チーフス2022シーズンの感想と感謝
1ヶ月以上遅れの記事です…
祝!スーパーボウル制覇!
2022シーズン、Kansas City Chiefsがスーパーボウルチャンピオンとなりました!Mahomesは2度目のスーパーボウルMVPとなり、自身2回目のシーズンMVPと合わせて伝説的なシーズンとなりました。キャリア6年目にしてHoF確定といった勢いです。
大きな挑戦:方針の転換
シーズン前、大きな話題になっていたのがTyreek Hillの移籍でした。言わずもがな、Hillはここ数年チーフスのエースとしてオフェンスを牽引しており、事実、2016年に入団してから毎年プロボウル選出、3回のオールプロ選出となっています。彼が抜けることによってチーフスオフェンスは弱体化する、同地区の大補強も相まってプレーオフすら逃すんじゃないかと言われていました。
Hillという大スターが抜け、今シーズンのチーフスオフェンスは以下のような方針転換を行いました。
大前提として、チーフスはざっくり言うと「30点獲るオフェンスと25点に抑えるディフェンス」のチームです。少なくともMahomesがスターターになってからはそのようなチーム作りを行っています。肝となるのは「30点獲るオフェンス」のユニット作りであり、それゆえにユニットの核であったHillの離脱は一大事なのです。
方針転換を行った背景としては、①昨シーズンでHill&Kelce対策が進み思うように攻撃が機能しなくなったこと、②Mahomesのルーキー契約が終わりキャップスペースに余裕がなくなったこと、③ドラフトでOLの強化に成功したこと、④Mahomesという存在、が挙げられます。
①Hillのディープアタック対策として多くのチームが2highのパスカバーをとるようになりました。加えてCINやBUFなどのチームは特に顕著で、ブリッツをせずパスカバーに人数を割くことによってチーフスオフェンスをテンポダウンさせていました。2021シーズンは実際にHillのADOT(Average Depth of Target、パスターゲットにされた時点での平均ヤード)は10.4ヤードとキャリア最低を記録しました。そしてそのパフォーマンス・起用法に関してもHillは不満を抱くようになっていました。
②Mahomesの契約(=10年$450M)自体はそれほど問題ではないです(個人的にはこれでも安いぐらいだと思ってる)。問題なのはHillが$30M級の契約を求めており、結構前から契約交渉が難航してました。彼にはそれくらいの能力があるし、実際MIAとその額で合意し移籍することになりましたが、MahomesとHillで$75Mほど(=キャップスペースのおよそ1/3)を占めてしまうと持続可能なチーム作りができないでしょう。
③2021ドラフトでCreed HumphreyとTrey Smithという大当たりを引けたことも大きいです。これで一気にOLが強固になりました。
④個に依存しない、といっても誰が出場しても同じという訳ではありません。言うまでもなくMahomesという存在は特別なものであり、彼がプレーすることを前提にしています。そのため他チームでも同じように適用可能な体制とは言えません。そういう意味で、正確には「個に依存しない」というよりは「依存する個を減らす」の言った方がいいかもしれません。
以上の背景からチーフスはHill&Kelce体制から新体制に移行することとなりました。とはいえこの体制でもAFCCには毎年行けている訳で普通に考えれば現状維持で良いと考えられます。そこを変えるとなるとそりゃ弱体化すると言われて当然でしょう。
新体制は「強固なOLを基盤とした個に依存しない攻撃」です。誰かが厳しくマークされても他の誰かが必ず空いている、という状況であれば強固なOLに守られたMahomesであれば容易にオフェンスを進めることができるだろう、という算段です。
躍進の要因:新加入選手の活躍
個に依存しないとは言え、ある程度の能力を持った選手は必要です。プロボブラーじゃないけど対策するのは骨が折れるよね、みたいな選手をFA・ドラフトで獲得し、彼らがちゃんと活躍できたことがシーズン成功の最大要因です。
まず、FAでMVS(Marquez Valdes-Scantling)とJuJu Smith-Shusterを獲得しました。MVSはディープが得意な選手でHillに代わって奥を担当します、実際ADOT 13.9ydsとしっかり求められていた役割を果たしてくれました。一方のJuJuはショート〜ミドルに強く、933ydsと惜しくも1000ydsに届きませんでしたが十分な活躍をしてくれました。
加えてシーズン途中に加入したKadarius Toneyはアジリティに優れたプレイヤーです。フロリダ大学時代はボールを持っただけでどこまでゲインするかわからない選手でした。怪我の影響でNYGでは今ひとつでしたが、チーフスに来てその本来の能力を発揮し、特にスーパーボウルで(!)大活躍してくれました。
一方ドラフトでは、7巡で指名したIsiah PachecoがエースRBにまで成長。これまでチームに足りていなかったExplosiveなランをもたらしました。7巡でこれは本当にGMすごすぎ。
新加入の彼らに加え、説明不要のTravis Kelce、スピードに優れたMecole Hardman、レシーブに優れたJerick McKinnonといったスキル陣が上記の体制変更を可能にしました。2021シーズンとWR陣比較すると、
となり、Hillという大エースはいなくなったものの、デプスが厚くなり「誰かしらが必ずオープンになっている」という状況を作りやすくなりました。もっとも、シーズン序盤はMahomesとの連携がまだ取れておらずパスが通らない状況も多かったですが、シーズン中にその点も改善されていきました。
ディフェンスも新加入選手が活躍してくれました。特に顕著なのがルーキーたちですね。1巡で指名したTrent McDuffie、George Karlaftisは1巡指名に足る活躍でしたし、3巡のLeo Chanelもスーパーボウルで活躍、7巡のJaylen Watsonに至っては彼のおかげでWeek2勝てました。彼らをちゃんと起用・育成したチームは素晴らしい!
来シーズンに向けて
今シーズンはスーパーボウル制覇という最高の結果に終わりました。ただMahomesの言う通り「We ain't done yet」です。もちろん来シーズンもスーパーボウル制覇を狙います。
そのために欲しい人材としては、オフェンスなら両先発OTとエースWR、ディフェンスならTier2以上のエッジラッシャー、ターンオーバーを起こせるDB、ってとこでしょうか。
Flank Clarkがリリースされ、OCのEric Bienemyもコマンダースに行くなど、早速動きを見せています。去る人もいれば加入する人もいます。昨年と同じメンツで連覇できるほどNFLは甘くないです。幸い今年もたくさんのドラフト指名権とそれなりのキャップスペースがあります。今年も首脳陣の手腕に期待したいですね。
とにかくチーフスの選手には感謝しか無いですね。そしてチーフスファンの皆さんもお疲れ様でした。来年もスーパボウル優勝!Go Chiefs!
おまけ:個人賞の発表
今年印象的だった選手に勝手に賞を送りたいと思います。MVPはMahomes, Best Offense PlayerがKelce、Best Defense PlayerがChris Jonesっていうのは自明(?)なので他の選手たちを紹介。
Most Improved Player of the Year:Noah Gray, TE, #84
Blake Bellの不在でTE2を務め、レシーブ・ブロック共に大きく成長。特にレシーブは36yds→299ydsと大きく成長。ハイライトになるようなプレーも数多く見せた。個人的にはものすごい評価高いです。
Most Surprised Player of the Year ①:Jerick McKinnon, #1, RB
昨年のプレーオフから活躍していたが、今年は予想以上の活躍。ランこそいまいちだが、レシーブ・ブロックの上手さが尋常ではない。レシーブで512yds, 9TDは一流。スーパボウルで膝つきは泣きました。
Most Surprised Player of the Year ②:Justin Watson, #84, WR
McKinnonと絞りきれなかったのでこちらも選出。TBからの移籍で、昨年までほとんど出場の無かった選手(特にここ2年は7rec 92yds 0TD)。プレシーズンがかなり良くあれ?と思ったらその勢いのままシーズンでも活躍。ディープスレッドとしてチームに貢献した(ADOTはなんと18.7yds!)。印象的なのはWeek2 LAC戦でのロングパスTD。まさかJC Jacksonを倒すとは。Most Surprised Performance。
Best Rookie:Isiah Pacheco, #10, RB
今年のルーキーたちは総じて良かったのですが、ベストはやはりパチェコでしょうか。タックルを恐れず突っ込み、笛が鳴るまで足を止めないのは基本だがちゃんとできてて素晴らしい。ランで2nd&5にしてくれるのでオフェンスは非常にやりやすかったと思います。改善するとすればレシーブとブロック。思えば今年はMcKinnonが足りない部分を補完してくれた。キックリターナーとしても悪くなかったです。