9/8_執筆制限時間10分小説_【229 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く
かわいい? え、僕がかわいい?
僕にとっては、地平線の彼方レベルで縁遠い言葉だ。そりゃあ、僕は背が低い。大川くんも五代くんも園生くんも、夏の日を浴びて背を伸ばした夏草のように、一気に背が伸びた。それに比べれば、僕の背はいまだに150cm代で停滞している。もしかしたら、下手な女子よりも低いのかもしれない。
療養所で畑仕事とか、肉体労働とかで普通に筋肉はついているし、腹筋も割れている。だけど腹筋が割れているようなことが分かる、下品な服の着方をしたくない。男らしさをしめしたいと思っているし、うちの学校が比較的に制服に関しては自由だから、出来るのかもしれないけど、そんなことしたくない。はずかしい。というよりも、そうじゃなくて、僕はとてつもなく混乱してしまった。
大川くんも五代くんも園生くんも、呆気にとれらた顔をして、僕の後ろにいるであろう人物にかわいそうなものを見る目で見ている。あぁ、かわいいとかわいそうは、もしかしたら表裏一体なのかもしれないと考えながら、僕はふといたずら心が湧いた。
「かわいい? 本当に?」
「せやっ!」
即答する声に、僕はマスクを取って振り返る。そう、よくある怪談の真似事だった。
「こんな顔でも?」
と、このパターンなら不意をつかれた相手は、腰を抜かすことだろうが。
「あー、男子だったんかぁ。すまんな」
「反応薄いなっ!」
僕の醜い顔にビビるどころか神妙に詫びる姿に、僕は思わず突っ込んでしまった。
投稿時間:9分54秒