノ派から各社のカスタマーセンターにクレームを入れるよう呼びかけが行われた。

【「パロディAV」は男性による「デジタル性暴力」?】

「似非フェミ」をテーマにしたAVに対し、一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃氏は、「ColaboをパロディにしたAV」であるとしたうえで、主演女優らは「バスカフェに嫌がらせで写真を撮りにきたり、Colaboに対する嫌がらせ目的だと思われる自称支援団体を作ったり、SNSでの発信などで妨害行為を続けてきた」人物であり、彼女らは「性売買業者や性売買で利益を得ている男たちがいるのに、その構造を覆い隠すために」矢面に立たされていると憤りを表明しました。

バスカフェに嫌がらせで写真を撮りにきたり、Colaboに対する嫌がらせ目的だと思われる自称支援団体を作ったり、SNSでの発信などで妨害行為を続けてきた女性たちです。
背後には性売買業者や性売買で利益を得ている男たちがいるのに、その構造を覆い隠すために女性を前に出して、女性たちに率先して嫌がらせをさせる。そういうことはよくある業者の手口です。それを理解しているから、私やColaboは、このような嫌がらせを続ける女性たちを相手にせずに過ごしてきました。これからもできる限り、そうしたいと思っています。
性売買を性搾取ではなく「仕事だ!」と言う人たちが、このような形でAVを嫌がらせの道具にし、性的に屈服させようとしてくる。そのことから見えるのは、彼らが、その「仕事」がどういう意味を持ち、どのような影響を少女や女性や、男性、社会に与えるものなのか理解しているということです。
女性たちを前に立たせて、女性であることを利用して、一連の嫌がらせを先導させていること、その意味は初めからよくわかっています。だからこそ胸が痛みます。

https://x.com/colabo_yumeno/status/1711972221718335719?s=20

月島・稲森両氏の行動・活動が「Colaboに対する嫌がらせ」であるか否かはいったん置いておくとして、仁藤氏は、彼女らを業界や男性の利益・利権のために利用されて矢面に立たされている、つまり、自分の意志で行動・活動していない人物であると評していることになります。

また、弁護士の伊藤和子氏は、

生意気なフェミニストを集団でレイプしてこらしめる、インドで起きたビシャカ事件という有名な性暴力事例がありました
本件はオンラインのパロディという体裁でも、明らかに特定個人を標的にしたデジタル性暴力といえます
配信・通販サイト各社が漫然と利益のために販売配信するか、倫理が問われます

https://x.com/KazukoIto_Law/status/1712292724249100385?s=20 


と、「似非フェミAV」を「フェミニストに対する見せしめの暴力」であり、「特定個人を標的にしたデジタル性暴力」であり、販売配信するサイト各社に倫理を問うています。

【発売前から消える「似非フェミAV」】

こうした動きの影響がどの程度あるのか詳細はわかりませんが、10月12日にはAVメーカーの担当者と思われるアカウントが「FANZA及びUNEXTでも圧力かかりリリース難の事態」であると投稿し、主演の稲森氏も「販売停止せざるを得なくなった」と投稿しました。

その後、10/13(金)から配信開始予定であったU-NEXT(H-NEXT)では配信されず、DMM(FANZA)では販売(予約)ページが消え、その影響か一時期Amazonのジャンル1位になるものの、Amazonの販売(予約)ページも消えました(2023年10月22日現在)。

【6つの論点・問題点と結論】

さて、ややもすると一般層からは「何がなんだかさっぱり?」で、とっつきにくいしなんの得にもならないので見なかったことにしようと思われるような事例ですが、個人的には、

  1. 作品が発売前(全編公開される前)からクレームによってキャンセルされること

  2. AV新法をめぐる因縁

  3. 月島・稲森両氏を「男の傀儡」「自己決定による行動ではない」と扱うパターナリズム

  4. 「パロディAV」は「デジタル性暴力」なのか?

  5. 月島・稲森両氏の振る舞いを「エロだから」「お行儀が悪いから」と切り捨てることがはらむ権力

  6. (法的係争になるか否かはおいておいて)AV女優が「喧嘩上等」とばかりに自分たちの技術とプライドをかけて立ち向かうことについて

など、6つの論点・問題点があり、

結論としては、
「似非フェミAV」をめぐる稲森両氏の行動は女性の表現活動において重要であると考えています。

長くなったので、いったん前後編に分けます。
後編では、問題点・論点の詳細を説明していきます。

なお、「表現の自由」擁護の視点に対しては、近年「エロを守りたいだけ」という揶揄が飛んできますが、「エロだから」擁護しているわけではありません。
エロやオカルトは、近代以降の社会で「ないものとして存在する」ことが通常と位置付けられ、周縁化されています。(家族で過ごすリビングでは、性的でいかがわしい話題を避けようとする人がほとんどです)
エロやオカルトは周縁化されているからこそ、不当に排除されることに抗議をしてもまともに聞き入れられない傾向があります
漫画家のちばてつや氏は、戦前の言論統制が「エロ・グロ・ナンセンス」から始まり、その後、新聞記事や本、放送など、国家権力による過度な表現規制が広がっていったと言います。

また、この件は現時点では、仁藤夢乃氏たちにとっては名誉毀損、月島さくら氏・稲森美優氏にとっては威力業務妨害、どちらも係争化する可能性のある性質をはらんでいるため、筆者の視点は、「発売前・全編見ていない状態、係争化に発展していない状態における、個人の見解」であることを明記しておく。

後編につづく


最後まで読んでくださりどうもありがとうございます。
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後編は「AV辞めさせ達人」など、実際は差別的な話なのに、ネットミーム過ぎて一般に伝わりづらい内容を頑張って整理しているところです。
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シバエリ
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