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追悼―野村羊子さんへ

shelfの公式noteを書こう、という話はずいぶん前、それこそ一年以上前から出ていました。そしてそれについて、お尻に火がついてきた、というか、今まさに進行中のプロジェクトについて、ジャカルタのLab Teater Ciputatと共同で、リモートクリエイションを行った成果をYouTubeにアップしたのですが、YouTubeにアップしただけじゃだめだよね、紹介をきちんと記事にして書こう、という話をしていたのが、2021年、昨年の9月末だったと思います。

ジャカルタの劇団Lab Teater Ciputatとshelfとは、2020年-2023年の4年間をめどに成果を達成する国際共同制作プロジェクトを実施しています。(この企画は、アーツカウンシル東京の長期助成を得ています。)

というわけで今もまさに進行中のプロジェクトなのですが、お察しのとおり、このプロジェクトも他の海外共同制作プロジェクトと同じくコロナ禍に突入してしまいメンバーはほぼ、今に至るまで会えないままでいます。しかしその会えない時間を手を拱いているわけにもいくまい、と2020年度にはそれぞれ本国で、単独作品のクリエイションをして(shelfは、インドネシアの作家ダナルトの『Rintrik』という小説を舞台化、LTCは、三島由紀夫の『卒塔婆小町』をとても大胆に翻案、舞台化しました。)

それぞれ映像に字幕を付して交換。さらにはそれをもとに国際シンポジウムをリモート/オンラインで行いもしました。

その後も私たちは、それこそ2021年のほぼ半年間、二週に一回は深夜にZoomミーティングを行い(インドネシアの時間では20:00~でしたが、日本時間では22:00~それはときに25:00、26:00に及ぶこともありました…)合計…20回以上でしょうか。お互いの意見や感想を交換するだけでなく、課題をもとに持ち寄った俳優の自撮り映像などを素材に、クリエイションの種を育むべく、このコロナ禍で、移動と接触が制限された中で、なんとか、どうにかしてコミュニケーションとクリエイションを重ねてきました。

その成果を、2021年9月末に「インターバル」と題して、映像作品としてではなく、舞台作品を作るためのいくつかのリモートワーク作品(結果、映像作品が多くなりましたが、)を制作、YouTube上で発表しました。自分でいうのもなんですが、かなり、見応えのある内容になっていると思います。通訳を介さず、俳優同士だけで作った短い台本や、お題をもとに即興で作った小作品。作りながら関係を構築していく中で日本の俳優がインドネシアの俳優に、あるいはその逆で、個別に行ったインタビュー動画、等々。

それらを、これから改めて、現在進行形の他のプロジェクトの進捗や関連イベントの紹介と合わせて、こちらのnoteで紹介していきたいと思います。

ですが、すいません、非常に個人的な思いになってしまうかも知れませんが、ここで一度、最初で最後になると思います。このshelfとLab Teater Ciputatとの国際共同制作プロジェクトの最初からプロジェクトのキーになるメンバーとして通訳や翻訳を担ってきた野村羊子さんが、昨年12月に急逝されたことをここに彼女を偲んで、書き添えておきたいと思います。

日本人メンバーは、実はまだ洋子さんには会ったことが一度もないんですよ…  だけどもう、本当に彼女についてはかけがえのない、喩えが陳腐ですが、僕らの家族のひとりのようで。僕自身、今もまだ心の整理がついていません。最後に貰った彼女からのメッセージは、

…バンバンはもう利賀から戻ったんでしょうか。 私はお手伝い出来るとしても来年からですね。それも先のことはお約束できない状況ですが。でも少しよくなったらもっとメッセンジャーとか見ますので、グループには入れておいて下さいね!

というものでした。…こんなメッセージを貰っては、泣くにも、泣けないですよ、羊子さん。

せめて羊子さんの遺してくれた、僕らの掛け替えのない仕事の成果を、それはこれから紹介する映像に溢れています、それをこれから丁寧に紹介していきたいと思います。きっと見返すたびに悔しい思いを、してしまうんだろうな。彼女のが通訳をしてくれている記録映像は何十時間とも数えられないくらい、今、僕らの手許に遺っています。

羊子さん、ジャカルタを訪問出来た折には、必ずチームのメンバーみんなでご挨拶に伺いますね。

どうか、安らかにお休みください。

shelfディレクター、矢野靖人