街のけぶり
なんばの商店街のうどんやで梅わかめうどんを食べていると店内を小さなハエが飛んでいた。
別にわたしはごきぶり未満の虫なら気にしないので平気でうどんを食べていたのだけど、
ふと、こう暑いとこのハエも水分補給をするはずで、そうなるとうどんのだしを飲んでいるのではないかと思った。
そして、体内の多くをうどんだしが占めているこのハエを油でからっと揚げて天かすのように食べたら、かりっと噛んだときにいい香りのだしの味がするのではないかしらと思った。
梅わかめうどん、300円台だったと思う。安い。
そのままNGKの前を通って道具屋筋商店街を歩いていると、ある食器屋の店頭に投げ売りのワゴンに目が留まった。
その中に、ミント色のおはしケースがあった。
レトロ、というかもうただ古いだけ、という感じで、色とりどりの風船を持つ兎の絵がついていたのだが、
その絵ときたら戦後に知育雑誌<よいこの友>みたいなのがあったとすれば、表紙に描かれている絵はこういうのでしょう、というタッチの絵だった。
このおはしケースはいつから売れてないんだろう?
もしかしてbaseよしもとがあったくらいの頃からだろうか。
baseよしもとと道具屋筋といえば、どの店もシャッターが閉まった夜の道具屋筋で、ドレッドノートさんがネタ合わせしているところを見たことがある。
プチワラbとかの頃だと思う。
ふたりは半袖を着ていたから、ちょうどそのときの季節も夏だったのかもしれない。
ていうか今思ったけどドレッドノートさんが冬服を着ているところを見たことがない。
でも原田さんのジャンパー姿を見たことはある気がする。なんでや。と思ったけど、おそらくハッピーピープルのときでしょう。
高円寺の駅前でストリートライブをしてはったのを見たのだ。
別の時、南海通りを歩きながら漫才のネタ合わせをしているコンビを見かけたことがある。
そのコンビの名前は分からない。
道でネタ合わせなんて「めっちゃイキり」か「めっちゃ真剣」かどっちかと思うのだが、
ドレッドノートさんのそれは「真剣」で、漫才コンビのほうは「イキり」のほうだったと思う。
漫才コンビがネタ合わせしていたのは人がたくさん行きかう南海通りで、あわよくば見て、気にかけてくれ!的なイチビリさがあった。
そしてドレッドノートさんのネタ合わせしていた道具屋筋には、人はだれもいなかった。
ドレッドノートさんからなぜかボンボンヤサゴナボンさんを連想したが、めっちゃ面白かったひとたちは今なにをされてるのだろうか。
元気でいてほしい。
道具屋筋を抜けてベローチェに入り、2階席にいく。
なんとなく昔は喫煙ゾーンだった窓側の席にいくと、もう全席禁煙になってだいぶ経つのに、いまだたばこの匂いがへばりついていた。