GEMS COMPANY定期ONLINE LIVE vol.5 感想
始めに
これは2023年6月30日(金)に配信されたGEMS COMPANY
定期ONLINE LIVE vol.5の感想と記録。
2月から定期開催してきたオンラインライブの五回目となり、今回は初のゲストとしてVALISを招いての公演となる。
演者のみなさまは敬称略で表記。
VALISについて
(うんちくになってしまったので飛ばしてください)
神椿プロジェクト系列SINSEKAI CITYプロジェクト内にあるVALIS。オリジン(生身)とバーチャル(アバター)の二つの姿でパフォーマンスを行うダンス&ボーカルグループ。ネズミの姿をした団長の操桃(古いネラーの匂いを感じる)ひきいる猫人の姿をした六人のサーカス団員で、紆余曲折を経て現在は深脊界市という町で瓦利斯(ヴァリス)飯店を営んでおり、パフォーマンスを披露している。チャンネルはこちらとこちら。
神椿プロジェクト系列なので非常に独創的な世界観を持ち、女性人気も高いグループ。同系列の花譜のライブでも度々出演し、コラボ楽曲も出している(PVは必見)。この系列の中では他運営とのコラボを積極的に行っている印象があり、年に数回あるバーチャルアイドルフェスティバル『Life Like a Live!』(通称えるすりー)でも現在はほぼレギュラー。その縁かLiLYPSEやえのぐなど運営をまたいで他グループのライブにもオリジン・バーチャル双方の姿でゲスト出演して多方面と親交がある。
多くのクリエイターの楽曲提供を受け、高いクオリティと多様な曲調を抱えながら、タイトルは常に『漢字+カタカナ』という一貫性。統一されたダークな世界観に身を置きつつも、メンバーは混沌とした個性の絢爛さを併せ持つ。しかし、それ以上に彼女らの魅力はその洗練されたダンスにあると思う。とにもかくにもダンスが非常に上手い。フルメンバー、ユニット、ソロのどれもが圧巻のクオリティ。
なにより彼女達のパフォーマンスには並々ならぬ覚悟が満ちていて、逃げ場のないオリジン=生身で披露する点からも確固たる自信がうかがえる。
初期こそ出自を含めハードなダーク路線だったが、昨今はライト寄りにシフトしつつ、その高いポテンシャルで多くのファンを獲得している。
しかし、オリジンを晒した時は非常に驚いた。生身を晒すVは多くあれど、彼女達の場合は特徴ある世界観を壊してしまう恐れがあった。ネットでも賛否両論あった。それでも、彼女達が震える声で決意を披露したオリジンのライブはとても素晴らしかった。それが今の多様な活躍に繋がっている。
特にえるすりーで『全く違う世界観が同じステージに立てる』というヴァーチャルの楽しみ方を私に教えてくれたのはVALISだった。
これからもその素敵なパフォーマンスが多くの目に留まることを願ってやまない。
そして今回のゲストは六人の中からCHINOとNINAの二人。落ち着いた声が魅力で萌え袖が可愛いCHINOはリーダーで先生付けが愛称となる。片や背中のパンダポーチが可愛いチャンニナことNINAは天然でありながら低めの歌に深い響きのあるギャップを持ち合わせている。
今までジェムカンが共に踊ってきた中でも、また新しい魅力をもったグループだけにその化学反応をとても楽しみにしていた。
門外漢のくせに長々と綴ってしまったが、以下より感想を始める。
ライブ感想
今回ジェムカンは、歌のツートップ水科葵と音羽雫、ダンスのトップ奈日抽ねね、ただのオタクコミュ力のお化け小瀬戸らむの四人構成。当初はCHINOだけがゲスト予定だったが、急遽NINAも加わることがサプライズとなった。
ステージもバックスクリーンに加えて、書割が追加。また違ったバックを背負った舞台となる。よりSHOWらしい見た目となり、VALISさんとの親和性も考えたものなのだろうか。
①FUN FUN JAPAN ~津々浦々四季折々~
世界観をまたぐコラボ回に相応しいスタート曲。
歌のツートップがいるだけにハモりも含めて歌は抜群に強化され、そしてオリジナルのユニットメンバーが半分占めるためダンスも伸びやか。
音羽雫のポン姉と雫の個性を使い分ける事での色の変化は原曲より如実で、楽曲ともマッチして非常にバラエティに富んでいる。そして小瀬戸らむの色が非常に良い。歌中の掛け合いで無類の上手さを発揮する彼女の、アドリブの演技力がこの歌にあって鮮烈なアクセントになっている。歌の枠から決して外れることなく、しかしフリーダムな動きが、この歌のわちゃわちゃ感をより高め本当に楽しいものにしていた。
そして、水科葵と奈日抽ねねがこの自由な二人を歌とダンスとMCでしっかり支えることでまとまりのあるパフォーマンスになっている。本当に連携力がすごい。
②しゃかりきマイライフ!
ジェムカンのコール&レスポンス筆頭楽曲。
こちらでも小瀬戸らむのアドリブが光っている。コーラスは完全にオタクの代わりを担ってくれている。楽しさを演出する部分では積極的にアドリブを入れる事で原曲をよりパワフルに押し上げている。2番で有栖川レイカを意識した声色などもサプライズで楽しかった。
奈日抽も相まって普段よりアドリブ多めに楽しく歌いつつも、流石の徹底されたダンスを披露している。特にこの曲はステップの軽やかさと膝の丁寧な入れ方が随所にあって、ジャンプもリズムから外れず、脚が本当に美しく見える。この数年を共に歩んだ曲だからこそ、もはや音と共にダンスが在る。
MC
二人の遠慮のない切れ味鋭いツッコミ合いに、また一段と深まっている仲を感じる。
そしてゲストが登場してからの小瀬戸のはしゃぎっぷりと声のしゃがれっぷりが見ていてずっと面白かった。
グループ一問一答
こういう企画はよくあるが、会話のテンポが良くて終始笑いが絶えず面白かった。身内ならいざ知らず他グループ同士でバチバチ掛け合えていて、ファンとしても満足感のある話が聞けた。楽曲コラボも良かったけれど、このトークが本当に楽しかった。
ジェムカン側、というか小瀬戸と奈日抽の愛が熱に溢れていた。
③残響ヴァンデラー
分かってはいたけれど、ダンスも合わせてコラボするというのが本当に贅沢な演目。交差もしっかりある。
持ち曲であるVALIS側のキレッキレのダンスはもちろん流石で、緩急の付け方がなめらか。まるでメトロノームみたいに重心の揺れが安定していて、踊りに難しさを全く感じさせない。見ていてただただ美しい。
そしてジェムカン側も見どころが多かった。全身のひねりが売りの奈日抽が水を得た魚のようだった。間奏でもVALISとシンクロして、キメも鋭かった。小瀬戸も愛と気合が満ちていて、落ちサビから歌のボルテージを一気に引き上げた。ダウナー上手がここに活きて、それが披露されて嬉しかった。
普段こういった激しい曲をやらないからこそ、二人の良い声とダンスの実力を新しい角度で見れて楽しかった。
そしてここまで無料で見せてくれるというのが本当にすごい。
④夢見がちエクスプローラー
小芝居が入る転換もまたジェムカンライブの見所。課金勢が抜けた後から一気に各ソロ曲のパートへ。(それにしても奈日抽は4曲ぶっ続けで全く疲れを見せていないのがすさまじい)
ダンスと語りという彼女の持ち味を存分に味わえる楽曲。可愛い曲ながら足腰の動きが激しく、それでいて静止もしっかり入るのを危なげないどころかそつなく踊りこなしている。しかも、歌が揺れない。
奈日抽のダンスは体のラインで描く直線の美しさが見所で、書道家が書いた漢字の払いのような足がいつも素晴らしいと思う。
⑤Happy♪ Lucky♪ Sharing!!
小瀬戸ソロパート。
歌い込んできているのが分かる。元気なだけじゃない。より歌い聞かせるように、感情の乗せ方の押し引きが素晴らしいと思う。どう歌えば歌詞の意味が届くのか、一番いい声を何処で仕掛けるか、丁寧に組まれていて聞いていて本当に気持ちがいい。ラスサビ最後の『イエーイ』への運び方は綺麗だった。『~しようよ』『~したいよ』という部分は喋るトーンに近いから、小瀬戸らしい距離の詰め方が歌に反映されてる。
特徴的なサビのステップも飛距離があがっていて、大変ゴキゲンだった。
⑥鮮紅の花
水科ソロパート。
ジェムカン楽曲の中でも出自を含めて際立つ色彩の一曲。何せ作曲が世界のオカベなのだから。
久しぶりなのでこれを書く前に原曲を聞いたけれど、今や全く違う歌に進化していて驚く。歌声から甘さが抜け、厳しく熱く引き絞られている。もはや花ではなく炎に近い。
抑えた所から感情のボルテージを徐々に波打たせ、落ちサビから更に駆け上がりラスト一節に来て最高潮となる。最初から全力で突っ走らない、丁寧な積み上げ。
四年以上前の楽曲で、何度も披露され既に完成に至ったと思っていたけど、本当にまだまだ咲き方が変わっていくのかと驚く。
大好きな楽曲だからこそ、今も向き合い続けてくれて嬉しい。
⑦形而境界のモノローグ
ジェムカン楽曲の中でも最高難度を誇る振りと歌を、歌のツートップが演じる。待ち望んでいたデュオの一つだった。
その期待に応えるかのように『DIVE』から圧倒的な美しさを誇るハモりを聞かせる。元々不可思議な世界観を持つ歌だからこそ、そのハモリがとても神聖な色合いとなって、透明感が半端じゃない。また音羽雫の歌声が鋭い。普段は深い包容力を持つ声だからこそ、甘さの無い響きがあまりにも凛々しい。ずっと水科葵一人で研鑽を重ね、時にジェムカン内でコラボをしてきた曲でもあるけれど、この曲の新しい進化がまた一つ見えた気がした。
本当にこの二人が全力で歌唱をする場面を見れる日が来るのが嬉しい。
ダンスが苦手と公言してる音羽雫がしっかり形而境界を踊り切ってくれたことも良かった。本当にカッコ良かった。
MC
にしても、関西弁と群馬弁が並ぶと癖が強い……。
お互いのリスペクトがしっかり見えてとても嬉しい。何よりジェムカン側がしっかり掘り下げて絡んでいくから僅か二曲のコラボだとしても、それ以上の満足感があった。
有人ライブを地道に重ねる事で実力を伸ばす二組が、これからどんな魅力的なライブを見せてくれるのか楽しみで仕方ない。
⑧ゴールデンスパイス
コラボ二曲目。今度はジェムカン楽曲で。
当然と言えば当然だが、VALIS側も全く遜色ないダンスで、ステップも淀みが無い。フォーメーションダンスも本家との連携を軽々と完璧にこなす。ジェムカン側もハモリをガンガン入れて、煽りも増し増しに、歌の厚みが凄い。そして演者達の楽しさが伝わるかのように曲が進むにつれて声のテンションがどんどん上がっていく。
とても楽しい曲なのに何故かエモさも増していき、胸いっぱいの感情のままラスサビへ到達すれば演者のみならず観客まで同じテンションになってしまう。
改めてカレーライスのようにあらゆる具を包み込んで一つにしてしまう素晴らしい楽曲なんだと思う。
それを歌だけでなく、しっかりダンスと併せてコラボしてくれて良かった。何よりVALIS二人のテンション上がり切った感想が一番嬉しかった。
⑨Imperfect light
コラボ続きで迎えた音羽雫ソロパート。
歌唱力に全ステータスを振ってしまった歌姫の歌はやはり出だしから空気を変える。いや、今回に関してはそれ以上に、ノリにのった絶好調の歌唱だったと思う。雲を裂いて空を開くような歌声がいつも以上に力強く伸びていて、ダンスも捻りや反りがとても深かった。ここまでに歌ってきた二曲で完璧な仕上がりに至ってたと思う。
本当にこの人の歌は高音で細くならないし、しゃがれない。光線のように真っ直ぐ美しく天を貫いていく。それをあんな激しいダンスをしながらやってのける。
普段のキャラが強烈だけに、毎度彼女の歌を聴いて目が醒めるような思いをする。
MC
小芝居が面白い。
⑩革命バーチャルリアリティ
本公演一番の見所だったと思う。
ダンスの解釈が特徴的で、とにかく切れ味が鋭い。奈日抽の振り入れで統一されているからか、徹底的にキメを重視するダンスになっている。操り人形型のロボットダンスのような制動の強さで、見ていて張りつめる。
歌声からして緊張による固さも多分にあったのだろうけど、この留め方は狙いだろうし、サヨナラノートで培った点の合わせ方なのかもしれない。ブラッシュアップを重ねた彼女達なりの革命ヴァーチャルリアリティはとてもカッコ良く、ジェムカンのダンスとして新しい一面だった。円陣ダンスも完璧な仕上がりだった。ラスト一節『目を開けて』直後の音に腕の回転が綺麗に合わさってるのが好きだった。
小瀬戸と奈日抽、特に小瀬戸の気合と愛に満ち溢れた歌唱は原曲の激しさを体現し、水科は高音を絞り出し、音羽は低い所で支えた。
毎度ダンスカバーのクオリティが高いジェムカンだが、今回も本家を前にしてガチのクオリティを魅せてくれて嬉しかった。
⑪チアリータ♥チアガール
本編最終演目。コロナ禍のなか彼女達の提案で作られたジェムカン応援ソング。革命から激しさはそのまま180度真逆の底抜けに明るい楽曲。
そしてこれも大きくて速い、気合入りまくりの、逃げも隠れもしない本気の演技。アドレナリンがどっぱーんして、筋肉痛でも怖くないと覚悟を決めているのは彼女達自身だったかもしれない。だからこそ、見ている側に迫るものがある。
9人から4人へのダウングレードではなく、アップグレードですらあると思った。それぐらい力強い演技だった。
アンコール ときめきドリームライン
アンコール曲にして、本当に本当のラスト曲。
夢を信じてトライしてみよう、という楽曲そのままに定期オンラインライブの新たな試みを見事に全うした彼女達の力強い歌唱。
手も足もどこまでも伸ばし切って、さぁ進めと示す指に力が溢れている。誰一人弱まる事無く声を張り上げていた。粒も揃っていたし、ソロパートで翳りも感じなかった。
この曲も、かなりキメの合わせが強く、ダンスの気合に衰えを感じなかった。普段より強かったのではないかと思う。
本当に高いテンションを維持したまま、ここまで来た事を凄いと思った。
最後まで、楽しい演目だった。
最後に
VALISをゲストに迎え、お互いの魅力を高め合う内容となった第5公演。
双方のファンにとっても、非常に満足感のあるライブだったのではないかと思う。とにかくリスペクトの投げ合いが見ていて微笑ましかったし、嬉しかった。ライティングで色合いが統一され、世界観の隔たりが解消されて全く気にならなかった。
わちゃわちゃも笑いもふんだんに盛り込みながら、何処までもストイックに積み上げて、本気で取り組んできたのが分かるクオリティの高いダンスと歌。MC挟みつつもやり切った一時間半12曲。
正直本編最後にそんなに時間が経ったのかと驚いた。それぐらい今回は歌もMCも楽しさの密度が高く、まさに時間が瞬で消えた。
MC(というより小芝居)はありつつも、楽曲数も相当数だったのでカロリーだけなら恐らく今までの現地ライブ1公演分に負けてないと思われる。それでも四人とも笑顔でやり切った。今までのライブもそうだが、演目中に水を飲む姿をほぼ見せないことにステージ意識の高さを感じる。
その強さとタフさは本当にすごいと思う。
毎回そうだが、この内容で3500円は本当に安い……。