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12/4_執筆制限時間10分小説_【358 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く
「俊雄!!!!」
「――ぁ?」
強い力で引きはがされて、僕の体は干物みたいに力なくだらりと拘束されて、無理やり直立に立たされる。
真っ白にフリーズして、なにも考えられない脳みそ。ただただ、周囲の匂いが僕に伝えている異常事態。
真夏の風景の匂い……これは大川くんだ。ラベンダー畑の広がる風景……これは早瀬くんだ。貴婦人が佇むバラの園……これは五代くんだ。飴色の艶がある重厚な日本家屋……これは園生くんだ。雪降る中で赤いおくるみを着せられた赤子を抱く誰か……これは物部くんだ。
それらの光景が軋んで砕けて悲鳴を上げて、砕け散ったステンドグラスになって、僕の心を強引に無理矢理正気に戻そうとする。僕を大切に思っているから、僕のことを本当の友達だと思っているから。だから、僕は自分のやったことに向き合わないといけないんだ。
目の前で倒れている同級生。ただただ、運悪くそこに居合わせただけで、彼は友達と、いつも通りに食堂を利用しただけなんだろうけど。僕たちの会話をきいて、条件反射的に言ってしまったんだろうね。
「あんな、恥ずかしいツラで、カッコいいからバイクの免許を取りたいんだって、笑える」
そのなにも考えずに出た言葉が、僕を逆上させるとも知らずに。
投稿時間:9分55秒