感覚
三つの窓に囲われた部屋の中に、僕はいた。
左の窓からは、風が吹きこんでいる。
優しく子供の頭を撫でるように部屋の中へ入ってきた風は、僕の体を包んでから、右の窓へと歩を進める。
「君はどこへいくの?」
つい、そう聞いてしまいたいくらい、優しい風だった。
暖かい目線を向けられたような気がした。
顔を上げると、正面の窓からは陽の光が溢れていた。
近くを走る道路からは、一定の間隔をあけて、車の行き交う音が聞こえる。
親子の笑い声も聞こえる。
僕の目の前にあるテレビでは、いま話題の歌手が歌っていた。
どこもかしこも、僕のそばでは音が聞こえている。
ふと、僕は心臓へと触れてみた。
どくん、どくん。
生を感じた。
果たしてこの心臓は、いつまで動いているのだろう。
果たして僕は、何のために生きているのだろう。
心臓はいまも、この瞬間も動いているはずなのに、外に比べて音が小さいように感じた。