NY Barも採用する現行UBEの変更(NextGen Bar Exam)

はじめに

 NY Bar Examが現行のUBE方式に移行したのは2016年です。UBEは、NCBE(National Conference of Bar Examiners)が作成・提供をしています。このUBEは、現行タイプの実施を2028年2月で終了し、より実務的な内容に舵を切った試験(NextGen Bar Exam)に移行することが発表されています。
About the NextGen Bar Exam

現行試験

 NY州も採用する現行のUBE(Uniformed Bar Exam)は、択一(MBE)、論文(MEE、MPT)の3セクションから構成されています。

1.MBE

・択一形式(選択肢は4つ):100問(3時間)の2セット(計200問)
・配点50%
・全7科目(Civil Procedure, Constitutional Law, Contract, Criminal Law/Procedure, Evidence, Real Property, Tort)から出題

2.MEE

・論文形式:6問(3時間)
・配点30%
・MBEの7科目にAgency, Partnership, Corporation, Conflict of Law, Family Law, Secured Transaction, Trust, Willを加えた全15科目から出題

3.MPT

・論文形式:2問(3時間)
・配点20%
・法律家としての基本的な事務処理能力を試す論文式試験(通常、上司からの指示文書に従い、事実と参考法令・判例を用いて、まとめ上げるもの)

となっています。

Bar Examの変更(NextGen Bar Exam)

1.NextGen Bar Examへの移行時期

 UBEを作成するNCBEは、現行のBar Examの実施を2028年2月で終了し、新たなBar Exam(NextGen Bar Exam)を並行して2026年7月より開始する予定です。各州のBar ExamがいつからNextGen Bar Examに移行するかは、各州の判断に委ねられています。

 この記事の執筆時点(2024年1月29日)時点(※7月時点の情報にupdateしました)でNextGen Bar Examへの移行を正式に発表しているのは以下の州です。(正式なリストはこちら

2026年7月の試験から
Connecticut, Guam, Maryland, Missouri, Oregon, Washington

2027年7月の試験から
Arizona, Iowa, Kentucky, Minnesota, Nebraska, New Mexico, Tennessee, Vermont, Wyoming, Oklahoma

2028年7月の試験から
Colorado, Kansas, Utah, Illinois

 NY州については、この記事の執筆時点で正式な決定はアナウンスされていないようです。
 NCBEは、2026年7月のNextGen Bar Examは、限定的な州で実施する予定と述べており、ここからNY州が2026年7月の実施に踏み切る可能性は低いのでは?と思いますが、2024年に入りNew York City BarのCouncil on the Professionがchief judgeに対して彼らの見解を送付するなどの動きがあり、いずれにしても近々一定の方向性が打ち出される可能性が高いと思います。

 また、DC Barの受験資格が厳しくなったこととの関係で、受験可能性がある州として浮上しているConnecticutは、移行時期を明言していませんが、早い段階でNextGenへの移行を発表しています。2026年7月からの移行を表明しました。

 
日本の有資格者でNY州の受験資格を否認された場合の受け皿であったIllinoisは、2028年7月からの移行を表明しました。

2.NY Barの行方

 NY州がUBEを採用した2016年以前は独自の試験を実施していました。今回も①新たな試験形式に移行する(NextGen Bar Exam)パターン、②全く独自の試験を実施する形式に移行するパターンのいずれもあり得ます。

3.独自の道を行く?California Bar Exam

 有資格者であれば日本からも受験できるため人気なCA Barも択一式試験のみUBEを採用しているため、NextGen Bar Examの影響を受けます。
 この点について、CA州は、NextGen Bar Examに完全移行した場合、州独自の内容をテストできなくなることを懸念し、州独自の試験を新たに開発する方向に傾いているようです。(参考情報はこちら
※情報update
 CA州は、Barbriと並ぶ大手のKaplanと提携し、NCBEが提供していたMBEに代わる択一試験を実施するようです(参考情報はこちら)。これまでの出題傾向と大きく変わるのかは不明ですが、IP上の懸念が指摘されていることもあり、将来的にはこれまでのMBEとは違いが顕著になってくるのかもしれません。

NextGen Bar Examの概要

 NextGen Bar Examは、以下の3つのパートから構成されるようです。
  ・Multiple Choice Questions
  ・Integrated Questions
  ・Longer Writing Tasks
 各パートのサンプル問題も公開されています。

 また、出題科目は以下とされています。
・Civil Procedure
・Contract
・Evidence
・Torts
・Business Associations (including Agency)
・Constitutional Law
・Criminal Law and Constitutional Protections Impacting Criminal Proceedings
・Real Property
・Family Law

※update
試験時間は、従来の12時間から9時間に短縮されるようです。

1.Multiple Choice Questions

①試験時間
 現行のMBEは、試験時間全体の50%(6時間)なのに対して、これが最大40%までに圧縮されるようです。

②問題の構成
 現行のMBEは、いずれも4択問題ですが、NextGen Bar Examのサンプル問題は、4択もしくは6択となっています。4択問題は、従来のMBEと同じようなスタイルであるのに対して、6択問題は、issue spoting的な問題構成となっており、かつ、正解を2つ選択するスタイルです。

2.Integrated Questions

①試験時間
 試験時間は25%未満とされています。

②問題の構成
 選択肢式の問題と短い記述式を組み合わせたスタイルの問題となっています。ポイントは、1つ1つの問題が独立しておらず、1つの事実に基づいて、複数の問題が出題されている点です。
 内容としては、法律事務所に相談に来た事例をベースにして、関連法令・判例を参照しつつ、論点を特定したり、法律文書を起案するものとなっており、現行のMEEではなく、MPTに近い印象を受けます。

3.Performance Tasks

①試験時間・点数割合
 試験時間は最大33%までとされています。現行MPTが3時間(25%)ですので、MPT類似パートの試験時間が長くなるのかもしれません。

②問題の構成
 こちらは未だサンプル問題が掲載されておらず、現行のMPT過去問へのリンクが貼られているにとどまります。
 ただ、明らかに現行のMPTとは異なる点として、2つのうち1つは、リサーチスキルに焦点を充てて、複数の選択式問題と短いconstructed response questions(要は記述式?)を出題した上で、その後に長めのライティング問題を出題するとしています。
 これを読む限り、1つは選択肢式・短い記述・長い論述の複合タイプ、もう一つは、現行MPTに近い論述式タイプの2つが出題されるかと思われます。

 NextGen Bar Examには、現行のMEEのような問題が一見して見当たりません。より実務的な方向にシフトするという点で日本人にとってはより英語力が試される?ような印象も受けました。もっとも、日本で実務経験を積まれている方にとっては、ある程度与し易くなるかもしれません。

MPREの知識が必要??

NCBEによると、NextGen Bar Examでは、大きく以下の4つのグループのskillsをテストするとしています。
・Group A : Issue spotting and analysis, investigation and evaluation
・Group B : Client counseling and advising, negotiation and dispute resolution, client relationship and management
・Group C : Legal research
・Group D : Legal writing and drafting

このうち、Group Bの文脈において、MPREで問われた法曹倫理の知識が必要になる可能性が指摘されています。確かに、サンプル問題を見る限り、代理の範囲であったり、利益相反の論点は、容易に絡めることができそうな印象です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?