【書き出し用】年単位で放置された18禁_二次創作の続きを書こう_薄桜鬼_狂咲鬼哭_76
『ねぇ。壊して、全部壊して』
かつて、薫の耳朶を甘く叩いた千姫の声。
壊れるという本当の意味を、今回の件で妻は思い知ったはずだ。
破壊の先に、文字通り救いなんてないことを。
全部壊れてしまえば良いと願いながら、壊れて欲しくないと切に願っている己の滑稽さに、嫌悪感を色濃くさせて薫に縋りつく。
それは千鶴を通じて、人間と通じ合う愛情が、歪(いびつ)であることを思い知った時と同じように。
『この時がきたら、壊してくれる?』
『壊してやるよ。俺が南雲家を壊したようにな』
なにも知らずに発した己の言葉を、目覚めた千姫が後悔するのを知っている。青ざめた美貌に薫だけしか視えない大きな瞳。これからやるであろう薫の愚行を受け入れて、生きるために正気を手放す。
悲劇的でありながら、薫は千姫が選んだ選択肢に、脳みその辺りが甘く蕩けるのを感じた。
千鶴と薫を混在させて、薫に依存しきる千姫の存在に満たされて、その瞬間を考えるだけで、生まれてくる我が子の運命すら霞んで消える。
つづく