ゴヤの名画と優しい泥棒(原題: The Duke) 雑多感想ツイートまとめ 220316
記録用
引用形式のものは自分のTwitterから それ以外はあちこちにメモしたもの
レビューを見たら、人と繋がることを信念としているケンプトンが目指すものが「年金老人のテレビ(BBCの通信料)無料」なのが違和感…と言っている人もいた。この辺りは当時のイギリス社会の老人たちの背景や、イギリス階級社会の構造を知っていないと確かにそうなるかもなあ・・・とは思いつつ。
当時のイギリスでは、「テレビを見る」という行為は、退役軍人や定年退職した老人たちにとって「世界とつながる実感を得られる行為」だった、らしい。年を重ねるごとに心身の老いによって社会とアクティブに関わることが少なくなり、家に篭りきりになってしまう高齢者も多かった。孤独な高齢者にとって、BBCのテレビを見て社会のことを知るという行為は、そのまま「世界とつながる実感」「自分が世界に生きているという実感」だったのだ。そこを理解していないと、現代的な感覚からしてケンプトンの主張は的外れに思えるのだろうなあ。
「この世界は、あなたは私で、私はあなた」と言うケンプトンが目指したかったもの、最初はよくわからなくても、法廷のシーンで全部ちゃんとわかった。文字であらすじを読むだけでは得られない理解と共感だった気がする。もう一回見たいな〜
Soundtrackをずっと聴いてしまう!
1曲目(オープニング)のThe Dukeのおかげで「あっこの映画はただしくコメディなんだなあ」とわかるし、肩の力を抜いて見れるんだと思う。過不足なくてシンプルなのに技巧と遊び心が織り込まれているところとか、この映画がジャズと親和性高いのわかる気がする。
あと、オフィシャルサイトを見たらわかると思うんだけども、ちょっとしたフォントや色構成やらが凝っていて、とにかくお洒落。エンドロールも良かったなあ。
ケンプトン役のジム・ブロードベンドと、その妻ドロシー役のヘレン・ミレン、熟練した演技がすっごく素敵だった。ジム・ブロードベンドが演じるケンプトンは、ブツブツと口煩く突拍子もなく「政治活動」を始めるし、色々なことがうまくいっていない変わった老人。だけど、一見偏屈なケンプトンが持つピュアさやチャーミングさがふとした瞬間に滲み出ていて、愛すべきキャラクターに仕上がっていたところがすごく素敵。
ヘレン・ミレン演じるドロシーは、夫の奇行に呆れ返りながらも家庭を支える厳格な人物。それでいてため息をついて丸まる肩や、怒りや悲しみに震える声だったり、揺れる瞳の奥の光のような細やかな演技から、繊細で優しい人なんだな、とわかるのもすごい。
名優ってこういうことなんだな…と、後半は涙を堪えながら見ていました。
あとはケンプトンを法廷で弁護する敏腕弁護士のジェレミー。食えない雰囲気と洗練された佇まいがThe・英国俳優!
皮肉な顔をしたり、台詞回しがカッコよかったり、なんとも美味しい立ち位置なキャラクターをものにしていてすごく良かった。他の作品も見たい。
陪審員制度と私人訴追制度、ふわっとしか基礎知識がなかったのでこれを機に調べました。各国の裁判制度とその歴史、色々知りたいな。
※私人訴追制度
刑事事件において、公訴(国家が訴える)ではなく私人による訴追の権限を認めた刑事訴訟法の法制度のこと。イギリスの裁判制度として採用されている。
事前に何も調べていかなかったので全部観終わってから知ったんだけど、スタッフがかなり豪華でした。
パンフレットは売り切れてしまっていて買えなかったのが心残り…(泣)
ゴヤの名画と優しい泥棒、わたしはとても好きな映画だった。
円盤欲しいかもなぁ
元気なくなったときに見たい。