【にじ遊戯王祭2024】idios東西戦ここすきポイント
idiosの皆様、お疲れさまでした。
遊戯王おじさんとしては、初心者があーでもないこーでもないと頭をひねりながら最善を探る姿勢を見るのは大好物な訳でして、そんな人たちを見れる「にじ遊戯王祭」を楽しみにしているわけですが、今回のidios東西戦は素晴らしいものでした。
絶望的な盤面でもあきらめず、対話を続ける姿にはYPに負けず劣らずの迫力があり、加賀美ストラクチャーのバランスの基、idiosが先生たちに協力を仰ぎながら入れた思い思いのカードが戦況をひっくり返す場面も多々あり、「ガチ勢が持つストイックな面」と「エンジョイ勢が魅せる驚愕の展開」の両方が楽しめるイベントだと観戦者ながら思いました。
特に三回戦は非常にアツイ展開となり、両者ライフも手札も風前の灯となった【獅子堂あかりvs小清水透】の戦いはアニメの最終回にも匹敵する熱量を持った決闘となりました。
この決闘については優秀なMC陣の解説もあって非常に分かりやすいので、木っ端の決闘者が何かを解説するのは野暮というもの。見ていない方は上のURLからぜひ最初から最後までご覧いただきたく思います(勿論他の決闘も面白いです!)。
…で、そんな中なんでこの記事書いたかというと、個人的に感動したワンシーンがあり、その時の状況を整理しないと説明しにくい場面でした。その感動を共有したい為に記事を一筆したためたところです。
仮に初心者である本人が下の文まで思い至らなくても、必死に考えてたどり着いたその感性が遊戯王にとって非常に大事なものであることを言語化できればいいなと。
※筆者のクセが出ました。
以下から文体が感想から文章に変わります。
4戦目【鏑木ろこvs五十嵐梨花】における鏑木ろこのプレイング
鏑木ろこ Turn5 メインフェイズ2【動画内2:10:26~2:14:15】
(以降両名は名字敬称略)
1. メインフェイズ2までの状況
五十嵐が前のターンで立てた4素材【天霆號アーゼウス】に対し、鏑木が【N・グランモール】でバウンスを狙うも、バトルフェイズ中にアーゼウスによって一掃されてしまう。
鏑木のライフは5600。打点3000のアーゼウスと他のカードとの併用で削り切られる可能性がある中でメインフェイズ2が開始された。
2. 鏑木が何をしたか
【早すぎた埋葬】によってグランモールを蘇生することで、次のターンのアーゼウスを牽制する対策を取った鏑木。既にメインフェイズ2なので攻撃が出来ない。そこで鏑木は残った召喚権でモンスターを伏せてエンドした。
この時点で残り手札は2枚。
3. 結果どうなったか
エンドフェイズに五十嵐がアーゼウスの効果を発動し、奮闘むなしくグランモール共々盤面を一掃。伏せたモンスターも墓地へ送られ、そのまま五十嵐が押し切った。
ちなみに、伏せたモンスターは…
【キラートマト】。
効果最大限の一手【キラートマト】
1. 詳細な状況
まず状況を整理する。
この大会では構築に縛りが設けられており、強力な罠がデッキ内に潤沢にあり、かつよく通る。
五十嵐のデッキは【獣族中心十二獣】。ガチャから【FNo.0 未来龍皇ホープ】は調達できず、十二獣では火力を出しにくい。加賀美ストラクチャーの下級であれば火力を出せる。
2.の懸念を超えて五十嵐側が火力を稼げる場合、鏑木は何をやっても負けの状況なので、鏑木は都合のいい生存ルートしか考えるべきではない限界状況だった。
鏑木のデッキは【カオス】であり、墓地のモンスターの数と属性が手札の出力を上げる性質を持つ。
2. 鏑木のすごいところ
鏑木のメイン2の動きは、上記1~4を丁寧に理解し、且つ五十嵐側の心理を利用した非常に効果的な一手として【キラートマト】を伏せているといえる。
3. 盤面別に見る五十嵐の心境
五十嵐があの場面でアーゼウスの効果を使ったことが全てではあるが、では鏑木の行動が五十嵐の行動・心境にどういった変化を与えるか、五十嵐がリーサルを取れず、アーゼウス下では妨害も増やさないだろうと都合よく考え、予想できる盤面から五十嵐の心境を予想してみる。
Ⅰ. グランモールのみ
五十嵐にターンが移ってから何もせずにターンエンド(イベントのポイントが入る)して、グランモールで殴ってくるタイミングでアーゼウスを使えば鏑木のバトルフェイズを消費させつつ3000打点を維持できるはずだ。
Ⅱ. 魔法罠を伏せる
【聖なるバリア-ミラーフォース-】や【リアクティブアーマー】など、損害が発生する罠だとたまったものではないため、鏑木のエンドフェイズにアーゼウスの効果を使いまるごと一掃すれば、鏑木の手元から盤面を返す札が減り、困るはずだ。
Ⅲ. モンスターを展開する
手札の数が少なくなったところを見計らってアーゼウスで全て更地にしてしまえば、鏑木は動けなくなるはずだ。
Ⅳ. モンスターを1体伏せる
Ⅰの様に何もしないのもいいが、頭数を増やされるとリンク・アドバンス召喚によって解決札を立てられるかもしれない。しかし、このターン鏑木を倒せないなら出来るだけⅡやⅢに近い状況でアーゼウスを使いたい。勿論グランモールは攻撃できない。悩みどころではあるが、伏せモンスターを戦闘で破壊しておいて後続を潰しておくのもアリか。
つまり、鏑木のプレイングは五十嵐からⅣの心境を引き出してキラートマトに攻撃させ、その効果でデッキから後続を呼ぶことで場のモンスターを減らさずに墓地を肥やす最善手だったといえる。
また、キラートマトの効果でデッキのカードが少なくなることで、次のターンで【開闢】【混沌】といったエースや強力な罠を引く確率がわずかながら上がる点も、ギリギリの状況では見逃せない要素となる。
4. 本当にそう上手く行くのか
結果としては、残念ながら上手く行かなかった。五十嵐もしっかりと自分の使うカードを理解し、さらなる詰み状況に持っていけるように決闘していたためである。
しかし、鏑木は自分の勝ち筋が少しでも大きくなるルートを見つけた。そして、相手の心理を自分にとって有利な方向に揺さぶるプレイングを実行した。
鏑木本人の努力は確かに結実していて、かつ限界まで追い詰められても諦めなかった強さが、この悩み抜いた一手に見えたと思う。
5. なんで「鏑木にとって都合のいい五十嵐の心境」が分かる風なのか
筆者は東西戦をにじさんじ公式の配信で観戦しており、手札の見えない対戦者に近い立場で見ていたから。
一応筆者も長年カードゲームをやっている決闘者の端くれ。心理戦も、盤面を読み取ることも並には出来る。
そして筆者は脳内でキラートマトを殴った。
勿論その後の勝敗はわからないけど、心理戦で初心者である鏑木に間違いなく敗北したのだ。気持ちいいくらいに。