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手折られぬ花の在りか。

 白菊ほたるというアイドルがいる。

 彼女は自分を不運だという。周囲を不幸にするという。
 それが実際のところ、どのようなものかはよくわからない。わたしは担当ではない。だが事実として語られているのは、これまで所属したプロダクションが3つほど倒産したということ。

 以前からずっと疑問に思っていたことがある。
 第一に当然の疑問として、はたして彼女の言う「不幸」がほんとうに不幸なのかということ。勘違いや自意識過剰ではなく、なにかの特殊能力のような、文字通り不幸を撒き散らすものなのか。
 第二に、事実はどうあれ「自分のせいで他者が不幸になる」と認識していて、それでもなお、白菊ほたるはアイドルを目指している。ならば自覚の有無は別にして「目的のためなら他者を不幸にしても構わない」ということになるのではないか。
 白菊ほたるのメンタル、覚悟の在りかはどこに在るのか。

 整理しよう。
 考えられる白菊さんのパターンとしてはまず二つ。

  1、本当に他者を不幸にする特異体質。
  2、ただの偶然。自意識過剰。

 そして、さらに分類する。

  1-A、自覚有り。他者を不幸にしようとも目的を達する。覚悟完了タイプ。
  1-B、自覚有り。しかし、責任は負う気がない/自分の行いと周囲の被害を連動させていない。無責任タイプ。
  1-C、自覚なし。自分のせいだと言ってはいても、本当にそうだとは思っていない。認めたくない。臆病タイプ。

  2-A、偶然を自分のせいだと思い込む、自称悲劇のヒロインタイプ。
  2-B、自分のせいだと言ってはいても、自分でも信じていない。言い訳&自嘲タイプ。

 こんなところだろうか。
 不幸、不運の発言があるので「本気で無自覚/無意識」の愚昧タイプは除外する。

 個人的な趣味でいえば、1-Aは推せる。
「申し訳有りませんが、わたしのせいで百人が不幸になろうがそれは仕方がないことです。憧れの火は消せはしません。ならば、その百人の亡骸を火にくべて、万人を照らす炎としましょう」くらいのことを言い放ってくれたら、もうどこまでだってついていくわ。

 そして1-Bも悪くない。
「ええ、はい、そうですね。わたしは周りを不幸にします。挫折したり、傷ついたり、亡くなったり、もっと非道い目にあったり。今までだってそうでしたから、これからもそうだと思います。きっと貴方も。……でも、それってわたしに関係ないですよね?(ニッコリ)」
 なんという「邪悪」。完全に現代的な「敵」だ。


 話を戻そう。

 さて、趣味はともかく、問題はパターン1の場合、先に待つのが大なり小なり「絶望」であることだ。既に起きてしまった不幸は、この先の幸運で無かったことはできない。過去を無かったことにはできないからだ。
 この先、不幸を補填できるほどの輝きを白菊さんが身に付けたとしても、やがて過去の不幸は彼女の前に立ち塞がり、彼女を苛むことになるだろう。酷に過ぎるという向きもあるだろうが、避けられない事態でもある。だからこそ、彼女がそれを如何に受けとめ、立ち向かうかに興味がある。

 そして2のパターンは広義の中2病と言えるだろう。
 個人的にはこちらも存外嫌いではないが、アイデンティティー(とキャラクター)に大きな痛手を負うことは明らかである。不幸や不運を言い訳にする者は、やがて必ず足元を掬われる。マイナスをマイナスで打ち消すことはできない。
(こちらのタイプで考えている担当の方がいたら、是非詳しいお話をお聞きしたいと思っている。)


 もう一点。
 アイドルになる=輝く舞台に立つためには、争いに勝たねばならない。誰かの夢を打ち砕き、不幸にしなければ、この夢は叶えられない。シンデレラガールズは常にそこを意識し、逃げずに来た物語である。それこそがシンデレラガールズを「現代的」足らしめ、今も魅力を保っている大きな理由のひとつだと思っている。だからこそ、そうである以上、白菊ほたるもそこを認識していないはずはない。

 そこは「誰もが立てる訳ではない」場所である。
 そこに至るためには「私に出来ること(=「リアルなスキル)を積み重ねていく」しかない。
 そしてそれでもまだ足りない。
 さらにその上に「奇跡」が廻ってこなければ届かない場所。
 それが彼女(たち)が目指す舞台である。
(そんなシビアな世界の中で、幾度敗れてもなお諦めることなく進む者が「シンデレラ」である。)

 ならば、やはり、白菊ほたるには「誰かを犠牲にしても進む」という自覚があるとするのが自然ではないか、と思う。
故に、最初の問いにもどるのだが、あらためて、いかがなものだろうか?
 誰も不幸にしたくないが、不幸を跳ね返せるほどの幸福を生むためには、誰かが不幸になることはやむを得ないとするのなら、ではその「誰か」はどこまで許容されるのだろう。
はたして白菊ほたるの「次の一歩」はどこへ向かうのか。
 興味は尽きない。


 一応言っておくが、担当の数だけ世界はある。今回も「正解」が知りたいわけではない。そんなものははなから無い。仮にあったとしても「へーそうなんだ。で、あなたはどう思う?」と意見や考察、感想をこねくりまわしてまた新たな違う意見を聞くだけだ。

 長くなってしまったが、どう考えても強メンタルなのに弱気という、アンビバレントな魅力を持った、白菊ほたるというアイドルについて、みんなどう考えてるのか知りたいなーと思ってるだけです。単純に。はい。

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