パズル&プラトンズ

　みんなは、ジャルジャルを知っているか。
　主にコントをする、お笑いコンビだ。

　あの、はい、僕は彼らのファンです。
　今回は、彼らのネタのひとつ、「関東出身のツッコミ下手な奴」の話をしたい。ジャルジャルファンによる、ジャルジャルネタサロンである。

　コントの概要を説明するのは無粋だが、そうしなければ話が進まない。できればYouTubeで視聴後、読んでほしいが、まあ好きにしてくれ。
　それからこれから披露する、お笑いを素直に笑って受け止めない姿も、お笑いファンとしてどうなんだ、とも思うが、許したり許さなかったりしてくれ。うん、とにかく好きにしてくれ。

　あら親切。
　概要は以下の通りだ。

　ボケ担当の関西人(後藤)とツッコミ担当の関東人(福徳)の漫才コンビ「パワージャングル」は、コンビを組みたて。ホヤホヤ。
　関西人が考えてきた、ツッコミのセリフだけ空欄のネタに、関東人が思うままにツッコんでみることに。
　関東人は、ツッコミが下手、というより、一般常識から考えるとおかしいことを言う。一言二言多かったり、ツッコミのフレーズがボケと合っていなかったりする。コンビのことを「国家」と称したり、「ネタを書いているからって自分のことを国王だと思わないでくれよ」と関西人に釘を刺したりする。へんてこな釘だ。
　関東人の得意フレーズは「いや軽いよ！」「重いよ！」彼はすぐ質量の話をする。質量のボケなんか全くしていないのに、だ。
　それが気に食わない関西人と、自分なりの考えがある関東人。正面からぶつかり、ああ。口論に...。

　とまあこんな感じだ。私自身関西人と関東人がごっちゃになってきているし、とてもじゃないけれど、うまく説明できていると思えないから、絶対見てくれよな！！

　たぶんチャンスは2回ぐらいあげるべき。よろしくね。

　僕はこのネタを見るたびに切なくなる。胸がギューってなる。笑うんだけどね。
　関東人のおかしなツッコミにも、彼なりの道理はある。でもその道理ではお笑いにたぶん向いていない。
　彼のツッコミは、彼なりの道理で行われる「指摘」だ。
　「ツッコミ」と「指摘」は似ているようで全然違う、と僕は思う。
　でも、だからって彼を否定はできない。僕は自分の適当なボケに「指摘」してくれる人を愛している。反応があることは喜びだ。ただお笑い芸人としてはどうなのよ、それだけ。

　彼は少し思い込みが激しい。少し？
　関西人に対して、しきりに「どうして自分が正しいと思っちゃうんだよ」と自分の正しさを主張する。
　彼は、間違っていない。彼の道理はたぶん正しい。ツッコミどころや言葉のチョイスが変わっているだけだ。
　ツッコミとは、ボケの明らかにおかしい点に言及し、周りにわかるように、笑いに昇華する行為だ。たぶん。
　だから、さらに説明が必要な彼のツッコミは間違っていて、「指摘」の域を出ていない。
　そう考えているうちに、徐々に「ツッコミ」と「ボケ」が入れ替わっていくネタの巧みな構成に気付かされる。

　ああ、彼は「ボケ」なんだ。

　彼のツッコミにはさらなるツッコミが必要だからだ。
　ボケとは、おかしな道理で行われる言動だからだ。
　どうして彼がお笑い芸人に、ツッコミになろうと思ったのかが気になって気になって気になって仕方がない。調べて調べて調べてやろうかと思ったけど、彼は実在しない。でも彼がツッコミになりたがったこともたぶん理解はできている。たぶんたぶん。プライドが高く、他人を見下ろしたがる彼は、ツッコミに活路を見出した。僕と同じタイプだ。
　ああ、でもツッコミじゃないんだよなあ。
　こういう人間は、ボケに向いていると思う。僕もそう自認している。

　人生には、表面的には自分に相応しくて、でもその本質や根本はまるで自分に相応しくないものがたくさん転がっている。
　彼にとってのそれはツッコミで、僕にとってのそれは、なんだろうな。

　もちろんこれは僕の価値観に過ぎなくて、関西人からすればそうではないから、お笑い芸人に、ツッコミになったんだろう。
　ただ価値観が合わないだけで関東人と関西人はうまくいかなくて、でもそれぞれが大きく間違っているとも思えない。
　コミュニケーションとはパズルのようなもので、自分の持つ価値観とかいうピースが、相手のものと合うかどうか試すのを繰り返すに過ぎないのではないか？「過ぎない」か？
　誰も、何も、間違っていないのではないか？

　しかも難解とされる真っ白なパズルよりもずっとタチが悪くて、完成形はわからない。合うピースのみで構成されているパズル改め長方形さんとは違って、当然合わないピースもあり、合うものを合わせていったところで、どんな形に収まるのかは、いつまでもわからない。
　人と人との関係性の曖昧さや、付随して覚える不安感は、そんなところから生まれているんだろう。
　どれだけたくさんのピースが合っても、四方八方に伸びて、できるのはたぶんアメーバみたいな形だ。形といってもアメーバは定型を持たず、ぐにょぐにょ動いている。

　曖昧なものは、わからないものは、こわい。
　枠さえあれば、枠さえあればそれらしく見えるのに、と、安心したくて、僕らは付き合ったり結婚したりするのかな。もちろん感情は、恋情はそうは言わないけど、仕組みはそうなのかな。
　仕組みばかり見て相手のピースを見ないでいると、自分と相手が合うかどうかもわからないぞ！
　とにかく、そうやって、複数人の間でできあがったアメーバを、僕らは何らかの枠で額装する。見た目にはちょっと立派だけど、本質的にはわかり合えていなくて、枠がガタガタ音を立てる。
　それをはじまりのときのように保つには、枠を改良し続けなければいけなくて、僕らは、僕は、それをよく怠ってしまう。
　おい江沼郁弥、あんたはこのことを言ってたのか？
　頭だけじゃなくいろいろ使うぞ！それを頭というぞ！

　はあ...。これがアメーバピグかあ...。

　ちちちちち、ちがーーーーう！！！！

　ほら、ツッコミ下手じゃん。

　ハッハッハ。適当に終わらせますよー！