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競技活動自伝No.13〜サハラ砂漠マラソン前半戦〜

この文章は、書籍『大陸を走って横断する僕の話。』
(2016年11月23日 台湾 : 木馬出版社より発行)          の日本語原稿です。

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〜サハラ砂漠マラソン前半戦〜


【第一ステージ28km】

今日から自分の装備とチェックポイントで受け取れる水のみのサバイバル生活が始まる。

朝の支度を済ませ、軽いストレッチで集中しながらレースと向き合う気持ちを整えた。まずは初日。今日やるべきは雰囲気に呑まれず自分の走りを掴むことだ。焦る必要は、ない。

モロッコ現地時刻AM9:00 

第一ステージがスタート。入れ込み気味のランナー達に押し倒されないようスタートと同時にまずは極端なくらいレースの右端を走りながら集団を回避。

コースは想像以上の悪路ではないが走りのリズムは掴みにくい。次々と追い抜いてゆくランナー達は予想通り。耐久レースだってことをみんな忘れちゃいないか?

CP1(第1チェックポイント)を越え、スタートからおよそ11km程走ったあたりで悪路の走りに対応できるようになってきた。重心を前へ倒す。腕のスタンスを大きく広げ歩幅は狭く足の裏を一歩一歩置いていくイメージ。頭でゴチャゴチャ考えなくても練習でやってきたことは身体がちゃんと覚えてくれていた。急勾配の砂山と瓦礫をテンポよく越えてゆく。

再び平地へ戻ったおよそ16km地点。とんでもないことに気付いた。水が、無い!!空っぽ。どうやら給水タンクのジップがちゃんと閉まっていなかったらしく背中との圧に押された水は、バックパックの上部から漏れていたようだ。荷物はビショビショに濡れていた。次のCPまではおよそ5km。その間 水ゼロ。どうしよう…やばい。

強烈な直射日光の下、足を止めていても干上がってしまうだけだ。前へ進むしかない。もうペースがどうとか、順位がどうとかは言っていられない。早く次のCPへ辿り着かないと、死んでしまう。それでもまだまだ何も見えない。サイドポケットに入れておいたキウィと木苺のドライフルーツをゆっくりと咀嚼し、微かな果汁に喉を湿らせる。涙が出るほど美味かった。それでも炎天下の地獄は、続く。あとはもう消毒液でも飲んでやろうか?

砂山を迂回し、やっとCP2が見えて来た!!とにかく水のことしか考えられず、ペースは自然と上がっていたと思う。命からがら到着と同時にカラカラの喉へ水分をブチ込み沸騰しかけの頭から水をかぶって、ようやく息を吹き返した。ラストの7kmは、そのまま駆け抜け、なんとか第1ステージをゴールする。

火照った身体を冷ましながら日本選手の帰りを待つ間にも、次々とリタイヤ情報が飛び交っていた。

ゴール後、受け取ったミネラルウォーターの一口目を『味』だけで単純に言い表すことはできない。サハラへ挑む全ての選手にとってそれは『命』の価値そのもののように想えた。

たった1日、たったの28kmで、砂漠の恐ろしさは理解できたような気がした。


第1ステージ 28km
最高気温 41℃
最低気温 15℃
湿 度  14%
記 録  2時間58分47秒
順 位 47位/ 732人中 (内9名リタイヤ)

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3,478字
一冊の書籍原稿を章ごとに配信する連載形式でお届けします。(2019年7月8日〜29日) 期間終了後も、一冊の書籍原稿としてお楽しみいただけます。

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