糧
一粒の滴が私の目の前を落ちていく
幾筋の線が私の目の前を落ちていく
私の足元にある金色の筋はなに?
私が持っているものとは違うわ
私が持っていないものだわ
けどね、あなたに切り出せないの
それは私が弱いから
あなたと離れたら、私は私でいられなくなるような気がするの
あなたと離れたら、私は自分を見失ってしまうような気がするの
でもあなたに問いただしたい
「これはなに? 私だけじゃ満足できないの?」って
でもあなたに問いただしたい
「どこの女? 殺しに行ってもいい?」って
そんなこと言えるわけじゃないけれど、私の心はそんな悲鳴を上げてるのよ
あなたには聞こえないでしょうね
あなたは聞いていないでしょうね
一粒の滴が私の目の前を落ちていく
幾筋の線が私の目の前を落ちていく
街はネオンに彩られ、私の世界を色付ける
でもね、なにも見えないの
でもね、なにも感じないの
道を歩いている男は私を見るのに、なぜあなたは私を見てくれないの?
私はあなたに見てほしいのに
私はその中の一人に言ったわ
「別れるべき?黙って関係を続けるべき?」って
その男は私にこう言ったわ
「浮気をしよう。罪悪感を覚えたら続けなよ」って
たしかにそうね、と思ったの
そして私は、その男と唇を重ねたの
キスのあとにその男は笑っていたの
キスのあとに私も笑っていたの
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