『釣り堀』
暇を持て余して書いたものです
登場人物
・田中(女)…普通の女子。学生時代にバトルロイヤルを生き残り、ギャンブルで2億を勝ち取り、地下労働施設から指をかけたギャンブルで勝利し脱出した過去を持つ
・白銀の薔薇(女)…日本で秘密裏に暗躍する組織の人間。釣り堀で殺し屋に指令を伝える役職についている。実際に人を殺めたことはない
・釣り堀屋の店主(男)…白銀の薔薇が殺し屋と落ち合う場所に指定している釣り堀の店主。実は組織の人間であり白銀の薔薇にも秘密で彼女を監視する役職についている
釣り堀で白銀の薔薇が座って釣りをして落ち合う予定の殺し屋を待っている。
しばらくして田中がやってきて白銀の薔薇の隣に座って釣りを始める。
その後、白銀の薔薇が話始める
白「…ここの魚たちは全て養殖魚だ。稚魚の時から、大自然に比べたら狭すぎる水槽の中で育てられ、成長したら人間に殺されるためにここに放たれる」
田中、戸惑った様子で白銀の薔薇を見るが釣りを続ける。
白銀の薔薇、それに構わず話し続ける
白「こいつらは何も罪を犯していない。だが、生まれた時から逃れられない運命に囚われている。可哀想だとは…わざわざ思わないよな」
田中、黙って釣りを続けている
白「世の中には何度死刑を言い渡されても精算し切れないほどの罪を犯しながらものうのうと生き長らえている悪党がのさばっている。そいつらを消すのがお前の仕事だ。まぁ、今更私がいうことでもないだろうがな」
田中、黙って釣りを続けている
白「そういうクズどもがお前らに始末された後にたどり着くのがこいつらなのかもな」
白銀の薔薇、写真を取り出し田中に差し出す
白「今回のターゲットだ」
田中、戸惑う様子を見せる
田「…私に言ってます?」
白「フッ。何人もプロの連中を見てきたが、あんたが一番腕ききかもな。オーラを消すのが上手い。一般人と変わらないよ。この業界、存在感のある奴らから消えていく」
田「あのー」
白「あんたの腕はわかった。大丈夫だ、この会話は録音も監視もされていない。私とあんたはここにいないし、あったという事実もない。上がそうしてくれる」
田「はい?」
白「さぁ、無駄話はこれくらいでいいだろう。さっさと仕事を済ませろ」
田「(差し出された写真を見て)この人誰ですか?」
白「だから、もう一般人のフリはしなくていい。実力は分かったから」
田「いやぁ、フリも何も一般人ですよ」
白「え?」
田「一般人。パンピー」
白「…コードネームは?」
田「なんですかそれ?」
白「いや、ほらその、ニックネームみたいなやつだよ。組織の人はみんなあるじゃん」
田「そういうのないですね。私ゲームとかも本名でやる派なんで」
白「…ヤマアラシ」
田「え?」
白「ヤマアラシじゃないの?」
田「ヤマアラシって、あのでっかいハリネズミみたいなやつですか?」
白「いや、そういう名前のやつが来るって聞いてたんだけど」
田「ヤマアラシじゃないですよ。田中です」
白「…マジ?」
田「はい」
白「田中のふりとかじゃなくて?」
田「正真正銘の田中です。これ免許証です」
田中、白銀の薔薇に免許証を見せる
白「あ、ホントだ」
白銀の薔薇に電話がかかってくる
白「もしもし。あ、はい。白銀の薔薇です。はい。あ、『明朝の星は朽ちている』です。はい、どうも。お疲れ様です。え?はい、今例の場所にいるんですけど。え?来ない?あー、前の仕事で、なるほど。はい、わっかりましたー。失礼しまーす」
田「…大丈夫ですか?」
白「…ごめんね」
田「え?」
白銀の薔薇、銃を取りだし田中に向ける
田「えぇー‼︎」
白「いや、ほんとごめん、ごめん。気持ちはわかる、気持ちはわかる。でもごめん」
田「なんなんですか⁉︎」
白「これは完全に私のミス。あなた何にも悪くない。全部私のせい。でもごめん。ちょっと撃たなきゃいけないわ」
田「ちょっ、え、えぇ!」
白「わかった。説明する。一回説明するからちょっと落ち着こうか」
白銀の薔薇、銃をしまう
白「ほら、今は撃たない。今は撃たないから」
田「え?ほんとに?」
白「ほんとほんと。撃たないから。一回座ろ、そこに、ね。ほら、銃しまってあるからもう撃たない。でも急に逃げたり騒いだりすると撃っちゃうかもしれない」
田「ほんとに撃たないんですね」
白「うん、撃たない。ほんとに。一回説明させて、ね?」
田「…わかりましたよ」
田中、座る
白「うん、ありがと。じゃあ、えーとねー。単刀直入に言います。私の人違いであなたに情報を漏らしてしまったのであなたを始末しなければならなくなりました」
田「ぜんぜん全容が掴めないんですけど」
白「うん、そうだよね。ごめん、ちょっと端折りすぎたね。じゃあ一から説明するね。今日、ほんとはヤマアラシって人がここにくるはずで、私はその人に仕事の内容を伝えるために待ってたの。でも、そこにあなたがきちゃって、私はあなたをヤマアラシと勘違いしちゃって仕事の内容を言っちゃったのね」
田「はい」
白「だからあなたを殺さなきゃいけなくなった」
田「なんでそこに飛ぶんですか!」
白「やっぱ納得できない?」
田「できないし意味がわかりませんよ」
白「うーん。これ行っちゃうかー、でもなー。…まぁいいか、どうせ殺すんだし」
田「今すごく物騒な考え方してません?」
白「わかりました。正直に言います。私殺し屋なの」
田「はい?」
白「正確にはそういう組織に属してるエージェントの一人なんだけど、だからこういう存在が表沙汰になるのは非常に困るわけなのよ。だから目撃者は消さなきゃならないの」
田「ほんとですか?」
白「うん、ホント。そして今あなたは私が殺し屋って知ったから死ぬ理由が一つ増えました」
田「えぇ!理不尽じゃないですか」
白「だからほんとごめんって言ってるじゃん」
田「なんであなたがめんどくさくなってるんですか」
白「そもそもねぇ、あんたにだって問題があると思うよ」
田「なんでですか」
白「こんな誰もいなような釣り堀に何女一人で来てんの?しかも他に場所はいくらでも空いてんのによりによって私の隣に座る?頭おかしいんじゃないの。そもそも女がプライベートで釣りなんてしてんじゃないよ!」
田「それは別にいいでしょ。私も今日が初めてだったんですよ、釣りにくるの。だから店主の方に聞いたらあなたに聞くのがいいって言われたんで隣にきたんですよ」
白「はぁ?なんで私が」
田「結構な頻度で来てるし、新しいお客さんがいつもあなたと話してるからその界隈では有名な人なんじゃないかって言ってました」
白「あのジジィ。こっちだって毎回好きで来てるわけじゃないんだよ。誰もいないから仕事の話がしやすいってだけで、新しく来るのは釣りの客じゃなくて依頼を受けに来た殺し屋だよ。そもそも私ここに来てから一匹も釣ったことないでしょうが」
田「え、釣ったことないんですか?お金がもったいない」
白「仕事で稼げる金額に比べたらこんなの屁でもないわ」
田「あのー、やっぱり逃してもらえないですかね。このこと誰にも言わないんで。私口は硬い方ですよ」
白「いやぁ、うちも文字通り命が懸かってる仕事だからねー。そういう口約束は基本信じちゃいけないことになってるんだよ」
田「そっかー。じゃあ仕方ないのかなぁ」
白「ほんとごめんね。遺族の方にはちゃんとお金入れとくからさ」
田「あ、でもどうせ死んじゃうんだったらもっとそっちの業界について聞いておきたいかもです」
白「ああ、いいよ。どうせなら悔いなく死にたいもんね。なんでも聞いてよ。なんでも教えるから」
田「そういうのって言っちゃっていんですか?」
白「ああ、いいのいいの。言ったところでどうせ殺すし」
田「そうですか。あのー、なんてお呼びすれば」
白「あー、呼び方ね。…えーと、(小声)白銀の薔薇…」
田「え?」
白「白銀の薔薇!私のコードネーム」
田「へぇ、白銀の…」
白「何バカにしてんの」
田「別にそんなつもりじゃ」
白「だから言うの嫌だったんだよ」
田「だからさっき電話で白銀の薔薇って言ってたんですねー。じゃあその後に言ってた『明朝のなんちゃら』ってやつはなんですか?」
白「あれは…暗号みたいなもんで、いちいちそれを言わなきゃ組織の人間とは話せないの」
田「へー。暗号ってもっと厳かなものかと思ってましたけど、結構適当に言ってませんでした?」
白「あんなの毎回言わされてたら億劫にもなるよ。テンション上がるのは最初だけ」
田「そういうもんなんですねー。あ、じゃあなんで今日ヤマアラシさん来ないんですか?その人がちゃんと来てれば私死なずに済んだんですよね」
白「そいつは前に仕事でしくじって捕まったらしい。今頃はもう薬飲んで死んでるでしょうね」
田「薬って?」
白「捕まったら拷問される前に支給された薬で自害するの。苦しまずに死ねるやつで」
田「へー。やっぱ拷問前に自害するんですね。映画とおんなじなんだ。私だったら全部ゲロっちゃうだろうな」
白「さっき口は硬いって言ってなかった?今の発言でより殺さなければならなくなったけど」
田「別にいいでしょ。どうせ殺されるんだから」
白「急に吹っ切れたな」
田「白銀の薔薇さん。いや、ちょっと長いんで白銀さん、でいいですか?」
白「なんでもいいよ」
田「その、白銀さんが所属してる組織?ってやつですか。それってどのくらいの規模のものなんですか?」
白「私も下っ端だから詳しいことは教えられてないけど」
田「下っ端なのに白銀の薔薇…」
白「何バカにしてんの」
田「で、どれくらいなんですか」
白「一応日本全土を監視下に置いてるくらいにはでかいらしい」
田「すごいですね」
白「だから日本で起きた重要人物の不審死は我が組織が関わっているとかいないとか…」
田「曖昧ですね」
白「下っ端だから細かいことはよくわかんない」
田「なーんだ。じゃあもういいです」
白「え、もういいの?」
田「別に殺し屋業界に特別興味があるってわけでもないって気づいたんで」
白「世間でまことしやかに囁かれてる陰謀論の真偽とか教えられるのもあるけど」
田「私そういうのに詳しくないからなー。あ、最後に一つだけ」
白「何?」
田「私が座った時に言ってた魚についてのポエムみたいなやつってみんなに言ってるんですか?」
白「やめてよ。改めて言われるとすっごい恥ずかしいんだけど」
田「あんまり上手いこと言えてないんでやめた方がいいと思いますよ」
白「ほっとけ」
田「じゃあ、もう悔いはないです。ひと思いにやっちゃってください」
白「分かったよ」
白銀の薔薇、田中に銃を向ける
白「じゃあ、いくよ」
田「はい」
こう着状態が続く
白「…え、ほんとにいいの?」
田「なんですか。覚悟決めたんだから早くやってくださいよ」
白「ほんとに悔いとかないの?一般人にしては冷静すぎないアンタ」
田「うーん、心残りかぁ。美香ちゃんに助けてもらった命なのにここで無駄にしちゃうのはちょっと残念かもなぁ」
白「ん?みかちゃん?」
田「はい。私の同級生で親友だった子です。私を庇って死んじゃったんですけど」
白「え、何その話」
田「私、学生の頃にデスゲーム?っていうんですか。バトルロイヤルみたいな。そういう殺し合いゲームに参加させられてことがあって」
白「は?」
田「中学生の時に急に私のクラスの人たちが無人島に連れて行かれて、そこで最後に一人になるまで殺し合うことになっちゃって」
白「えぇ!マジで⁉︎」
田「でまぁ、運良く生き残れて。あ、私一人も殺してないですよ。みんなが殺し合う中でなんもしなくて。さっきも言った通り、美香ちゃんのおかげなんですけど、生きて帰れたってわけです」
白「何その面白そうな話。先生はビートたけしに似てた?」
田「いえ、どちらかというとマンボウやしろに似てました」
白「そうなんだ」
田「私も詳しいことは知らされなかったんですけど、なんか人類の選定とかのためにそういうイベントを定期的にやってる団体があるらしいんですよね。それが秘密裏に暗躍してて、日本政府もそれを隠蔽してるみたいで。あ、もしかしてその団体と白銀さんの組織ってなんか関係あったりします?」
白「いやー、うちは罪なき人は殺さないと思うけど…。でもわかんないな。なに?こんなわけわかんない組織が他にもいるってこと?日本こわっ」
田「脇腹のとこにその時の傷があるんで見ます?」
白「ほんと?見して見して」
田「ボウガンで撃たれちゃった傷の跡がここに」
田中、傷跡を見せる
白「うわー、ほんとだー。グローい」
田「あの時は本当に死ぬかと思いましたね」
白「ん?この背中のところの火傷みたいなのは何?なんかのマーク?」
田「それは地下労働施設にいた時につけられたやつで…」
白「地下労働施設⁉︎」
田「そのー、うちの親が多額の借金を抱えまして、それの返済が間に合わなくて私が身売りされちゃったことがことがあって」
白「とんでもない家庭」
田「それで、他にもお金に困った境遇の人が集められてでっかい船に乗せられて、そこで人生を賭けたギャンブル合戦に巻き込まれちゃったんですよ」
白「さっきから色々と漫画じみてるな。私がいうことじゃないかもしれないけど」
田「そこでも運良く勝てたんですけどね」
白「どんくらい?」
田「借金全部返せるくらいには。2億」
白「2億⁉︎親は何したんだ」
田「それで自由になれるはずだったんですけど、手を組んだおじさんに騙されちゃって地下労働施設行きですよ。そこで焼印押されちゃって」
白「理解が追いつかないな」
田「すぐ出られたんでよかったですけど」
白「それもなんで?」
田「地下を管理してる人がすごい不正を働いてて、それを見かねた労働者たちで反乱を起こしたんですね。で、その管理人とまたギャンブルすることになって」
白「すごい展開」
田「私もその人にムカついてたんでムキになっちゃって、最終的に指とか賭けてましたもん」
白「指⁉︎」
田「でも勝てば外に出られて不正も暴けたんで勢いで受けちゃいました。でもほら、もちろん買ったので指は無事です」
白「とんでもない胆力だな」
田「そんな感じでしたね。私の人生」
白「すごいとんでもない話の連続だったな。こういう仕事してるからある程度特殊な状況には慣れてるつもりだったけど…。アンタ殺し屋なんかよりよっぽどすごい人生送ってるよ」
田「そうですかねぇ。でもそんな人生もここで終わりです。さ、ひと思いにやってください」
白「そうだな。長話している暇もないから」
白銀の薔薇、田中に銃を向ける
白「いくよ」
田「はい」
こう着状態が続く
田「あの、まだですか」
白「無理だよぉ!撃てるわけないじゃん!」
田「えぇ」
白「人なんて殺したことないんだよぉ!銃なんて撃てないよぉ!」
田「殺し屋じゃないんですか」
白「私はただ上の依頼を執行者に伝えるだけ!ただの仲介役なの!殺しなんてしたことないの!」
田「じゃあ、私はどうすればいいんですかね」
白「でもここで逃がしてもどうせ組織の人間に始末されるだろうし、私も消されるだろうし…。あなたうちに入らない?」
田「ウチって、殺し屋に?」
白「ええ」
田「無理ですよ。私がそんなことできるわけがないじゃないですか」
白「いや、あなた結構向いてると思う。殺し合いゲームでも生き延びて命を賭けたギャンブルでも勝っている。そんな逸材はそうそういない」
田「でも…」
白「二人が生き延びるにはこれしか方法がない。私が上に掛け合ってみるから」
田「でも、それを受けたら私、人を殺さなきゃいけなくなるってことですよね」
白「そうなる。私みたいな仲介は人が足りてるから」
田「うーん。やっぱり私、人殺しはしたくないです。中学のクラスメートみんな死んじゃって、地下でもたくさんの人が死んでいくのを見ました。人が死んじゃうのってすごく嫌なんですよ、当たり前ですけど。だから私、人はやっぱり殺しちゃダメだと思うんですよ」
白「すごく当たり前だけどものすごい説得力を感じる。でも、うちの組織で働いたらその殺し合いゲームの主催者とか地下労働で私服を肥やす黒幕のこともわかるかもしれないよ。そうすればそいつらに復讐できるかもしれない。親友の仇だって取れるし、アンタを騙して地下送りにしたやつにも復讐できるかもしれない」
田「復讐かぁ。少しも考えないわけじゃないですけど、それで報復の連鎖を生み出したくはないんで、やっぱり私は嫌かなぁ」
白「なんて人格者なんだ。さすが何度も死地を乗り越えてきただけのことはある」
田「というわけなので、もう早いとこやっちゃってください。白銀さんが無理なら自分でやるんで、それ貸してください」
白「バカ!何言ってるんだ!」
田「だって白銀さん人撃てないんですよね。だったら自分でやりますよ。あ、そうだ。自決用の薬って持ってないんですか?」
白「あれは手を下す人専用で、私みたいな仲介役には支給されてない」
田「あーそうなんですか。苦しまずに死ぬってどういう感じか体験したかったんだけどなー」
白「…行け。逃してやるから」
田「え、いいんですか?でもそうすると白銀さんが殺されちゃうんじゃ」
白「仕方ないだろ。私はどうせ殺せない。ほら、これ持ってけ」
白銀の薔薇、田中に銃を渡す
田「私銃なんて使えませんよ」
白「それで自分の身を守れ。付け焼き刃だとは思うがないよりましだ。私はアンタに危険が及ばないように頑張ってみるけど、期待はするなよ」
田「なんでそこまでしてくれるんですか?」
白「いいか、アンタはいろんな人の死を乗り越えて生きてるの。だから命の大切さを誰よりも分かってる。こんなとこで死ぬべきじゃない。私みたいに人の死で金をもらってるクズとは違う。さっさとこんなとこおさらばして、親友の分も生きてやれ」
田「…ありがとうございます」
白「時間の問題だとは思うけど。あと、警察とかは頼るなよ。裏で組織と繋がってるからむしろ危険だ」
田「はい、それは今までもそうだったので」
白「あ、そうなの」
田「あの、ほんとに逃してくれてありがとうございます。あと白銀さん、さっき自分のことクズだって言ってましたけど、そんなことないですよ。だって私のことこうやって助けてくれたじゃないですか。白銀さんは私の命の恩人です。ありがとうございます」
白「なんだよ。わざわざそんなこと言わなくていいから、さっさと行けよ」
田中、去る
白銀の薔薇、座る
白「柄にもないことしちゃったな。あーあ、私の人生これで終わりだ。カッコつけたけど、やっぱ死ぬの嫌だなー。全部バレる前にやりたいことやってから始末されよ」
釣り堀屋の店主が来て白銀の薔薇に話しかける
店「どうですか、釣れますか?」
白「ん?見ての通りですよ。全く。ていうか、私は別に釣りが目的でここに来てるんじゃないですからね。新しい客を隣によこさないでくださいよ」
店「それは、すいませんでした」
白「元はと言えばあなたのせいで…いや、なんでもないです」
店「私のせいで何か不都合でも?」
白「いえ、特に問題ないです」
店「…さっきの方、組織の人じゃなかったんでしょ」
白「え?」
店「私もね、彼女からオーラ?殺気?っていうんですか。そういうのを一切感じなかったんですけどね、相当な腕利きなんだろうと思ってあなたのとこに案内したんですよ。まさか本当に一般人だったとは」
白「なんであなたが…」
店「私も組織の人間ですよ。あなたは監視は不要だと申請していましたが、うちはその辺厳重なんでね。私が派遣されて監視してたんですよ」
白「今までずっと…」
店「ええ。あなたちゃんと仕事はしてたんで本当に監視なんているのかと私も思いましたけどね。今日初めて役に立ちましたよ。あなた、なんで彼女を行かせちゃったんですか?」
白「うわー。そういう展開かよ」
店「規定では秘密が外部に漏れちゃまずいのでね、処理しなければならないはずですが…。あなたのさっきの行動は処刑対象に当たりますね」
白「ええー、もう殺されんの。余生を謳歌する猶予もないじゃん」
店「というわけで、魚の餌になってもらいますよ」
店主、銃を取り出して白銀の薔薇にむける
白「マジかよー。こんなところで死にたくないよ」
店「大丈夫ですよ。さっきの子もすぐにそっちに送ってあげますから」
白「プロの殺し屋みたいなセリフだー」
店「言い残すことは?」
白「やばい、極限状態なのに何も思い浮かばない」
店「じゃ、いきますよ」
白「神様っ!」
銃声が鳴り響く
店主が打たれて倒れる
白「え?生きてる」
田中が銃を持ってやってくる
田「白銀さーん」
白「え?なんでアンタが。アンタがやったの?」
田「はい。うわー初めて人撃っちゃった」
白「なんで戻ってきたんだ」
田「白銀さんに言いたいことあって、そんで戻ってきたら銃向けられてたんでピンチかなと思って撃っちゃいました」
白「人殺しはしないんじゃないのかよ」
田「そうだったんですけど、白銀さんが危ないって思ったら、気づいたら撃っちゃってました。死んじゃいましたかね」
白「動かないし、多分。組織の人間殺しちゃったからアンタと私死ぬまで追われることになるよ」
田「あちゃー。やっぱりそうなっちゃいますか」
白「ほんとに無計画だったのか。でも、おかげで助かったよ。ありがとう」
田「へへへ」
白「笑い事じゃないよ。これからどうするの」
田「あ、そうだ。言いたいことってのはそれに関係するんですけど、白銀さん、私と一緒に逃げませんか」
白「アンタと?」
田「はい。ほら、私ってすごく運がいいじゃないですか。さっきのも含めてもう3回も命の危機から助かってるんですよ。だから白銀さんも私と一緒にいた方が生き残れると思うんですよ」
白「…確かに。アンタはいくら殺そうとしても死ななそうだしな」
田「じゃあ決まりですね。あ、このおじさんの死体どうしましょうか」
白「こいつはこのままでいい。組織の人間だし、表沙汰にはならないよう処理される」
田「そっか。じゃあ行きましょう。追手が来るかもしれないし。いやーこういうのって映画みたいでワクワクしますね」
白「アンタの人生の方が映画よりよっぽどスリリングだよ」
田「それもそうですね。って、こんなことしてる場合じゃないですよ。早く早く」
白「はいはい」
田中、去る
白「…私が、この子を守らなきゃ」
山下、去る
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