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たまり場をつくる


仙台駅前、某店の記憶

私は以前、仙台駅前にあった某コンカフェに足繁く通っておりました。
仮に、そのお店をA店と呼びましょう。

A店は駅前の好立地にありました。
しかし、
店内は不衛生で、
喫煙所の灰皿は常に山盛り。
ベランダにはゴキブリがいて、
クーラーの風を浴びると目が痒くなりました。
カウンターの椅子は今にも折れる寸前。
足置きのパイプは壊れたまま放置。
店の半分は荷物置き場となり機能しておらず、
ドリンクも多くを切らしている状態。
謎の料金が羅列された券売機が設置され、
メニュー表のデザインは統一感がない。
SNSや看板からは集客する気が見えない。
軽犯罪が頻発し、
トラブルで警察が来たことも……。

一言で言えば無法地帯。
あそこまで酷い環境は中々ありませんでした。

そんな滅茶苦茶な状態のA店ではありましたが、
私は不思議とA店が好きでした。

何が面白かったのか?

A店はすでに閉店。
働いていたキャストさんの多くは、
新しくできた某コンカフェに移籍しました。
その新しいコンカフェを仮にB店と呼びましょう。

B店は、
内装も綺麗、
メニューも充実していて、
お店としてちゃんとしていました。

しかし……。
かつてA店の常連さんだった方は言いました。
「面白くない」と。

実は私も何回か行ってみて、同じような感想を抱きました。
B店は、お店も綺麗で、
キャストさんもA店からほぼ横にスライドしてきた感じ。
それなのに何故、こうも面白みに欠けるのか。

A店とB店の違い……。
一体なんなんだ、と考えてみた結果。
まず、思い浮かんだのがお客さんの様子でした。

A店は、お客さんがほったらかし状態でした。
私の記憶の中にあるA店。
酔っ払ってグラスを片手に歌う人。
周りのお客さんに絡みにいく人。
黙々と、ちいかわのフィギュアを積み重ねる人。
ただ黙って座っている人。
わけもわからず迷い込んだ団体客。
オタ芸を打つ人。
MVを見ながら踊る人。
たこ焼きや餃子を買いに行く人。
壁際でチェキを撮っている人。
ベランダでタバコを吸う人。
……カオス。
思い返せば、自由すぎる店でした。

それに対してB店は、
お客さんは席から動かず、
目の前のキャストさんとお話しをする感じ。
……これだ。

おそらく、A店の面白さの要因として、
お客さんの自由度が高かったことが大きいと思います。

実は、メイド喫茶に通じるものがあった?

無法地帯だったA店。
そんなA店も今思い返せば、
メイド喫茶、メイドカフェに通じるものがありました。

私が今までに居心地がいいなと感じたメイド喫茶、メイドカフェ。
それらはもちろん、
秩序があり、清潔で、
お店としてちゃんとしておりました。
A店の環境とは真逆です。

しかし、例えば、
先ほども書いたように、
どのお店も割とお客さんが「自由」でした。
立ち歩ける店、歩き回ってはいけない店、
色々ありましたが、
お客さんが必ずこのように過ごさなければいけないという縛りはありませんでした。

対して、ガールズバー風のコンカフェ。
こちらはキャストさんとお話をするのがメインになります。
別に、
必ず話さなければいけないという訳ではないのですが、
どちらかというとキャストさんと一対一の世界。
それはそれで私は好きですが、
あまり自由ではないでしょう。

お客さんが「自由」であるということは、
上手くいけばお客さん同士の「交流」が生まれる訳です。
私はA店でたくさんの友人ができました。
もちろん、その日いるお客さんにもよりますが、
メイド喫茶、メイドカフェはメイドさんを通して、
お客さん同士が繋がる力が働いている気がします。

そして、
私がA店を面白いと感じた重要な要素。
それが「出会い」です

私はキャストさん、お客さんを通じて、
未知の領域をたくさん知ることができました。
V系の世界に引き摺り込まれました。
コスプレ撮影会もしました。
超サブカルな漫画を教えてもらいました。
ヒーローショーをやっている人がいたり、
作曲をやっている人がいたり。
どこのラーメンが美味いとか、
どこのカフェが可愛いとか、
そんな小さな発見の連続でした。
これが楽しかった。
おそらく、
未知の人物、未知の趣味、未知の体験との出会い。
この「出会い」が面白さの正体だったように思います。

居心地の良い「たまり場」の法則

①人が集まる場所
②夢が見られる場所
③良いものがある場所
④安心で快適な場所
⑤自分のためになる場所
⑥自分を認めてくれる場所

に人は集まる。

A店は上記の①、⑤、⑥がある場所でした。
正直、ちゃんと掃除してメニューさえ整えれば、
もっとやれたと思います。

私は、あのたまり場感があるA店が好きだった。

A店から
「自由」、「交流」、「出会い」
のエッセンスを抽出したい。
そして、ちゃんとした綺麗な店内で、
たまり場を作りたいのです。

メイドカフェ・メイド喫茶の立ち位置

これは私が作ったグラフです。
女性向け、男性向け。
推し活、自由。
で区切ってみました。
こんな雑な区切り方ありかよ!
って感じですが……。
もちろん、
メイド喫茶、メイドカフェにも推し活要素はあるので、
必ずしもクッキリと区分できるものではありません。

仙台のコンカフェは体感8割で、
右上の赤い部分。
ガールズバー風のコンカフェになっていると思います。

左上の青い部分は、
女性のお客様メインの推し活。

私が目指すのは下の緑の部分。
自由
これが他店との最大の差別化ポイントです。
女性が来ても、男性が来ても面白い。
自由に過ごせる店。

お恥ずかしながら、私は
A店では毎回、無料の水を飲んで過ごしていました。
ね?自由でしょ?(笑)
おそらく、メニューが水だけでも通いました。
それは、あの空間に対して価値を感じていたから。
メニューは最悪の場合、水の飲み放題だけでもいい!
あの、たまり場で座っていたいのです!

推し活は、キャストをメインの商品としていますが、
自由な空間は、その空間自体を商品としています。

「自由」「交流」「出会い」
この3つが、面白い空間作りのキーワードではないでしょうか。

でも実はこれって、
普通のカフェ・喫茶店なんですよねー。
オタク特化型喫茶店……。
まさかの、最初期のコンカフェに先祖返り⁉︎

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