「はたらく」をどうデザインする? ー 多様化するキャリアの選択肢 ー #Unstereotype Project
初めまして。SHE株式会社のますのです。
今日は、SHEのブランドコミュニケーショングループの新たな取り組みをお届けできればと思います。
SHEは「一人一人が自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を作る」をビジョンに掲げ、ミレニアル世代の女性達が自分らしく生きるためのサポート行っています。
新しい取り組みでは、「自分らしく生きる」ためのヒントを別の角度からもご提供できればと思い、働き方についての特別対談記事をお届けします。
キャリアSNS「YOUTRUST」を運営する岩崎由夏さんをゲストにお迎えして、女性向けキャリアスクール「SHElikes(シーライクス)」を運営するSHE株式会社代表取締役CEO/CCO福田恵里と、SHElikes受講生のいっぽさんとともに「令和のキャリアの築き方」についてディスカッションをしていただきました。
以下、ライターの仲奈々さんに議論の様子を執筆いただきましたので、ぜひご一読ください。
「根拠のない自信」で自分らしいキャリアを築く
これまで日本では、新卒一括採用や終身雇用により、年功序列をベースとした会社で定年まで働くことが誰にとっても当たり前でした。しかし、新型コロナの影響もありここ数年で働き方は急激に多様化し、転職や副業、そしてフリーランスが身近なものになりつつあります。
キャリアの築き方が多様化したことで、個を発揮して活躍する人も増えてきました。一方で、「自分らしくあること」が是とされる環境においてはロールモデルも見つけにくく、「自分らしさはどう見つけたらいいのか?」「現代を生き抜くために必要なスキルは何なのか?」と悩む声もあります。
女性は男性よりも、自分の可能性に蓋をしがちって本当?
福田:本日のテーマは「多様化するキャリア」です。ここ数年、YouTuberやインフルエンサーなど、自分の得意を活かしてこれまでにはなかった働き方を叶える方が増えてきましたよね。一方で、「人に自慢できるようなスキルがないから、私には無理」と自分の可能性に始めから蓋をしている方も多いようで……。
いっぽさん:私は現在副業でコーチをしているのですが、理想のキャリアはなんとなく持ち合わせているのに「あの人の努力と比べるとまだまだ。そんな私が夢を叶えられるはずがない」「私のスキルで理想を実現しようなんておこがましい」と思い込み、自分の可能性を狭めている方が多くいらっしゃるんです。なぜ周りと比較してしまうのでしょうか……。
岩崎さん:「インポスターシンドローム(詐欺師症候群)」ってご存知ですか?仕事で成果を出し、客観的な評価をしっかり得られているのにもかかわらず、自分自身を過小評価してしまう心理状態をそう呼ぶそうですが……。インポスターシンドロームに陥っている人は、スキルや実績があるにもかかわらず「たまたま運が良かっただけ」「私ではなく周りの人のおかげ」と思い込んでしまうそうなのです。そして興味深いことに、この心理状態が現れるのはほぼ女性なんだとか。
福田:少なからず、時代背景が関係していそうですよね。私は今年31歳、そして岩崎さんといっぽさんは今年32歳になる年齢。私達と同世代の女性は「控えめ」「慎ましい」ことが良しとされて育てられきた方が多くいました。それが、社会人になっても「女性がリーダーなどをして目立つのは良くない」「人前で実績を誇示するのは良くない」と思う原因のひとつになっているのかも。
岩崎さん:女性が目立つのは良しとされない時代でしたよね。この間久しぶりにウルフルズの「ガッツだぜ」を聞いていたんですけど。歌詞の中に、「男は汗かいて」「女はかわいく」って出てくるんです。今聞くと「なんで男女で役割を分けるの?」と思えるのですが、当時は私を含め、誰もが違和感なく受け入れていましたよね。
実は、私もつい最近まで性別に囚われていて。起業は男性がするもの、男性がお金を稼ぐべきだと思っていたんです。幼い頃の環境や教育が、無意識的に表れていたと思います。よく夫に「起業して稼いで家族を養ってくれ」と言っていました(笑)。
いっぽさん:岩崎さんご自身がそうだったんですね。でも、私もコーチをするときは「性別なんて関係ないよ」とか「あなたにはこんなスキルがあるよ」と言えるけど、私自身のこととなると客観的に見れないかも。どうしても従来の価値観だったり、周りと比べてしまったりしてしまうんですよね……。
岩崎さん:私は、人と比べること自体は悪いものではないと思っているんです。例えば「あなたは100点だよ」と言われても、点数だけではそれが良いのか悪いのか分からないじゃないですか。他の人が50点だったら?1000点だったら?まずは人と比較しないと、自分の状態を客観的に判断できないと思うんですよね。
福田:人と比較して、自分のポジションを明確にすることが大事ですよね。ただ綺麗事で「あなたは今のままでいい」「人と比べなくてもいい」のではなくて、人と比較するからこそ自分の強みも見えてくるはず。
岩崎さん:そうですね。人と比較して「私はダメだ……」と自分を過小評価するのではなく、「あとこのくらいであの人と肩を並べられる」とか「あの人は私よりこれが得意だけど、私はあの人よりもこれが得意」と、周りと自分との違いを自分の可能性を広げる形で解釈できるといいですよね。
カリスマとされているあの人も、実は「普通」の人
岩崎さん:自分が尊敬している方の普通な部分を見ることで、「あの人と私を比較すると実はそんなに変わらない、それなら私ももっと上のステージに行けるのでは?」と自信につながる場合もありますよね。
最近、DeNA創業者で現在は経団連の副会長をされている南場智子さんと対談する機会があったのですが……南場さんは、私のような駆け出しの経営者からすると雲の上のような存在。そんな南場さんでもつい最近まで自分に自信がなかったとおっしゃっていて。
福田:日本の経営者にとって、カリスマ的存在の南場さんがですか……?
岩崎さん:「私は運良く人に恵まれて今のポジションにいるだけ。実際はすごい人間でもなんでもない」とおっしゃるんですよね。
そこには、南場さんの育った環境が大きく影響しているそうなのです。お父様が昔ながらの家父長制を大事にする方で、「女性は控えめに」という考えのもと育ったらしく。将来は地元の銀行に就職して、結婚して専業主婦になって……と思っていたところ、記念受験で受けたマッキンゼーに内定をもらって。
最初から高い志を持ってキャリアを築いてきたわけではなく、流れに身を任せていたら現在のポジションについていた。だから自分の力を手放しでは信じられないそうなのですよね。
いっぽさん:すごい人のこう……普通な一面を見ると、私と同じように悩みや不安を持つひとりの人間なんだなって安心できます。
岩崎さん:そうなんです。すごい人と自分を比較すると、実は本質的には変わらないことも多くて。そこから「私もあの人のようになれるかも」と自信を持てるようになると良いですよね。
私も南場さんのお話を聞いてから、「あの南場さんも普通の人なら、私だって南場さんレベルの起業家になれるのでは?」と自信が湧いてきました(笑)。
ダメな自分が起業して成功することに価値がある
岩崎さん:南場さんも実は普通の人なんだけど、キャリアを築いていく過程で、ある種の神格化がされていったのだと思うんですよね。私も、YOUTRUSTを起業して資金調達をして、業務委託を含めると80人近い方が働く会社となって……その過程で「すごい人」と言われることが少しずつ増えてきたんです。
福田:岩崎さんは新卒でDeNAに入社して、人事をして、そこから日本のキャリアの課題感を見出してそれを解決するために起業しているじゃないですか。実際すごい方だなと思うのですが……。
岩崎さん:全然すごくないです。会社員時代は、同期に餃子屋さんで飲みながら仕事や人間関係の悩みを延々と語るようなダメダメなタイプ(笑)。本当はマネージャーに興味があるのに、自分のスキルを信じられなくて手があげられなくて、でも周りがマネージャーになるのは悔しい。そんなごく普通の会社員でした。
でも、そんな自分が起業して成功したら、世の中へのインパクトは大きいと思うんです。一昔前までは「一般人とはかけ離れたポテンシャルがあるすごい人」しかできないと思われていた起業。私のような普通の人でもできることを証明したら、それこそキャリアの多様性に繋がりますよね。
いっぽさん:それ、すごくわかります。私からすると、南場さんはもちろん、岩崎さんも福田さんもすごい人なんです。でも、そういう方々の「最初からすごかったわけじゃないんだよ」というエピソードにはとても勇気づけられます。
福田:私も岩崎さんと同様に、全然すごくないんですけどね。普通の会社員が起業しちゃった(笑)。
岩崎さん:福田さんや私といった、ごく普通の人が活躍することで起業のハードルが下がるといいですよね。
「根拠のない自信」が自分を強くする
福田:これまでのキャリアの価値観がアップデートされてきたからこそ、ロールモデルを見つけづらいこの時代。自分らしく働くためには、何が必要だと思いますか?
岩崎さん:「根拠のない自信」ですかね。「あの人にもできるなら自分にもできるかも」と思えるようになると、可能性は無限に広がっていくはず。比較対象がすごい人でも、その人の「普通」な部分が見つかると、「本質は同じ人間なんだ、それなら私にも……」と思えますよね。
いっぽさん:そのためにも、キャリアについてもっと気軽に話せる場所が増えるといいですよね。私は普段東京で仕事をしていますが、地元は東海地方にあるんです。最近では、私の勤める会社でも副業が解禁されたので、東京の友人や会社の同僚とは「自分らしいキャリアって何だろうね」と話すことも多くなりました。でも、地元ではそういった機会がほぼなくて……。以前、地元の友人にキャリアに関するアンケートをとったところ、「そもそもキャリアって何?」と言われてしまったこともあるんです。都心にいると自ずといろんなところで目に入ってくるキャリアという言葉は、地元では耳にすることすらまれだったようで。
福田:キャリアの多様性って、実はまだ都心だけのムーブメントですよね。私も地元は関西なのですが、そこでは公務員や医師になるのが成功と見做されることがいまだに多くて。SHElikesの受講生も、首都圏在住の方が7割を占めています。
岩崎さん:特定の地域だけの一過性のムーブメントではなく、誰もがあたりまえのように自分のキャリアを自分で考え、選択する社会にしていきたいですね。それこそ、SHElikesやYOUTRUSTが地方でもあたりまえに使われるようになれば、住んでいる地域に囚われずに「自分らしいキャリア」を考えるきっかけが増えますよね。そのためにも、私や福田さんといった普通の人が「根拠のない自信」をパワーに成功して、未来を切り開いていければと思っています。
編集後記
Unstereotype Project第1弾は、令和のキャリアについて語っていただきました。
「自分と人をきちんと比較する」「根拠のない自信を持てる人が強い」など、新しい価値観に驚かれた方もいるかもしれません。ライターの私自身、「人と比べるのは良くない」「根拠のない自信は成長を阻む」と思っていたため、3人のお話から新しい視点を得られました。
しかし、染み付いた価値観はなかなか拭えないもの。岩崎さんは最初からこの2つの価値観を持っていたのか、それともキャリアを築く中で得たものなのか。後者の場合は、自分の価値観が変わるきっかけは何だったのか……。今後機会があれば、ぜひ伺ってみたいと思いました。
みなさんは、今回登壇した3人の話から何を感じましたか?もともと登壇者と同じような考えを持っていた人、新しい価値観に驚いた人、もしかしたら「その考え方は違うのでは?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。
この記事が、みなさんが「自分らしいキャリア」を考えるきっかけのひとつになれば幸いです。
<登壇者>
株式会社YOUTRUST 代表取締役CEO 岩崎由夏さん
SHE株式会社 代表取締役CEO/CCO 福田恵里
SHElikes 受講者 いっぽ
<執筆>
仲奈々
<SHElikesについて詳細を詳しく知りたい方はこちら>
https://cutt.ly/QRr3cle