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日がながくなること -好きなことば #2-

もうじき夏がくる、という、季節の変化に対するよろこびだろうか。実際、夏の夕暮れには特別な感じがある。なつかしさ、と言ってもいいし、曖昧を許す空気、と言ってもいい何か。
季節が移ろうことは、たしかに寡黙で圧倒的なやすらかさがある。人々が日々どんなトラブルを抱え、どんなに右往左往していようと些事些事、とばかりに季節はちゃんと移ろう。大昔からそうであったように。それにふいに気づくことがやすらかで、嬉しいのかもしれない。
< 日がながくなること >

「とるにたらないものもの」江國香織

会社を出ても明るい季節になってきた。もうすぐ夏が来るぞ、と思わせる明るさと夕暮れの空気のにおい。

夏の夕暮れは、なぜか母親が夕飯を作っている姿を思い出す。その時間、キッチンの脇で絵本を読みながら同じ時間を過ごしていたことを思い出す、という表現の方が正しいけど。

日がながくなると嬉しいのはなぜだろう。
会社を出てから眠るまでに残された時間は夏も冬も同じはずなのに、夏の方が2時間くらいながいんじゃないかと錯覚する。

「あぁ、今年も夏が来たなぁ」と季節の移ろいを嬉しく思っているのか、だとしたらどうして季節の変化が嬉しいのか。
この江國さんのことばで腑に落ちた気がします。

どんなことがあっても季節はちゃんと移ろう。
今も昔も変わらない事実で、その大きな流れの中に自分がいること。
大袈裟なハナシ、それだけで生きてるなーという実感を抱いたり、これからの季節と時間に期待している気がする。「これから」が当たり前に来ると純粋無垢に信じている。

その平和な空気が好きなのかもしれない。

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