SenseTime のAI教育エコシステム
顔認識AIのトップ企業として知られるSenseTime(センスタイム・商湯科技)が2019年5月に行なったAIサミットでAI教育を加速させるとの発表がありました。詳細についてはわからなかったので、センスタイム深圳オフィスを訪問し、AI教育関連商品と今後の展開について伺いました。
センスタイム深圳オフィスは、Tech系スタートアップが集まる深圳湾科技エコパークにあります。オフィスの一部分は訪問者のための製品紹介ブース、展示ブース、体験ブースなどがあり彼らの技術力を体験させていただきました。
教育部門に関しては専門のブースは用意されていませんので、見晴らしの素晴らしいMTGスペースをお借りしてお話を伺いました。
センスタイムは昨年高校生向けの人工知能学習テキスト『人工知能基礎』を刊行し、今回は中学生向けのテキストも刊行しましたが、そのような教材だけを開発、販売していくのではなく「AI教育エコシステム」と称するAI教育全般に対するサービスを提供していくとのことです。
AI教育エコシステムは以下の6つの項目に分類されています。
1.AI教材
昨年刊行された高校生向け教材に続き全4巻からなる中学生向け教材『人工知能入門』が刊行されます。Pythonを使ってプログラミング学習用の車をセンサー類を使って制御することから、顔認識、画像認識、文字認識などの基礎的な学習ができます。
車の学習項目ではプログラミングやAIということだけではなく、内輪差を円周率を使って計算する数学、理科、プログラミングの教科をまたいだSTEM的な学習要素もあり、中学数学が活かされる場面もあるのは非常に良いです。
また画像認識においても座標、一次関数などまさに中学生が学習する数学が現代のテクノロジーに繋がってるくることが理解できるだけでも意義があります。
2.AIプラットフォーム
AI学習に関わる教師、生徒たちが利用できる200課にも及ぶ学習コンテンツが用意されています。学校の先生がAI教育クラスを開講するにあたり、その学校に合ったカリキュラムをセンスタイムのAI教育のプロが作り上げたコンテンツから作り上げることができます。
3.AIカリキュラム
AI啓蒙、AI入門、AI基礎などを学ぶカリキュラムが用意されています。現状では上海を中心とした高校で採用されているとのことです。
4.AIロボット
SenseRover Mini、SenseStorm、SenseRover Proの3種類のAI学習用ロボットカーが用意されています。SenseRover Miniは小中学生がAI学習の基礎としてロボットカーと搭載しているセンサー類を制御することを学ぶことができます。SenseStormはより高度なセンサーでロボットカーが読み取ったデータからロボットカーの位置の特定、画像解析などを行います。SenseRover Proは本格的な自動運転を学習するためのロボットカーです。
5.AI実験室
現在上海にあるというAI実験室はAI技術を体験、ワークショップ、学習を行うスペースです。深圳でもいくつか体験するスペースはありましたが、こちらは学習用に特化して作られたスペースとのことです。顔認証、防犯技術、医療技術との連携などの体験学習ができるようです。
6.AI教育サービス
AI教育教員向けの講習会を実施しています。現在中国の高校では情報処理が必修科目になっており、AI学習はその必修科目の中の選択科目となっています。当然のことながらAI教師の数は完全に不足しており、その育成をセンスタイムが担っています。
この講習を受けるのは高校の先生の中でも若い先生が多いとのことで、数学や理科の先生に限らず興味のある先生が受講して、学校に戻ってAI教育を実践されているとのことでした。
まとめ
AI教育をどんどん進めていくことができる中国と日本を比較してみると、やはり日本の硬直した教育制度や先生の業務過多が足かせになっているであろうことは多くの人が認識しているところです。日本全国一律の教育を行うのではなく、学校ごとに特徴のある教育を提供でいるようなシステムであったり、学校の評価システム、教育の評価システムも見直さないことには、日本の教育は劇的には変わらないわけですが、これは教育に限ったことではなく、あらゆる業界が過去に縛られた状態から抜け出せないことに原因があります。
「中国のAI教育がすごい」ということではなく、日本の様々なシステムや精神性に対して危機感を覚えるそんな訪問になりました。
おまけ
センスタイム の顔認証システムによると私はその日訪れた中で一番のイケメン!
年齢29歳!一番似ている芸能人は・・・ジャンレノ!?
あ・・・、確かに20代の頃老け顔の私はジャンレノに似てるって言われてたな・・・。