[3分物語]可愛いね。#400

「可愛い」初めて君を見たときに思った。
きっと一目惚れだろう。

 「好き」の2文字が言えなくて。
だからふざけてすらも、
君へ可愛いも言えなくて。

君の瞳に写るあいつは
意図も簡単に君へ可愛いが言える奴で。

そんなあいつが憎くて羨ましい。
 
卒業式の日、一段と可愛くした君は
あいつの第2ボタンを幸せそうに眺めていた。

俺の第2ボタンはまだ制服についたまま。

あの時の第2ボタンで
俺たちの今は変わっていたのだろうか。

俺には変える勇気がなかった。

同窓会で再会した君はあの時より大人びていて
それでも笑った顔は相変わらず可愛かった。

二次会でなんとか座れた君のとなり。

あぁ、座らなきゃ良かった。
座らなければ君の左手の薬指に
気付かず済んだのに。

「久しぶりだね。」
「そうだね。元気してた?」
「うん。私結婚したの。」
「お、おめでとう。」
「ありがとう。ねぇ、見て。」
「えっ?」
「子供、産まれたの。」

「お前似て笑った顔が可愛いね。」

あぁ、やっと言えた。


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