NY Barの受験資格要件
はじめに
アメリカのロースクールに留学され、NY Barの受験を目指される場合、経歴によってはスムーズに受験できない可能性があります。
Bar Examを受験するのかどうか、受験するとしてどの州が選択肢として現実的にあり得るのかを書いてみたいと思います。
なお、この記事以外にも受験可能な州があり得ますが、私や周囲の経験していないもの・情報がないものについては、割愛させていただきます。
また、こちらは、2022-2023年にかけての情報をベースとしておりますので、ルールの変更にはご注意ください。
1.Barを受験するかどうか
Barを受験する一番のデメリットは、受験資格を満たすために、少なくない科目を履修する必要があることです。せっかく留学したのにさして興味もない科目を履修しなければならない可能性があるという点は、一番のデメリットかと思います。こうしたデメリットを看過できない場合、受験しないという選択肢も当然にあり得ます。実際、私の周囲にもBarを受験しないという日本人をちらほらと見かけました。また、既に自国で資格を有している留学生は、少なくない人がBar Examを受験していませんでした。
2.タイプ別受験資格の有無
Barを受験するとして、NY Barを含むBar Examを受験できるかは、自己の経歴に依存します。
1) 日本のロースクール修了者
問題なくNY Barの受験資格を得ることができます。また、日本の法曹資格者の場合、Professional responsibilityの履修のみで受験可能となるため、CA Barも有力な選択肢となります。Professional responsibilityの履修は、NY Barの受験資格との関係でも必要となるため、NY Barの受験資格を有する場合、CA Barの受験資格を満たすことになります。
法曹資格を持っていない場合でも、CA Barの受験資格を得ることは可能ですが、必要単位数が加算されます。NY Barよりも取得単位の縛りが少ないため、代替案となり得るかと思います。ただし、ここで注意したいのは、Chapter2, Rule 4.30の取得単位に関する以下のガイドラインの記載です。
…a minimum of one course in four separate subjects tested on the California Bar Examination of not less than a total of twelve (12) semester or equivalent units.”
このBar出題科目4コースで12単位以上というのが意外に曲者です。
一般的なロースクールの科目は、2-4単位です。2単位の科目は、比較的楽なため、LL.M.生にとってNY Barの受験要件を満たすため活用されます。例えば、NY Barの受験資格において、Professional Responsibilityが2単位でOKなため、多くのLL.M.生は、残り3コースで10単位が必要です。このあたりを注意して履修登録することが大事です。
2) 日本の法学部卒業者
受験資格の有無が一番不安定なグループとなります。卒業された大学でどのくらい法学系の単位を取得したかに依存します。
この単位数との関係で過去問題となっていたのは、
・法学部ではあるが政治学科を卒業した
・教養課程のある法学部を卒業した
・法学部だが、法律系の履修単位が少ない
ケースです。
特に、最近審査が厳格化しているとの噂もあり、法学部で十分な単位数を取得されている場合でも、否認されるケースが発生しているようです。
予備試験ルートで合格された方を含め、NY Barの受験を検討されている法学部卒業者の方は、早めに受験資格の判定を受けるなど、リスクヘッジをしておくことが必要かと思います。
①日本の法曹資格保有者
日本の法曹資格があれば、イリノイ州(実務経験が5年以上ある方のみ)、カリフォルニア州が受験可能です。イリノイ州はNY Barと同じUBEを採用していますので、日本人ノートを含めた過去の知見を活用可能というメリットがあるのに対し、Cal Barは、履修科目の縛りが少ないというメリットがあります。
②日本の法曹資格非保有者
日本の法曹資格がない場合、代替案が限定されます。
・Cal Bar
基本的に法学部の卒業年度で一律に判断されているようです。留学されるボリュームゾーンの方は、この点で引っ掛かり、Cal Barの受験は厳しいかと思います。
・DC Bar
元々取得単位数の要件が厳しい上、最近さらに受験資格要件が厳格化されました。学部卒の場合、かなりの法学系の単位取得が必要であり、日本人にとっては厳しいかもしれません。
3) 日本の法学部以外の学部卒業者
NY Barを受験することはできません。ただし、日本の法曹資格者である場合、Cal Barが受験可能です。
3.受験資格を有する法曹資格を有さない方
NY州弁護士としての登録要件として、最近Skills Competency Requirement(Rule 520.18)(いわゆるpathway要件)が課されるようになりました。この要件をクリアするためには、全部で5つのルートが用意されています。日本の法曹資格を持たない場合、この要件も留意する必要があります。
1) Pathway 5(資格保有者関連)
法曹資格保有者であればpathway5(要は日本の資格でOK)ルートでこの要件を満たすことができますので、深く考える必要はありません。
2) Pathway 1 or 4(資格非保有者関連)
日本の資格保有者でない場合、実質的にクリア可能なルートは、pathway1(一定の授業履修)かpathway4(Law officeでの6ヶ月以上の実務研修)となります。
・Pathway 1
ロースクールの実務系科目の単位取得によって、要件をクリアする方法です。ロースクールだけで完結できるため、特に留学後の"Law Office"での研修をアレンジできない方にとって最有力となります。
しかし、LL.M.向けにpathway1のカリキュラムを提供しているロースクールが少ないという問題点があります。また、NY Barの受験に必要な単位に加えて、さらに履修要件が加算されてしまいます。結果的に、留学先の選択・留学中の科目履修の自由度がかなり低くなるというデメリットがあります。
・Pathway4
最低6ヶ月以上の"law office"での研修をもって、要件をクリアする方法です。
Skills Competency Requirementの要件が登場した際、一体何が"law office"に該当するかはちょっとした議論を巻き起こしました。"law office"という表現を見るに法律事務所のことか?とも思われますが、アメリカの民間企業法務部での研修でクリアできたケースがあるようです。
ここからさらに進んで、アメリカ国外の民間企業法務部(例えば、日本で元の職場に復帰して研修とする)が認められるかは、情報がないため割愛させていただきます。
ロースクールは修了しているが日本の法曹資格を持たない人にとっては、いっそのことCal Barを受験することも留学先の選択・履修の自由度の観点から有力かと思います。
4.情報の獲得方法
ご自身で調べるにしても、うまいこと情報が出てこない可能性もあり、苦労されるかと思います。また、詳細はBar Admissionの運用に任されているところも多く、単純にネットの文面だけでは解決しないことも多いです。
正攻法は、Bar Admissionに問い合わせる(可能な限り、電話で!!メールは返事がないことがほとんどです・・・)ことですが、事前相談には丁寧に対応してくれないこともあります。
その他の選択肢として、ロースクールのアドミッションに問い合わせる方法があります。彼らは多くの情報を有しており、親切に相談に乗ってくれることも多いかと思いますので、気になることがあったら、遠慮せず相談するのが良いかと思います。