vol.9 深センのSTEM教材「ELECFREAKS社:Smart home Kit」
今回は深セン市で主にmicro:bitで使えるモジュールやキット、アクセサリーを開発、販売をしているELECFREAKS社の製品を紹介したいと思います。
最近では、micro:bitを使ってロボットカーを作るキットや、micro:bitとモジュールを繋ぎやすくするためのコネクターなどの製品は多くの会社によって発売されています。しかし、この会社の「Smart home Kit」はこれまでのロボットカーキットやもっと漠然としたモジュール類とmicro:bitをセットにした「STEM教育学習セット」とは異なり、はっきりと「Smart home」というコンセプトで学習しようという画期的な製品です。
日本のプログラミング教育の現状が物語っている通り、「なんでプログラミングを学ぶの?」という問いに学校の先生も大人も答えらえない状況の中、この製品はその問いに対して製品の存在そのものが答えで、これから迎えるテクノロジーの時代に必要な発想力、問題解決力を養っていくことを目指しています。
パッケージもかわいい仕上がりで開封時のワクワク感があります。同梱されている解説書もおしゃれに仕上げられているので、女子でも抵抗なく手に取ることができそうな印象です。解説書には、5つのSmart homeプロジェクトが掲載されていて、それぞれわかりやすい配線図、コンセプトイメージ、ブロックコードの完成図とコードの解説も詳しいので、小・中学生はもちろん授業をする先生にとっても扱いやすいのではないかと思います。
実際に使ってみると、細かい部分まで丁寧に作られているのがわかります。私自身micro:bitのコネクタをいくつかの会社の物を使ったことがありますが、緩かったりきつかったりで使いにくいこともありましたが、これの製品は程よい抵抗感です。
教材として使うにあたり非常に良いのは、黄・赤・黒の3本のケーブルがひとくくりにされていて、モジュール側とmicro:bitのコネクト側も同じ色に揃えられていることで、配線で迷うことは基本的にありません。
学校の授業シーンを想定してみるとこのような気配りが非常に重要で、モジュール側とmicro:bit側をケーブルで正しく繋ぐということだけでも生徒たちは一苦労するものです。プラスとプラス、グラウンドとグラウンドを繋ぐことくらいできると思ってしまうかもしれませんが、電子回路の知識のない生徒たちにとっては大変なことなのです。
電子回路もしっかり学びたいのであれば、micro:bitとブレッドボードがあればいいわけですが、Smart homeのアイディアを形にすることや、IoTのプロトタイプのアイディアを形にするということであれば、創作を学びの中心に据えるべきで、他の苦労する要素は可能な限り排除すべきです。そういう意味でもこの製品は、学びのポイントを明確にしてあるので、非常に使いやすいと思います。
彼らは深センで開発、生産をしていますが、製品はシンガポール、北米、ヨーロッパを中心に売れているそうです。日本や中国ではあまり売れないとのことでした。
彼らの分析によると中国、日本の先生は「教える」授業をするということ。そして教える先生自身も「教え方を教わる」必要があるということで導入障壁が高い事実もあります。
それに対してシンガポールの先生はそもそも先生自身がmicro:bitが好きで勝手にいじり倒し、結果的に教材研究をしていて、その楽しみを生徒たちと共有している印象があるそうです。そういう状況からカリキュラムや教案を必要としない国では売れ、型が必要な日本や中国では売れにくいのではないかということでした。
日本の教育のあり方はこのプログラミング教育をきっかけに時代に即したより良い方向に向いてくれたらと思います。
製品としては学校教育に特化している訳では無いので、小学生や中学生が自分で試すために購入したり、親子で楽しむのもいいと思いますし、学校の先生が扱う初めてのSTEM教材としても非常に扱いやすいものなので、深センにきたらお土産にいかがでしょうか?