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令和5年7月31日規制改革推進会議意見書法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しについて

令和5年7月31日規制改革推進会議

 

規制改革推進会議 書面議決令和5年7月31日(月)決定(書面議決)

https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/committee/230731/agenda.html

 

 ( 議事 )
法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び定款認証の改善による起業家の負担軽減について

 

意見書
法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応及び起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しについて
令和5年7月31日
規制改革推進会議
 
1 法人の実質的支配者情報に関するFATF勧告への対応について
経済・金融サービスのグローバル化、暗号資産の普及といった技術革新により、資金の流れが多様化し、国境を越える取引が容易になっている中で、犯罪によって得た収益の出所などを分からなくするマネー・ローンダリング(以下「マネロン」という。)等の手口が複雑化・高度化しており、その対策の重要性はこれまで以上に高まっている。
その中で、国際的にマネロン等対策の中心的な役割を担っているFATF(Financial Action Task Forceの略称。以下「FATF」という。)の勧告24は、法人の実質的支配者情報の取得・把握の実効性を確保する措置を講ずるよう求めているが、令和3年8月に公表された第4次対日相互審査報告書において、我が国の評価は「一部適合」(Partially Compliant:4段階中下から2番目の評価、不合格水準)に留まっており、勧告に適合するために更なる措置が必要である。

 

令和3年8月30日令和5年1月4日更新

金融庁   FATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書の公表について

https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20210830/20210830.html

 

 さらに、勧告24は、法人の悪用を防止する観点から、令和4年3月に改訂され、捜査当局によって、法人の実質的支配者をタイムリーに特定するメカニズムとして、
1)法人に対して実質的支配者情報の取得・保持の義務化(カンパニーアプローチ)、
2)公的組織(税当局、金融情報機関、登録機関等)による実質的支配者情報の保持(レジストリアプローチ)又はその代替的メカニズムの義務化
 
などが求められることとなり、勧告事項が厳格化された。次の第5次対日相互審査では、改訂勧告に基づいて審査が行われるため、対応が必要である。
これまで、我が国では、公証人による定款認証時における法人の実質的支配者の把握、商業登記所における株式会社の実質的支配者リストの保管等が行われているが、公証人には会社設立後の実質的支配者の把握に関与する仕組みがなく、実質的支配者リストも任意の仕組みであり、現時点では、我が国の国内法制度では、カンパニーアプローチ及びレジストリアプローチ又はその代替的メカニズムを満たすものは存在しておらず、法人の実質的支配者情報の一元的かつ継続的・正確な把握を可能とする枠組みに関する制度整備が必要である。
 
海外の取組として、英国では、法人自身に対して実質的支配者名簿の作成と当該実質的支配者の政府の登録機関への登録を会社法で義務付けている。ドイツでは、法人自身に対して実質的支配者情報を取得等すること及び登録機関へ通知することを資金洗浄法(Geldwäschegesetz)で義務付けている。

Register an overseas entity and its beneficial owners

https://www.gov.uk/guidance/register-an-overseas-entity

 

 

   米国では、Corporate Transparency Actにおいて、法人に対して、自分の実質的支配者を政府の登録機関に報告することを義務付けている。カナダでは、会社法を改正し、法人に対する実質的支配者名簿の作成・保持を義務付けた上で、会社法において、法人に対し、当該実質的支配者の名簿の内容をカナダ企業庁に報告する義務を課す仕組みとしている。
  法務省からは、直接的な目的が公法上である場合は純粋な私法である会社法にはなじみにくいこと、実質的支配者情報については、会社法における解散命令のような抽象的なものではなく、極めて細かいルールになっているため、会社法制に組み込んでいくことは難しい面があること、例えば、市場規制に関する部分は金融商品取引法などに規定があるように、必ずしも会社に関する規定を会社法において一元的に規定されているわけではないこと、商業登記所が実質的支配者情報を登録する受け皿となることは考えられることなどの見解が示された。
 
一方で、規制改革推進会議委員からは、FATFは国際的な枠組みであり、会社法は私法だからといっても国際的な理解は得られないこと、会社法には公益に反する場合の解散命令など公益目的の規定も存在し、実質的支配者情報の取得及び保持を全ての会社に義務化することがFATFより求められていることへの対応としては、本来、会社法の規定で行うべきと考えられること、会社という組織形態によって経済活動を行う場合に、適切な形で利用されていくことを確保することは会社法の目的又は目的の大前提に含まれていると考えられること、会社に対する一般的な信頼性を確保するために、実質的支配者の情報を収集することが会社法の目的に反するものとは考えられないことなどの意見が示された。
規制改革推進会議としては、法務省は、令和5年中に、会社法又は商業登記法を根拠とする実質的支配者情報の取得及び保持並びにその商業登記所への登録を行う制度整備を検討し、結論を得るとともに、当該法務省の検討と並行して、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策関係府省庁(法人の実質的支配者情報に関する府省庁に限る。以下、同じ。)は、令和5年中に、会社法等に代替する方策も検討するべきと考える。
 
その上で、警察庁、金融庁、法務省、財務省及び経済産業省(省庁の記載の順序は、建制順。以下、同じ。)は、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」(令和4年5月19日マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議決定)に基づき、令和5年度中に、法人の実質的支配者情報の一元的かつ継続的・正確な把握を可能とする枠組みに関する制度整備に向けた検討を進め、結論を得るべきである。
日本の日程は決まっていないものの、FATFの第5次審査が令和7年から順次開始される中で、日本の第5次審査に間に合うようにカンパニーアプローチ及びレジストリアプローチ又はその代替的メカニズムを確立するためには、スピード感を持った取組が必要であることから、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策関係府省庁における迅速かつ前向きな検討を期待している。
これらを踏まえて、下記の措置を講ずるべきである。この措置については、警察庁、金融庁、法務省、財務省及び経済産業省において結論を得る前に規制改革推進会議で議論等を行うことを予定している。


以上


    警察庁、金融庁、法務省、財務省及び経済産業省(※)は、「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の推進に関する基本方針」(令和4年5月19日マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策政策会議決定)に基づき、令和5年度中に、法人の実質的支配者情報の一元的かつ継続的・正確な把握を可能とする枠組みに関する制度整備に向けた検討を進め、結論を得る。
※省庁の記載の順序は建制順

 

 2 起業家の負担軽減に向けた定款認証の見直しについて
(1)政府における動き
「規制改革推進に関する答申~転換期におけるイノベーション・成長の起点~」(令和5年6月1日規制改革推進会議決定)において、我が国の経済の持続的成長にとって、スタートアップは、イノベーションの担い手として、新たな需要・消費の創出とともに、大きな雇用を生み出す原動力となるものであり、「新しい資本主義」の実現に欠くことのできない要素であり、スタートアップフレンドリーな環境整備に向けた総合的な規制改革を、スピード感を持って進めていく必要があると述べた。

 

「経済財政運営と改革の基本方針2023」(令和5年6月16日閣議決定)においても、GX・DXなど新たな産業構造への転換を進め、持続的な成長を確保していくため、新たな参入と再チャレンジの際の退出の障壁を低くし、スタートアップが成長できる環境の整備が不可欠であり、スタートアップ育成の観点から、規制改革の推進等に取り組むこととされるとともに、行政手続のデジタル完結を進めるとされ、マイナポータルの利便性向上に加えて、個人や法人の税務・社会保障を始めとする各種手続の負担軽減に向けた取組を進めるとされた。
 
さらに、令和5年6月21日の岸田内閣総理大臣の記者会見では、政権の優先課題として、デジタルの力をフルに活用した令和版デジタル行財政改革に挑戦していく、ユーザー視点に立って制度や組織を一体的に変える、こうした取組を進める上で大きな役割を担うのは、デジタル社会のパスポートであるマイナンバー、マイナンバーカードという旨の発言もあった。

 

(2)総論
経済界からは、以下の意見等が述べられた。
○ スタートアップ・エコシステムの形成は、各国で制度間競争になっており、日本が負けないように、世界最高水準のスタートアップフレンドリーな環境を構築することが喫緊の課題。
○ 定款認証の面前確認が、日本の法人設立手続の完全なワンストップ化、デジタル化の阻害要因。
→1のFATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書によれば、規制を強くする方向に働くので、有効ではないかと感じるのですが、国際き手にはそうではないのか。
 
○ スタートアップの起業時はやるべきことが山積している中で、起業家にとって時間と費用双方の負担となっていることは極めて遺憾。
○ スタートアップの定款認証については、モデル定款とマイナンバーカードによる本人確認を活用して、デジタル完結可能な、ファストトラックの選択肢が強く要望される。

→デジタル完結には賛成ですが、モデル定款を活用するいは、起業家が定款がどのようなものか一定の理解をする必要があり、大きくスピードに関わるかというと分かりませんでした。

 

○ 令和4年度に法務省が実施した定款認証に係る公証実務に関する実態を把握するための調査の結果を見ても、公証人による面談と定款認証が必須であることを端的に示す結果は確認できず、むしろ、公証人の指摘事項を見ると、モデル定款のブラッシュアップ等で対応できるのではないか。
○ 公証人による面談、定款認証がなくても差し支えないことを示す結果が多く、モデル定款を修正・改善し、今後のモデル定款の活用方策を検討していく方法が良い。
○ スタートアップ振興の観点から、デジタル原則に照らした改革を是非進めるべき。
○ 一定の定款については公証人による認証を必要とすること自体をゼロベースで見直し、不要とすることを早期に実現していただきたい。
○ 法務省の調査でも発起人及び代理人の面前確認の時間はとても短いことが分かったが、実体験としても、非常に短時間でそれほど会話もなく終わっている。
○ 短時間の面談での実効的な人物評価や不正防止は不可能。こうした不正防止は一律に行う事前チェックではなく、リスクの高さに応じた事後チェックで行うべき。
→リスクの高さに応じた事後チェック、というのは、設立登記で実質的支配者情報を提出義務化し、実質的支配者が海外国籍だったり、法人だったりする場合に、公証人か登記官が面談確認を行う、というような方法なのか、気になりました。
 
○ デジタル臨時行政調査会で行われたデジタル原則に基づくアナログ規制の
見直しを公証人による定款認証にも適用すべき。
○ 民間のデジタル技術を活用した判断の標準化・自動化・無人化によって、公証人の定款認証の撤廃・任意化を行えないか。
委員からは、以下の意見等が述べられた。
○ 定款認証の目的として、①定款の内容が矛盾していないか、②会社法その他関係法令に違反していないかを確認すること、③定款作成の意思の真正性を確認すること、④不正な起業や会社設立を抑止すること、⑤実質的支配者を把握することがあげられているが、公証人による面前確認という手段には非常に大きな社会コストがかかっているが、他の手段が生まれ始めてきており、ゼロベースでどういうやり方が望ましいのか、制度目的を実現するために、公証人による定款認証が最適な手法であるのか、一番望ましい取るべき方法は何かを検討するべき。

 

○ 法務省の説明からは、デジタル臨時行政調査会で議論しているデジタル完結や自動化原則といったデジタル原則に沿った検討がなされていないように思われる。会社設立は一定の数がある手続であり、新規事業創出という意味でも極めて重要なものであり、しっかりと見直しを進めるべき。
 
公証人には、公正証書遺言など社会的な要請がこれから高まってくるような分野もあり、スタートアップという非常に時間と資金の制約に追われている方たちに対することは根本から問い直す必要がある。

 

→資金面では見直しが出来るなら、低額が望ましいと思います。その場合は、解散・清算する場合の費用も同じ程度の金額に見直して欲しいと思います。

 

○ FATF勧告で求められている、法人に対する実質的支配者情報の取得・保持の義務化及び公的組織(税当局、金融情報機関、登録機関等)による実質的支配者情報の保持又はその代替的メカニズムの義務化という手段が出てきた場合には、公証人による定款認証の果たす役割はかなり減っていくはず。
 
(3)モデル定款について
モデル定款に関して、法務省から、以下の意見等が述べられた。
○ 切り分け方として、明確にモデル定款と分かる仕組みがどのような形で担保できるのか。
○ 法制度としてどのような形になるのかわからず、法制的に難しい。
○ 会社法は機関設計だけでも 30~40通りといった様々なものがあり得て、利用者の方がそれを自由に選ぶという立て付け。デフォルトのルールがない中で何をモデルにするのかということが難しい。
 
現在提供されているサービスでは、システム的なチェックでもまだはじかれていないものがあり、自動化が現時点ではできていない。

→現状システムでは、こんなはずじゃなかった、と後で変更登記、となると余計に時間・金銭費用がかかる。

 

 

委員等からは、以下の意見等が述べられた。
○ 民間調査によれば、現在提供されているモデル定款を工夫して独自の内容を追加する必要がないという回答が約7割。

→モデル定款、というのは法務省のサイトにある定款ではないみたい。あとで、こんなはずじゃなかった、がない定款のことを指しているのかなと想像します。そういう定款は、現在思い付く限りでは無いのではないかと思います。スタートアップ側から、法務省に対してモデル定款を提示し、設立時点では問題ないか、今後変更する場合は取締役会設置の場合、新株予約権付与の場合、などいくつかケースを示し、提案して、了承を得る形が自然ではないかと思います。スタートアップの事業の流れを知っているのは、スタートアップ企業の起業家など、関係者だからです。法務省から、会社法はパッチワーク型でいくつも種類を作ることができる、という説明がされるのは、そのような意味だと思います。

 

○ 大多数はシンプルな定款の構成。全ての会社形態をモデル定款でカバーする必要はなく、モデル定款の方と弁護士なども活用して独自の定款を作成する方とツートラックを設ければよい。
 
○ 定款自治の意義はやりたい人がいろいろと自由にできるということにあるのであってシンプルな定款で満足している者に複雑なアレンジをすることを積極的に推奨しなければならないわけではない。
 
○ 法務省の調査結果における公証人の指摘は、より良いモデル定款をつくったり、選択肢で記載する部分を増やしたりといった機械的なチェックをかけることで対応できそうなものが多い。例えば、違法性を示すようなキーワードをリストとして指定してしまえば、それをはじくこと自体は何ら難しくなく、最終的な人のチェックも、公証人ではなく、登記所で処理すればよい。
 
○ チェックすること自体を機械に任せた方が速いし、正確だということになっている中で、エラーがある言葉があればはじくという方がチェックのカバレッジ、正確性及び迅速性の観点で、より勝っている。
 
(4)公証人が面前確認を行っていない事例に関する報告
法務省及び民間の調査において、公証人が面前確認を行っていない事例が報告されたことに関して、法務省から、そのような実態があったかどうかを確認しているが、以下の点を踏まえて評価する必要があるという見解が述べられた。
○ 法務省調査ではそのような回答はごくわずかである。
○ ごく一部の役場を除いて全て面前確認を行っているという説明を受けており、その内容も不自然・不合理ではなく、回答の際に入力や操作ミスがあった可能性がある。
○ 必ずしも公証人が自ら公証人であることを明らかにせず事務的に手続を進め、応対した方が公証人であることを認識されなかったケースがあり、回答者の誤解に基づく回答がされた可能性がある。
これに対して、委員等からは、以下の意見等が述べられた。
○ 弁護士や司法書士などの専門家からの回答でも、公証人が面前確認していないという回答があり、それら全てが誤解といえるのかは疑問である。
○ 法務省の回答からは、公証人が面前確認しなかったという事実はあってはいけない、そういう回答があったのは、回答者の間違いだということにしようという意思が見られ、民間の調査結果を見れば、公証人が面前確認を行わなかったことが常態化していたのではないかと思われる。
○ バイアスをかけずに実態を正しく把握すべき。
○ 公証人が面前確認を行っていないことについて法務省が全体像をつかめないような状況になっており、ガバナンス不全となり、機能していない可能性がある。
○ 自ら規律を守れない公証人が一定数存在し、その改善策ができない中で公証人制度を続けていることができるのかについて疑問が大きい。
○ こうした点について、第三者委員会を設置するなどして、しっかりと調査をしていくことが重要である。
○ コンプライアンス・ガバナンスを欠くものだといわざるを得ず、公証人制度のみならず、我が国の司法や法務省の信用を失墜させる事態だと重く受け止めるべき。
 
(5)講ずるべき措置
これらを踏まえて、下記の措置を講ずるべきである。この措置については、必要に応じて、法務省において結論を得る前に規制改革推進会議等で議論等を行うことを予定している。

法務省は、公証実務に関する実態を把握するための調査の結果分析、定款認証が果たすべき機能・役割の評価及びその結果に基づく定款認証の改善に向けたデジタル完結・自動化原則などのデジタル原則を踏まえた上での面前での確認の在り方の見直しを含めた起業家の負担を軽減する方策の検討に当たっては、事実関係の確認において予断を排除すること、①内容の法令適合性等の確保、発起人の意思の真正等の確保、不正な起業抑止、実質的支配者の把握といった定款認証の機能に関し、それらの効果とリスクや負担・コストとの比較考慮を行い、その際には、デジタル技術の活用等を含め代替となり得る制度・手段についても検討すること。

 

→公証人による定款認証については、必要、不要、どちらでもなく決まったことに従います。起業に関しては、FATF勧告に従うことが第1なのか分かりませんでした。金銭的な費用を抑えるよりも、時間や手続の工数を少なくする方向で出来ないかな、と思います。

 

 

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