見出し画像

リプレイの裏側/『シャドウラン 5th Edition』コラム04


01 前口上

 この記事は新紀元社から発売されている『シャドウラン 5th Edition』日本語版(以下SR5J)ユーザーに向けた雑文かつ過去ツイートの再利用です。
 記事の閲覧・利用に関する前置きは下の記事を参照してください。


02 事の発端

 事の発端はライターのマフィア梶田氏のこのツイートでした。

 その後、どんな経緯があったかはよく知らないのですが、気がついたら豪華ゲストを招いたセッションのリプレイを4gamerさんに掲載するという話になっていました。


03 リプレイの裏側、あるいは掟破りの自キャラ語り

 2019年某月某日、朱鷺田先生から「豪華ゲストが参加するセッションにデッカーを作って参加せよ」という秘密指令が下りました。

 ……あのぅ先生、事前に聞かされていたよりさらにメンツがヤバくなってる気がするのですが。
 その時僕の脳裏によぎったのは「せめて使い慣れたキャラ使おう」でした。

 当時、僕が『シャドウラン』で作っていたいわゆる「持ちキャラ」の中で、ハッカー系のキャラクターは3人いました。一人は混沌魔術様式の魔法使い兼ハッカーの「西崎冥夜にしざきめいや」、もう一人は純粋にハッキングのダイスプールの限界に挑戦した「ドルフィン」、最後が長年の相棒であるコンバット・デッカー、「教授プロフェッサー」ことウィリス・ウィルヘルムです。

 彼は前世紀に『スペオペ・ヒーローズ』で最初に作成されたキャラクターで、なぜハッカーだったのかというと、アーキタイプの中でハッカーだけ「2レベルの技能が1つ多かった」のです。他のアーキタイプは初期作成点換算で280点だったのですが、何の手違いかハッカーだけ284点で作られていたのでした。
 当時はエラッタが出ること自体が珍しく、特に訂正もされなかったのでそのまま使われていた訳です。
 使い勝手が良かったので、彼はその後『トーキョーN◎VA』をはじめSF系のゲームを渡り歩く定番の持ちキャラとなっていました。メインアームがSMGで、サブに狙撃銃を使うスタイルも当時からずっと同じです(ゲームによってSMGだったりマシンピストルだったりしましたが)。知力系の1レベル技能を大量に持っていて、能力値の高さとヒーロー・ポイントでゴリ押しするプレイスタイルもほとんど同じですね。
『シャドウラン』ではあまり使う機会は少なかったのですが、メルクマールとして作って持っていた訳です。

 余談ですが、「ドルフィン」は第4版時代に『Role & Roll』誌にサンプル・キャラクターのひとりとして掲載した関係で、『スピタのコピタの!』にも登場しています。他二人は雑誌記事のシャドウトークに時々顔を出していますね。ドルフィンは中身の設定が固まってなかったのでほとんどシャドウトークには出ていません。一回出したっけ?


04 サイバーパンクといえば「JM」?

サイバーパンクなら「JM」で決まり

 いや実際には「JMで決まり」とは言わなかったと思いますが、僕のサイバーパンク観の形成に大きく寄与したのは間違いありません。当時原作である『記憶屋ジョニィ』も、同作者の代表作『ニューロマンサー』も読んではいましたが、正直そこまで大きく影響は受けなかったと思います。『攻殻機動隊』が大きな反響を呼んだように、映像の力が何よりも大きかった。「ドルフィン」がなんでイルカだったのかは明らかにこの映画の影響ですね。Microsoft社のアレではありません。
 そういう意味では、批評家の受けは悪くても、僕にとって『JM』は忘れがたい作品であり、『マトリックス』の成功を待つまでも無く、僕のサイバーパンクのイメージの中心にはキアヌ・リーブスがいた訳です(イラストはどっちかというと『攻殻機動隊』のバトーみたいですが)。

 他に『JM』で強い印象を受けたといえば、ハリウッド映画初進出だった北野武もまた強烈でした。彼が英語でセリフを言うシーン(“Not in the head!”)が、当時、邦画と洋画とアニメに塗り分けられていた僕の映画観を粉砕したと言っていいでしょう。ついでに言えば、あのシーンへの憧れが、僕から英語に対する苦手意識を払拭した気がします。

『シャドウラン』では日系企業が十大企業に入り込んでいたり、日本帝国がカリフォルニアに侵攻してたり、アメリカにとっての侵略的外来者として描かれていますが、それには80年代から90年代にかけてのバブル絶頂期に見られた「日本による経済・文化侵略」という側面が影響しています。ハリウッド映画に出て、英語で話す北野武の姿はその象徴的なシーンでした。


05 恥も外聞もなく【エッジ】7

 このリプレイでは、僕が一番の経験者ということになってしまいますが、当然のことながら主役はマフィア梶田氏です。できるだけでしゃばらずに、しかし可能な限り多くの場面でサポートできるようなプレイをしようと心がけました。
 その点、教授のキャラクターは最初から「魔法関係を除く、あらゆる場面で2番目に多いダイスプールを持っている」ように設計されています。チームに欠けている部分では一番手として、それ以外の場面では二番手としてチームワーク・テストに絡んでいき、重要な場面ではエッジ・ポイントを惜しみなく投入するというコンセプトであり、まさに打ってつけだったのです。……それだけじゃなんだからと牽制スティックンショック二丁SMGを仕込んだのはやり過ぎだったかもしれません。

 ただ、チームの中で、おそらく蝸牛くも先生は高【エッジ】戦術をご存じだったと思いますが、日本語版が出て早々に「僕が一番エッジを上手く使えるんだ」とばかりに投入することには罪悪感もありました。「恥も外聞もなく」というセリフにはそういう思いが込められていた訳です。

 最後の場面、実はこちらもデザート・ストライクを車の荷台に積んでいたのでMGに使ってもらうことも考えていたのですが、マフィア梶田氏が綺麗に決めてくれてほっとしました。彼はたぶん、日本で一番ショットガンが似合う“リアル・シャドウランナー”ではないでしょうか。

 最近はリプレイの企画もなかなか通りづらくなってしまいましたが、またこういう機会があればぜひ参加させていただきたく思います。

いいなと思ったら応援しよう!