寫眞館GELATINとAlice
展覧会の始まりの頃に少し記しておきましたが、終わりが近づいたいま、
もう一度、記しておきたいと思います。
寫眞館GELATIN個展「Darkroom Lab.case1 - Alice」
この展覧会は、shell102を暗室に変え、その暗室を展示会場として開催しています。
本来、作品を見せるには暗室はくら過ぎます。
ひとつには、印画紙にプリントをする様を実際に見ていただく暗室実験イベント「In the Darkroom」を開くためでもありました。
でも一番大切なことは、寫眞館GELATINの世界を体験していただくための暗室での展示です。
展示している寫眞館GELATINの作品は、全て銀塩写真(ゼラチン・シルバー・プリント)です。
プリントは暗室で、露光後の印画紙に現像液を筆などで湿布し、陰影にムラや滲み、ブレなど二次的効果を出し、
実際に見えるものとは違う世界を作り上げています。(寫眞館GELATIN の言葉より)
「実際に見えるものとは違う世界」それは寫眞館GELATINが演出をする闇であり光であり空気の震えだったり。
多くのお芝居は最初に暗転があり、そこで観客は芝居の世界の中に入り、その世界を体験します。
暗室で展示をすることはその暗転と同じで、作品の世界に身を置いてもらうための装置となります。
鑑賞者が小さなランプをかざして作品を見ると、
作品の中にある人形やオブジェが暗闇の中で発見をした自分だけの出来事となり、
写真に写っているものだけではなく、その周りもその奥も、覗き込んでいる自分がいます。
そして暗室であてる光は、印画紙に散らばる一粒一粒の銀の粒子を浮かび上がらせる道具となります。
今回は、暗室を作るために壁を立て扉を取り付けました。
扉の向こうはもう一つの世界。
Alice in Wonderland
もうひとつ、
今回の「Darkroom Lab.case1 - Alice」は、寫眞館GELATINの作品の中にもうひとつ作品があります。
それは、野村直子が制作した人形やオブジェです。
野村直子は舞台美術、衣装、立体造形、イラストレーションなど手がける美術家です。
野村直子の人形やオブジェは、彼女の時間から拾われたもので作られています。
だからイメージではなく、いくつもの真実の時間に人形は存在しています。
野村直子の部屋に落ちていた棒やポケットに入っていた糸くず、置かれていた大道具のペンキが、
その時々でくっついたり塗り込められたり。
寫眞館GELATINは野村直子のAliceやウサギやネズミをWonderlandに連れ出し、
その時寫眞館GELATINにだけ見せる表情をフィルムにおさめ、印画紙に閉じ込めています。
そして私たち観客は、暗室で一粒一粒の銀の粒子の一粒となり、印画紙の中に引き込まれています。
暗室監修/アウラ舎、音源制作/saj:aqua、暗室設営/深海洋燈
みなさまのご協力に感謝いたします。
gallery shell102 suzuki