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てのひらのなかに星。

ひさしぶりにライラさんのことを少々。

思い返せば、初登場時のライラさんは何者でもないものでした。
故郷はドバイらしいことや、実家はかなりのお金持ちらしいこと、親や家がとても厳しいらしいという断片的な情報以外は何もしめされず(これは今に至るもですが)、彼女は謎の女の子でした。
そんな彼女の着ているものは制服で「個性のないもの」の象徴。特訓後もアイドルとして新しい自分を得ましたが、結局は与えられたものであり、彼女は鎖で縛られていました。わたしたちの前にあらわれた彼女は不明の、そして同時に、未明の存在でありました。

その後ライラさんは【ニューイヤースタイル】で着るものを与えられ、【ミステリアスシエラザード】では食べるものを与えられました。友人や仕事を得て、新しい生活と新しい自分を楽しんではいるものの、依然として鎖には繋がれたまま。

【クリスマスプレゼント】で願いを得て(願いは希望であり、それは未来を意味します。)バンド/ドラム【ロックlC】【ガールズロッカー】では自分のさらなる可能性を得ます。ですが、それらもすべては与えられたものでしかありませんでした。

しかしあの伝説のバンド、フォーピース(!!)での活動を経たことで、ライラさんは自身のこれまでを見つめはじめます。それはマスターピースになるために。輝きの向こう側へ、前へと進んでいくために。

このマスターピースという言葉の意味すること、その重要さは、本家の「m@sterpiece」の歌詞を見ていただくのが最良かと思います。
「明日は追いかけてくモノではなく 今へと変えてくモノ」
「夢は自分を叶えるために 生まれた証だから」
「ひとりでいても 輝きの向こう側へ進め」

その後の【楽しいキャンプ】で手にしているのは「あたり」のアイス棒。ライラさんが自らの意思で手を伸ばし、選び、掴みとった幸運の証です。ライラさんは「奇跡」を手に入れ、自身の過去と向き合います。
ちなみに特訓後はニンジンとピーラー。食べ物と道具。どちらも与えられたものではありますが、ライラさん自身が選んだものでもあります。また、与えられたものを使って、新しいものを、自分でなにかを作り出そうとする意志の表れとも取れます。
なによりこのエピソードの舞台であるキャンプが意味するものを忘れてはいけません。それは、「夜を越えること」。

そして、夜を越えたライラさんがたどり着いたのが、【寂寥のアズラク】。
このエピソードでも与えられたドレスを纏っていますが、パーティーへ向かうのは紛れもなく彼女自身の意思でし、さらにはその輝く場所からおみやげを手に入れてやろうという強かさも見せてくれます。
またこのエピソードはタイトルから読みとく方がよいかもしれません。「寂寥」は「満たされていても感じる寂しさ」のこと。ライラさんの偽らざる心情でしょう。彼女は自分の本当の心に気がつき、それを他者に吐露できるようになった。

アズラクはアラビア語で「青」。「夜」という名を持つ彼女の色であり、傷ついても輝くことを止めない「cool」アイドルである彼女の属性の色。そして美しい彼女の、美しい瞳の色。
初見時にはこの青は黄昏の意味であると思ったのですが、今ははっきりと、これは夜明け前の空の色だと言えます。確信をもって。

ではライラさんがアズラクで得たものは何かでしょうか。

それは次のエピソードのタイトルが最も分かりやすいと思います。そのエピソードの名は「ナチュラルハート」。ライラさんのほんとうのこころ。過去と向き合い、目指すべき未来を定め、ようやくライラさんは、ひとりのおんなのこになったと言えます。

またナチュラルハート自体も極めて重要なエピソードであり、ここに至りライラさんは特訓前は「食物」を、特訓後には「武器」手にしているのです。食物もこれまでと違い、誰かに与えられたものではなく、自分で作り出すものに変わりました。武器は怒ることさえ苦手なライラさんが、闘う意志と、闘ってでも手に入れたいもの、守りたいものがある、出来たのだということに他なりません。彼女はもう、守られ、与えられるだけのものではない。

次いで【太陽の歌姫】からがらりと様相が変わります。
暗い夜から、明るい陽光のもとに出て、これまで与えられてきたものを、しっかり自分のものとしていることが明らかになりました。
過去を洗い流し、汚れは落とし、けれど捨てることも無かったことにもすることなく、また新しく身につける。すべては、前へと進むために。
【太陽の歌姫】の「洗濯」が表すのはそういうことであると思います。そして余計なことを付け加えるなら、「洗濯」は「選択」と音が同じでもあるんです。

次のエピソードは【デザートマミー】。ここでライラさんが手にしているものは「ダイス」。語るべくもありません。ライラさんは自分の運命を、自分自身の手に握ったということ。
いろいろなことがあった、ライラさんは語ります。まだ旅は終わっていない、とも。そしてこれからも、あなたと共に進んでいきたい。そう言って、彼女は太陽の下で手を伸ばして、笑っているんです。彼女を縛り付けるものはもう、なにもない。

そして多くのプロデューサーが衝撃を受けた【サムトカマル】で手にしているものは「おにぎり」と「杖」。おにぎりも食物ですが、これは当然、与えられたものではなく自分で作ったものでしょう。ナチュラルハートが材料であったところから、料理へと進歩していることがポイントでしょう。今のライラさんは、他者に与えることができるんです。
特訓後の「杖」が意味することは既に諸兄が指摘済みですが、モチーフであるタロットカードの一種の逆意。「これからを支える過去」の象徴。

ライラさんはこれまでのすべてを支えとして、これからを進んでいく。どうなるかなんでわからないけれど、その傍には多くの友達とファンが、そしてわたしが/あなたがいる。だから、ライラさんの未来は、明るいんです、きっとね。

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