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10/17_執筆制限時間10分小説_【286 杉藤 俊雄(すぎとう としお)は××したい】続く

 教室中の視線が集まる。僕たち以外の生徒たちが、僕たちの一挙一動に耳をすませている。五感を研ぎ澄ませて固唾をのんで、自分たちがどのように振舞えばいいのかを思考する。抱く感情はバラバラなのに、彼らの思考は一つに統一されていた。

 この学校は、比較的裕福層の人間が通っている。穏便に学生生活を送り続ければ、大学まで二回の受験を免除してくれるのだ。デパートのエレベーターに乗るような感覚で、中学、高校、大学と、最上階の屋上まで押し上げてくれる。

――そう。つまり十年、なんにも思い煩うことなく遊んで暮らせるのだ。世間では受験に失敗して自殺したニュースが報道されているのだから、受験せずに大学までぶっ通して学校に通える。

 なにも問題なんて起こさなければ。だれかが、自分たちの平穏を脅かすことをしなければ。暗黙の了解を侵害しなければ、みんな幸せになれるのだ。

 だから、僕らは許されない。

 加害者であれ、被害者であれ、問題を起こしたこと自体が問題なのだから。自分たちの特権を脅かす明確な敵を、彼らは内心血眼になって探している。

投稿時間:9分52秒

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